2020年2月15日(土)、文学研究科第1・2講義室で、京都大学人社未来形発信ユニットの共催をえて、シンポジウム「玄奘が見たバーミヤーン 京大隊が見たバーミヤーン」を開催しました。
本シンポジウムは、吉田豊教授(言語学・文化遺産学研究施設内陸アジア学推進部門)の企画により、玄奘や京都大学の調査隊をはじめとして、多くの人々が訪れてきた世界文化遺産・バーミヤーン渓谷の石窟寺院に関する調査研究成果について、4名の方々からご報告をお願いしました。当日は、かつて京大隊に参加された方々や、現在もバーミヤーンに対する調査研究に携わっておられる方々をはじめとして、多くの方々に参加いただきました。
内記理「京大隊のアフガニスタン・パキスタン調査と残された写真資料」では、京都大学によるアフガニスタン・パキスタン調査の概要と、調査時に撮影された膨大な写真のデジタル化事業の現状が報告されました。また、アフガニスタン・パキスタンの文化遺産に関する京都大学の新たな取り組みについても紹介されました。
稲葉穣「バーミヤーン大仏のイスラーム史」では、10世紀以降19世紀までイスラーム教徒が残したバーミヤーン大仏に関する記録の検討を通して、イスラーム化されるべき偶像としての巨大仏認識が次第に変容していき、イスラーム的な、またローカル的な意味づけがなされていった過程が示されました。
桑山正進「アフガニスタンの考古学とバーミヤーン」では、1959年以降の京都大学によるアフガニスタン・パキスタン調査の多くに参加された経験を元に、各調査の経緯や、当時の調査の様子が披露されました。また、文献史料と考古資料を手がかりとして、アフガニスタンの歴史考古学において年代をどのように比定してきたのかについての報告がなされました。
岩井俊平「大仏破壊後のバーミヤーン―新たな調査と発見―」では、破壊された大仏の保存事業の概要と、その過程で進められた、下塗りの年代測定をはじめとする壁画の科学分析、周辺での石窟や寺院の発見、東大仏の瓦礫の中などからみつかった経典断簡の発見、といったこの間の新たな研究成果が紹介されました。
現在、本センターは、人文科学研究所と共同で日本学術振興会『課題設定による先導的人文学・社会科学研究推進事業』(グローバル展開プログラム)「逸失の危機にある文化遺産情報の保全・復元・活用に関する日・欧・アジア国際共同事業」を受託し、今年度は、カーブル博物館学芸員研修プログラムなどに協力してきました。今回のシンポジウムを契機として、アフガニスタン・パキスタンでの調査成果をはじめとする、京都大学所蔵海外調査資料のデジタル化と発信・国際的協同を、今後さらに進めていきたいと考えています。