この文書ではプライバシーについての情報倫理学関連の文献をまとめています。
プライバシーを定義しようとするさまざまな試みについては、やや内容が古くなっているが下で要約へのリンクがあるシェーマンの文献を参照のこと。
プライバシーの要求を批判する論法として最もよく用いられるものの一つ。安全保障の議論とも関連して用いられる。このような主張に対しては、「人が隠したいと思うもの = 犯罪や不正や不道徳に関する情報」という前提が背後に隠されているが、必ずしもそうではないという反論がある。
ウェブストアなどでは利用者の過去の購買履歴を分析して、その人に合ったおすすめ商品を知らせてくるサービスが行われている。こうしたサービスは利用者の利便性に貢献する場合があり、自分の個人情報を提供することが利用者の利益になる可能性がある。しかしながら、このようなサービスを受けるために自分の個人情報を提供することに利用者が同意したとしても、同意を与えた以外の目的にその情報を使われるという二次利用の可能性や、個人情報を提供することを同意した対象である企業や組織以外の第三者の手に個人情報が流れていってしまうという可能性がある。
また、ある個人の医療情報を集積して地域の医療機関で共有することによって、より多くの情報に基づいたよりよい医療をどこの病院に行っても受けられるようになるかもしれない。これも情報を集積することが利用者の利益に貢献すると期待される例の一つだが、あらゆる情報を一つにまとめてしまうと何らかの理由でそこのセキュリティが破られた場合により多くの個人情報が流出する可能性も高まってしまうという問題がある。
9/11以降、テロの防止や捜査のためには国家が個人のプライバシーを侵害するのもいたしかたないという主張がそれまでになく強まったことがあった。国家の安全保障などの公共の利益を名目としたプライバシーという個人の権利の制限は許されるのか、また許されるとしたらどの程度まで許されるのか。このように安全保障 vs. プライバシーという二項対立の構図に基づいてプライバシーの制限を正当化しようとする議論に対しては、1) 公共の利益は個人の権利に優越するという(必ずしも常に妥当であるとはいえない)主張を暗黙の前提とする傾向にある、2) これらは共に追求されるべき社会における価値であるにもかかわらず、あたかもいずれか一方しか達成できないかのように主張されている、などの批判がある。
上のリンクの先にある資料集にはプライバシーに関する多くの文献の紹介が掲載されているが、特に基本的なものへのリンクを以下に挙げる。
the right to be left alone 放っておいてもらう権利, location(al) privacy 位置情報プライバシー, geotag ジオタグ, cookie クッキー, RFID, sensitive data/information センシティブなデータ/情報, chilling effect 萎縮効果,