宗教学専修ホームページ – 京都大学大学院文学研究科・文学部 https://www.bun.kyoto-u.ac.jp 研究科・学部・附属施設紹介、入試情報や研究プロジェクトの案内。 Mon, 16 Oct 2023 04:00:40 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.4.3 講義題目 2023年度 https://www.bun.kyoto-u.ac.jp/religion/rel-courses2023/ Fri, 29 Sep 2023 06:50:16 +0000 https://www.bun.kyoto-u.ac.jp/?p=67233 開講期・曜時限 教員 種別 題目 前期月1 杉村靖彦 講義 宗教学A(講義) [授業の概要・目的]

宗教と哲学は、人間存在の根本に関わる問いを共有しながらも、歴史的に緊張をはらんだ複雑な関係を結んできた。その全体を視野に入れて思索しようとする宗教哲学という営みは、多面的な姿ととりながら歴史的に進展し、現代でも大きな思想的可能性を秘めている。この授業では、その今日までの変遷を通時的に追うことによって、宗教哲学という複雑な構成体について、受講者が一通りの見取図を得られるようにすることを目的とする。

[授業計画と内容]

以下のテーマについて授業を行っていく(細部は変更の可能性あり)。
第1回 宗教と哲学:根本の問いから考える。
第2回 ミュートスからロゴスへ:哲学の誕生
第3回 ソクラテス、プラトン、アリストテレス:哲学における神
第4回 ユダヤ教、キリスト教、イスラム教:啓示と信仰の神
第5回 ヘブライズムとヘレニズムの出会い:キリスト教神学の成立
第6回 中世における神学と哲学:スコラ哲学と神秘主義
第7回 近世形而上学:デカルトと哲学的神学の流れ
第8回 宗教哲学の成立と展開(1):カントとシュライアマハー
第9回 宗教哲学の成立と展開(2):ヘーゲルとキルケゴール
第10回 「神の死」とニヒリズム:ニーチェ
第11回 哲学と宗教の「解体」的反復:ハイデガー
第12回 日本の宗教哲学と仏教的伝統(1):西田幾多郎
第13回 日本の宗教哲学と仏教的伝統(2):九鬼周造
第14回 アウシュヴィッツ以降の宗教哲学:レヴィナス
第15回 フィードバック

 

開講期・曜時限 教員 種別 題目
後期月1 杉村靖彦 講義 宗教学B(講義)
[授業の概要・目的]

宗教哲学とは、哲学の一形態であると同時に、宗教研究のさまざまな道の一つでもある。この両面性とそれによる独自な意義が理解できるように、この授業では、宗教哲学と宗教学の歴史的関係を明らかにした上で、基本となる文献を幅広く選び、それぞれについて読解の手がかりとなるような解題を行っていく。それを通して、この分野における過去の重要な思索を自ら追思索し、宗教という事象を視野に入れた哲学的・学問的思索の一端に触れることが、この授業の目的である。

[授業計画と内容]

以下のテーマについて授業を行っていく(細部は変更の可能性あり)。
第1回 宗教哲学と宗教学(1):歴史的位置づけ
第2回 宗教哲学と宗教学(2):さまざまなアプローチ
第3回 宗教哲学と宗教学(3):現代的課題
第4回 パスカル『パンセ』:考える葦と隠れたる神
第5回 ヒューム『宗教の自然史』:経験主義的宗教論の嚆矢
第6回 カント『単なる理性の限界内の宗教』:根源悪論と宗教哲学
第7回 ニーチェ『道徳の系譜学』:ラディカルな宗教批判
第8回 ジェイムズ『宗教的経験の諸相』:宗教心理学の方法
第9回 西田幾多郎『善の研究』:日本の宗教哲学の出発点
第10回 モース『贈与論』:宗教社会学の豊饒な可能性
第11回 ハイデガー『存在と時間』:「現存在」と「死への存在」
第12回 ベルクソン『道徳と宗教の二源泉』:静的宗教と動的宗教
第13回 エリアーデ『聖と俗』:宗教現象学の射程
第14回 ヨナス『アウシュヴィッツ以後の神概念』:神概念の解体的変容
第15回 フィードバック

 

開講期・曜時限 教員 種別 題目
前期水4 杉村靖彦 特殊講義 告白・反省・自伝-「自己を語る」ことの宗教哲学
[授業の概要・目的]

「自覚」とは西田哲学の中心概念であり、かつ西田に始まる「京都学派」の哲学者たちが緩やかに共有する思考態度の表現である。だが、この語は元々「自己意識」に当たる西洋語の翻訳語として導入され、西田以前に一定程度使用されていたものであった。そのため、「アウグスティヌスの自覚」や「デカルトの自覚」といった表現が、違和感なく成り立ちえたのである。
だとすれば、京都学派の哲学を通して豊かに展開されたこの自覚概念を手引きとして、西洋哲学や宗教思想においてそれに対応する事象を見出し、それを自覚概念の光の下で新たに解釈し直すことも可能ではないか。本講義では、このような仕掛けを組みこんだ形で、宗教哲学を学ぶ上で重要な哲学・宗教思想の数々を年代順に通覧していくことによって、「自覚」論的観点から読み直された西洋哲学・宗教思想史の一端を提示してみたい。

[授業計画と内容]

以下の諸テーマについて、一つのテーマ当たり2回程度の授業をあてて講義する。
(「特殊講義」という、教員の研究の進展を直接反映させることを旨とする授業であるので、1回ごとの授業内容を細かく記すことはしない。また、以下の諸テーマ自体も部分的には変更の可能性がある。)

1.1. 「私自身が私にとって大きな謎となってしまった」(アウグスティヌス):「告白」とは何をすることか。
1.2. 「告白」という主題の現代的諸変奏:ハイデガー、リクール、フーコー
2.1. 「哲学の開始そのものであるような働きの誕生」(ナベール):「反省」の深化と反転
2.2. 「反省」の直接経験の諸相:カントとフランス反省哲学の系譜
3.1. 「ありそうにもないもの、それはこの世では名前である」(デリダ):「自伝」〔=自己の-生を-記すこと(auto-bio-graphie)〕というアポリア
3.2.「自伝」のアポリアと生/死の交錯:デリダと宗教哲学

 

開講期・曜時限 教員 種別 題目
後期水4 杉村靖彦 特殊講義 西谷宗教哲学の研究(3)
[授業の概要・目的]

西谷啓治(1900-1990)は、西田、田辺の後の京都学派の第三世代を代表する哲学者であり、大乗仏教の伝統を換骨奪胎した「空の立場」から、「ニヒリズム以後」の現代の思索の可能性を追究したその仕事は、没後30年を経て国内外で多方面からの関心を引きつつある。しかし、その全体を組織的に考察した本格的な研究は、まだほとんどないと言ってよい。
本講義は、この西谷宗教哲学の全体を通時的かつ網羅的に研究し、今後の土台となりうるような組織的な理解を形成しようとするものである。それによって、今日の宗教哲学がそこから何を受けついでいけるかを、批判的に考究していくための拠点を手に入れることを目指す。
この研究は、二年前から各年度の後期の特殊講義として進めてきたものであり、今期の授業はその続きであるが、来年度以降もさらに何年かの間、同様の仕方で続けていく予定である。今年度は1930年代後半のアリストテレスへの取り組みから考察を始め、前期西谷の到達点としての「根源的主体性」の立場が、戦時中の歴史哲学や戦後のニヒリズム論によってどのように変容/変質していったかを追跡していきたい。

[授業計画と内容]

以下の諸テーマについて、一つのテーマ当たり2~4回の授業をあてて講義する。
(「特殊講義」という、教員の研究の進展をダイレクトに反映させることを旨とする授業であるので、1回ごとの授業内容を細かく記すことはしない。また、以下の諸テーマにしても、細部については変更の可能性がある。)

1.導入―西谷宗教哲学の受け取り直しのために
2.昨年度の授業の要約
3.真に「現(Da)」なる処-『アリストテレス論攷』の意義
4.『根源的主体性の哲学』―前期西谷宗教哲学の到達点
5.「近代の超克」の光と影―西谷の歴史哲学的考察
6.「虚無」と「無」の交錯―『ニヒリズム』と『神と絶対無』

なお、最後の授業は、本学期の講義内容全体をめぐる質疑応答と議論の場とし、講義内容の受講者へのフィードバックを図る。

 

開講期・曜時限 教員 種別 題目
前期火5 伊原木大祐 特殊講義 災厄のレクチュール:防御反応としての理論
[授業の概要・目的]

本講義では、災厄(人災および天災)を被る側の視点に立って、そうした出来事を受け止める中で生じてきたいくつかの神学的/哲学的/宗教的解釈を考察する。古典的には「悪の問題(The Problem of Evil)」と呼ばれてきた主題系の一部と重なるものである。直接扱うわけではないが、その現代的バージョンの背後には「アウシュヴィッツ」の出来事が伏在している。
この授業で具体的に取り上げる解釈体系は、大別すると、「(反‐)神義論」・「ユダヤ的ヒューマニズム」・「呪術」の3つとなる。これらの筋立て自体、災厄に対する心理的な防衛装置として機能しているというのが、講義担当者によるさしあたりの仮説である。神学的な問いかけから宗教哲学的、さらには宗教学的な問題圏へと移行していくことで、この問題の広範な射程と現代的意義を検討してゆく。

[授業計画と内容]

初回は導入に当てる。第2回から本格的な議論に入ってゆくが、講義の性質上、各トピックに対して【 】で指示した週数を充てる。各々を論じるのに時間が足りない場合は、問題を深く掘り下げてゆく目的で、週数を調整・変更する可能性がある。

1.導入的概説【1週】
2.神義論とその批判~ライプニッツからヴィーゼルへ【4週】
3.「人間」への回帰~ユダヤ的ヒューマニズムの可能性【4週】
4.宗教と呪術~歴史的概観【2週】
5.呪術の役割と意義【3週】
6.フィードバック【1週】

 

開講期・曜時限 教員 種別 題目
後期火5 伊原木大祐 特殊講義 ミシェル・アンリの哲学思想:社会批判と共同性
[授業の概要・目的]

本授業では、独創的な「生の現象学」を打ち立てた哲学者ミシェル・アンリ(1922-2002)の思想を扱う。アンリの著作群はすでにその初期から、あるタイプの宗教思想を考えるうえで有効な補助となる図式を提供してくれるものであり、今年度の講義はそのことを証するための予備的考察を意図している。ともすると概念的な思弁のようにも見えるこの思想は、実際には、いくつかの具体的な実践形態へと開かれていることを強調したい。
まずは、アンリが使用する基本タームを実際のテクストに沿って説明していく。そこでは「生」「内在」「超越」「脱立」「自己触発」「情感性」といった諸概念が俎上に載せられるだろう。
続いて、アンリの重視する「生」概念が個体性と強く結びついている点を確認した上で、それがいかにして社会理論へと展開していくのかを示す。
最後に、1980年代末に構想されていたとおぼしきアンリの共同体論を取り上げ、生の現象学の射程を拡張的な形で追理解する。

[授業計画と内容]

初回は導入に当てる。第2回から徐々に議論の核心へと近づいてゆくが、講義の性質上、各トピックに対して【 】で指示した週数を充てる。各々を論じるのに時間が足りない場合は、問題を深く掘り下げてゆく目的で、週数を調整・変更する可能性がある。

1.イントロダクション【1週】
2.アンリ現象学の捉え直し(1):現象論と超越のシステム【1週】
3.アンリ現象学の捉え直し(2):内在・自己触発・情感性【2週】
4.アンリ現象学の捉え直し(3):生における矛盾と統一【1週】
5.「野蛮」をめぐって:技術の問いと資本主義【3週】
6.「他者」理解をめぐって:シェーラーからアンリへ【3週】
7.「自己触発」をめぐって:新たな考察の糸口【3週】
8.フィードバック【1週】

 

開講期・曜時限 教員 種別 題目
前期月4 津田謙治 演習 教父学の基本的研究を読むII/A
[授業の概要・目的]

この演習の目的は、初期キリスト教における教義史に関する古典的研究を読み、膨大な古代史料の中から教理的主題や歴史的背景、教父の特徴などを網羅的に概観するとともに、教義がどのような歴史的展開を示しているかを学ぶことである。この演習では、ドイツ語で書かれた後、英語や仏語に訳され、幅広く受容された教父研究のテキストを精読することによって、初期キリスト教思想研究に必要な文献読解力の向上を目指す。

[授業計画と内容]

今年度の前期では、H.R.ドロープナーの主要著作の一つである『教父学教本』を取り上げ、演習を行う。

Hubertus R. Drobner, Lehrbuch der Patrologie, 3te Auflage, Frankfurt am Main, 2011.

1.オリエンテーション
2.「教父」概念
3.教会教父
4.教父学
5.キリスト教文献の成立
6.口伝
7.使徒文献
8.聖書正典の形成
9.新約
10.旧約
11.福音
12.文学的類型
13.ヤコブ原福音書
14.トマス福音書
15.まとめと総括およびレポート等に関する解説

 

開講期・曜時限 教員 種別 題目
後期月4 津田謙治 演習 教父学の基本的研究を読むI/B
[授業の概要・目的]

この演習の目的は、初期キリスト教における教義史に関する古典的研究を読み、膨大な古代史料の中から教理的主題や歴史的背景、教父の特徴などを網羅的に概観するとともに、教義がどのような歴史的展開を示しているかを学ぶことである。この演習では、ドイツ語で書かれた後、英語や仏語に訳され、幅広く受容された教父研究のテキストを精読することによって、初期キリスト教思想研究に必要な文献読解力の向上を目指す。

[授業計画と内容]

前期に引き続き、H.R.ドロープナーの主要著作の一つである『教父学教本』を取り上げ、演習を行う。

Hubertus R. Drobner, Lehrbuch der Patrologie, 3te Auflage, Frankfurt am Main, 2011.

1.オリエンテーション
2.使徒たちの手紙
3.ニコデモ福音書
4.使徒行伝
5.文学的類型
6.ペトロ行伝
7.パウロ行伝
8.書簡
9.文学的類型(書簡)
10.バルナバの手紙
11.黙示録
12.文学的類型(黙示録)
13.ヘルマスの牧者
14.シビュラの託宣
15.まとめと総括およびレポート等に関する解説

 

開講期・曜時限 教員 種別 題目
前期火4 伊原木大祐 演習 Georges Bataille, Théorie de la religionを読む
[授業の概要・目的]

本演習では、昨年度に続き、ジョルジュ・バタイユの宗教論『宗教の理論』(1974)を扱う。本書は、バタイユが1948年に(ヴァール主宰の)哲学コレージュで行った講演「宗教史概略」をもとに執筆した作品である。ほぼ完成していたにもかかわらず、生前に出版されることはなかった。「宗教」の理論と銘打ってはいるが、代表作『呪われた部分』とほぼ同時期に書かれていることもあり、バタイユの濃密な哲学的思索が展開されている。本書を宗教哲学的な視野のもとで読み進めつつ、参加者による思索と議論をより重視した演習としたい。本年度は、第一部Ⅱ「人間性と俗なる世界の形成」から再読する。

[授業計画と内容]

第1回 イントロダクション
本演習で扱う著作およびその著者について知っておくべき最低限の事柄を説明する。
第2~14回
『宗教の理論』を途中から読み進めてゆく。進度は出席者の語学力に合わせて調整する。
第15回 フィードバック

 

開講期・曜時限 教員 種別 題目
後期火4 伊原木大祐 演習 Max Scheler, Tod und Fortlebenを読む
[授業の概要・目的]

本演習では、マックス・シェーラーの遺稿「Tod und Fortleben」を読み進めてゆく。主著『倫理学における形式主義と実質的価値倫理学』とほぼ同時期に執筆されたと考えられている本論考は、死や死後生に対する宗教哲学的アプローチの模範的な実例として、今でもなお精読に値するといえよう。訳読と解釈を通じ、参加者一人一人が自身の思索を深めていくことが期待される。本年度は、全体の後半部分に当たる「Das Fortleben」の箇所を読む予定である。

[授業計画と内容]

第1~2回 イントロダクション
本演習で扱うテクストおよびその著者シェーラーについて知っておくべき最低限の事柄を紹介する。あわせて、テクスト前半部分の内容についても解説を行う。
第3~14回
「Tod und Fortleben」を全集版で1回に1~1.5頁のペースで読み進めてゆく。
第15回 フィードバック

 

開講期・曜時限 教員 種別 題目
前期水5 杉村靖彦 演習 Stanislas Breton, “L’Ecole de Kyoto” および関連文献を読む
[授業の概要・目的]

スタニスラス・ブルトン(1912-2005)は、20世紀後半のフランスのユニークなカトリック哲学者であり、早くから現象学等の現代哲学を縦横に活用する一方で、新プラトン主義やキリスト教神秘主義の思想を深くとらえ直して独自の形而上学を展開した。アルチュセールの友人としても知られ、その招聘で一時パリの高等師範学校でも教えた。20世紀終盤における「フランス現象学の神学的転回」の源泉となった思想家でもある。
授業で扱うのは、このブルトンが1974年に来日し、京都で西谷啓治らが主催する「自然とは何か」と題されたシンポジウムに参加した際の印象を元にした論考「京都学派」(1995)である。「無(rien)」の問題を自らの形而上学に深く組みこむブルトンが、京都での経験と西谷から受けた印象を織り交ぜて自らの「京都学派」像を描いていくこのテクストは、そこに含まれる誤解や一面的な見解も含めて、独自な思索が躍動する間文化的な哲学的対話の貴重なドキュメントとなっている。
この演習では、ブルトン自身の思想が分かる他の文献や、このシンポジウムの議論を踏まえて西谷が著した論考「自然について」などの関連文献も参照しつつ、テクストを共に精読していきたい。

[授業計画と内容]

第1回-第2回 導入
テクストを読み進める上で必要な導入的説明を教員が行う。3回目以降の担当者を決める。

第3回‐14回
ブルトンのテクストを精読していく。必要に応じて、関連文献から抜粋した箇所も合わせて読んでいく。各回の担当者は、担当箇所の訳出と内容要約に加え、疑問点の提示や問題提起などを含めた報告を行い、それを受けて教員がコメントと解説を行う。

第15回
著作全体を振り返り、教員との質疑応答や出席者間での討議を行う。

 

開講期・曜時限 教員 種別 題目
後期水5 杉村靖彦 演習 Paul Ricœur, La symbolique du mal, Première partie: Les symboles primaires を読む
[授業の概要・目的]

ポール・リクール『悪のシンボリズム』は、1960年に『有限性と罪責性』の第2分冊として刊行され、リクールを解釈学的哲学への転じさせた記念碑的著作である。同時にこの著作は、その大部分が聖書や諸文明の神話から渉猟した悪の象徴的・神話的表現の意味解釈に充てられており、リクールが自らの哲学的立場を更新するにあたって、従来の哲学の境界を踏み越え、宗教的表現の生成現場へと深く沈潜したことが見て取れる。
本演習では、この著作の第一部「一次的象徴:穢れ・罪・負い目」を材料とし、昨年度後期までに読んだ「罪」までの内容を踏まえて、「負い目」の章を精読していく。リクール解釈学の原点における哲学と宗教の交差の有りようを検討することによって、宗教哲学の諸可能性を探究するための材料としたい。

[授業計画と内容]

第1回-第2回 導入
テクストを読み進める上で必要な予備知識の解説を行う。3回目以降の担当者を決める。
第3回‐第15回
リクール『悪のシンボリズム』第1部の「負い目」の章から重要箇所を抜粋し、1回当たり2頁程度のペースで精読していく。担当者の訳出や内容要約に教員が詳細なコメントを加えた後、それを元に出席者間でさまざまな角度からの検討や考察を行っていく。

 

開講期・曜時限 教員 種別 題目
前期金3 景山洋平 演習 存在の問いの人間性とその歴史的布置:前期ハイデガーにおける言説実践の研究
[授業の概要・目的]

本演習では、Martin HeideggerのSein und Zeitおよび全集60巻Phaenomenologie des religioesen Lebens、全集19巻Platon:Sophistesの必要箇所を精読すると共に、当時の新約聖書研究(ブルトマンなど)やプラトン解釈(マールブルク学派など)の文献を考察する。Sein und Zeitの実存論的分析において現存在の本来性を「証し」する良心現象が「呼ぶ者」と「呼ばれる者」の関係により記述されるように、ハイデガーの現象学的存在論はある特定の対話構造に貫かれている。これは現象学を構成するロゴス概念が相互共同的な語りとされることと符合する。Sein und Zeitにおいて、いわば対話を通して、「問う者」としての現存在自身がおのれを見えるようにし、おのれを示すのである。しかるに、『存在と時間』に先だつ諸講義を検討すると、ハイデガーが新約聖書のパウロ書簡やアウグスティヌスの『告白』、そしてプラトンの対話篇がもつ言説実践としての性格に着目していたこと、しかもその際に同時代の聖書学やギリシア哲学研究を意識していたことが分かる。ここから、西洋哲学における言説実践の歴史的系譜が、「存在の問い」を担う人間性(現存在)が実存論的分析を通して語り出される際の<古層>となったことが予想される。この点を考察することは、現象学的存在論における人間概念の歴史的位置と含蓄の理解につながるだろう。本演習では、こうした見込みの元に、参加者とともにSein und Zeitの新たな解釈に取り組みたい。

[授業計画と内容]

毎回一名から数名の訳読と報告を行い、それにつづき教員が訳読とテクストの哲学的意義へのコメントを行い、その後は全員で討議する。以下に各回の講読予定を示すが、授業の進度はそのつど前後しうる。毎回2~3頁ほど講読する。

第一回 イントロダクション
第二回~三回 Sein und Zeit, 34節 「語り」概念を中心に
第四回 Sein und Zeit, 7節(B) 「ロゴス」概念を中心に
第五回~六回 Sein und Zeit, 56~57節 「良心」の呼び声の構造を中心に
第七回~九回 Phaenomenologie des religioesen Lebens およびブルトマンなど同時代の新約聖書およびアウグスティヌスの研究文献
第十回~十三回 Platon:Sophistes およびマールブルク学派やシュテンツェルなど当時のプラトン研究文献
第十四回:講読箇所に関する全体的考察
第十五回 フィードバック

 

開講期・曜時限 教員 種別 題目
前期木2 根無一行 演習 Gayatri Chakravorty Spivak, “Can the Subaltern Speak?”(1988)を読む 1
[授業の概要・目的]

エドワード・サイードらとともにポストコロニアル批評の代表者とされるGayatri Chakravorty Spivak(1942-)の主論文 “Can the Subaltern Speak?”(1988)を読む。デリダ『グラマトロジーについて』(1967)の英訳(1976)とそれに付した長大な序文によって世に知られることになったスピヴァクは本論文において、ポスト構造主義の哲学者たちによる主権的主体の脱中心化の言説になお残る西洋的知の覇権を炙り出していこうとする。スピヴァクによれば、自らを脱主体化する知識人たちが抑圧された者たちに自己を表象させようとするその仲介作業が暗黙裡に前提しているのは、「透明」な場所への自分たちの位置づけである。スピヴァクは政治経済的角度からの「表象」概念の検討を通して、そのような立ち位置から被抑圧者たちを主体と見なすその身振り自体がグローバルサウスのサバルタン(最貧層の被抑圧者(女性))の声を抹消していると批判していく。宗教哲学が特定の場所と時代を出自とする営みである以上、西洋的知の継承者でもある自分自身の立場性に極めて自覚的なスピヴァクのこうした議論は「現代日本(あるいは京都(大学))」で「宗教哲学」に携わる者に重層的で広い射程を持った問いを突きつけるだろう。私たちは何をどう考えていくべきなのか、本書を読みながらその手がかりを得たい。40頁ほどの小論だが、密度の濃い難解かつ悪文のテキストなので、受講者による活発な議論が期待される。

[授業計画と内容]

第1回 導入
本講読の進め方を確認し、著者とテキストに関する基本的な事柄の説明等を行う。

第2~14回
テキストの読解と議論等。

第15回
まとめ

 

開講期・曜時限 教員 種別 題目
後期木2 根無一行 講読 Gayatri Chakravorty Spivak, “Can the Subaltern Speak?”(1988)を読む 2
[授業の概要・目的]

前期に引き続き、エドワード・サイードらとともにポストコロニアル批評の代表者とされるGayatri Chakravorty Spivak(1942-)の主論文 “Can the Subaltern Speak?”(1988)を読む。デリダ『グラマトロジーについて』(1967)の英訳(1976)とそれに付した長大な序文によって世に知られることになったスピヴァクは本論文において、ポスト構造主義の哲学者たちによる主権的主体の脱中心化の言説になお残る西洋的知の覇権を炙り出していこうとする。スピヴァクによれば、自らを脱主体化する知識人たちが抑圧された者たちに自己を表象させようとするその仲介作業が暗黙裡に前提しているのは、「透明」な場所への自分たちの位置づけである。スピヴァクは政治経済的角度からの「表象」概念の検討を通して、そのような立ち位置から被抑圧者たちを主体と見なすその身振り自体がグローバルサウスのサバルタン(最貧層の被抑圧者(女性))の声を抹消していると批判していく。宗教哲学が特定の場所と時代を出自とする営みである以上、西洋的知の継承者でもある自分自身の立場性に極めて自覚的なスピヴァクのこうした議論は「現代日本(あるいは京都(大学))」で「宗教哲学」に携わる者に重層的で広い射程を持った問いを突きつけるだろう。私たちは何をどう考えていくべきなのか、本書を読みながらその手がかりを得たい。40頁ほどの小論だが、密度の濃い難解かつ悪文のテキストなので、受講者による活発な議論が期待される。

[授業計画と内容]

第1回 導入
本講読の進め方を確認し、著者とテキストに関する基本的な事柄の説明等を行う。

第2~14回
テキストの読解と議論等。

第15回

 

開講期・曜時限 教員 種別 題目
後期木2 安部浩 演習 シェリングの自由論
[授業の概要・目的]

カント、フィヒテ、ヘーゲル等の哲人。ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン等の楽聖。これらの巨人に伍して空前絶後の精神の運動を牽引しつつ、百花繚乱の「ゲーテの時代」を駆け抜けた早熟の天才がいた。F.W.J. シェリングである。
彼が遺した数多の著述・講義録の中でも、『人間の自由の本質』こそは蓋し最重要作の一つである。では本著作において、「哲学における最内奥の中心点」と自らが見做す「必然性と自由の対立」なる問題にシェリングはいかなる仕方で挑むのか。「ドイツ観念論の形而上学の頂点」(ハイデガー)と評される当該著作を冒頭から繙読し、議論を戦わせていくことで、われわれは、自由、汎神論、悪、無底等をめぐる問題系の考察に努めることにしよう。そしてそれにより、語学・哲学上の正確な知識、及び論理的思考力に基づく原典の厳密な読解力を各人が涵養すること、そしてこの読解の過程において浮上してくる重要な問題をめぐる参加者全員の討議を通して、各人が自らの思索を深化させていくことが、本演習の目的である。

[授業計画と内容]

原則的には毎回、予め指名した二名の方にそれぞれ、報告と演習の記録を担当して頂くことにする。ここに各回に扱う予定である原典の範囲を記すが、授業の進度については出席者各位の実力を勘案して修正することもある。
以下、内容の梗概に続き、括弧内に教科書の頁番号を(また適宜、斜線を付して行番号をも)示す。
1. ガイダンスと前期の復習
2. 「悪の現実性の演繹・その3」(52/30-55/22)
3. 「悪の現実性の演繹・その4」(55/23-59)
4. 「悪の現実性の演繹・その5」(60-63/18)
5. 「悪の現実性の演繹・その6」(63/19-66/4)
6. 「神の自由・その1」(66/5-70/29)
7. 「神の自由・その2」(70/30-/75/10)
8. 「神の自己啓示の目標ー愛の全一性・その1」(75/11-79/17)
9. 「神の自己啓示の目標ー愛の全一性・その2」(79/18-82/8)
10. 「神の自己啓示の目標ー愛の全一性・その3」(82/8-84/31)
11. 「神の自己啓示の目標ー愛の全一性・その3」(84/32-87)
12. 辻村公一「無底ーシェリング『自由論』に於ける」
13. 薗田坦「無底・意志・自然ーJ.ベーメの意志-形而上学について」
14. 総括と総合討論
15. フィードバック

 

開講期・曜時限 教員 種別 題目
前期金4・5(隔週) 杉村靖彦

伊原木大祐

演習 宗教哲学基礎演習A
[授業の概要・目的]

宗教哲学の諸問題を考えるための基本となる文献を選び、宗教学専修の大学院生にも協力を仰ぎながら、それらを共に読み進み、問題を掘り起こし、議論を行う場となる授業である。授業への能動的な参加を通して、より専門的な研究への橋渡しになるような知識と思考法の獲得を目指す。
宗教学専修の学部生の必修授業であるが、哲学と宗教が触れ合う問題領域に関心をもつ2回生、および他専修学生の参加も歓迎する。

[授業計画と内容]

「宗教哲学」という分野の思索様式には、どうしても概説的紹介には馴染まない面がある。宗教の問いと哲学の問いがその源泉において交差連関し、しかもそれが人間が生きていくこと自体にまつわる問題と直結するということ、このことを見据えた学問的研究がいかなる形をとりうるかということは、その「実例」となる仕事の熟読を通して学んでいくしかない。
今期の授業では、京大宗教学専修の長い歴史の一端に触れてもらうという意味も込めて、これまでの専修担当教員や専修出身者の論考の内、専門的な議論に終始せずに広い視座で具体的な問題にも触れているものを数点取り上げ、毎回1点ずつ読んでいきたい。なお、実際に何を読むかは、履修者の関心によって調整することもありうるので、シラバスにはあらかじめ記さないことにする。
各回2,3人の担当者を決め、授業の前半は、担当者の内容要約および考察の発表に充てる。授業の後半では、教員の司会進行の下、発表内容をめぐって、チューターの大学院生たちも交えて、質疑応答と議論を行っていく。隔週授業のため、全7回として各回のテーマを記しておく。(詳細は変更の可能性あり)

1. オリエンテーション
2. 論考1についての発表と議論
3. 論考2についての発表と議論
4. 論考3についての発表と議論
5. 論考4についての発表と議論
6. 論考5についての発表と議論
7. 総括

 

開講期・曜時限 教員 種別 題目
前期金4・5(隔週) 杉村靖彦

伊原木大祐

演習 宗教哲学基礎演習B
[授業の概要・目的]

宗教哲学の基本文献を教師とチューター役の大学院生の解説を手がかりに読み進めていくことで、より専門的な研究への橋渡しになるような知識と思考法の獲得を目指す。4回生以上の宗教学専修在籍者にとっては、卒論の中間発表の場ともなる。
宗教学専修の学部生を主たる対象とするが、哲学と宗教が触れ合う問題領域に関心をもつ2回生、および他専修学生の参加も歓迎する。

[授業計画と内容]

宗教哲学の基本文献といえる著作や論文を選んで各回の授業に割り振り、事前に出席者に読んできてもらう。そして、毎回チューター役の大学院生の解説を踏まえて、教員の司会進行の下で、質疑応答と議論を行っていく(その際、履修者には特定質問者の役割を少なくとも1回は担当してもらう)。また、卒論の中間発表の際には、論述の仕方や文献の扱い方なども指導し、論文の書き方を学ぶ機会とする。
隔週の授業のため、全7回として各回のテーマを記しておく。なお、どのような文献を取り上げるかは、前期の「宗教哲学基礎演習A」の様子を見て決めることにする。それによって、各回で取り上げる文献の種類も、以下の記したものとは異なる可能性もある。

第1回  オリエンテーション・卒業論文の中間発表
第2回  宗教哲学の基本文献(近代フランス)の読解・解説・考察
第3回  宗教哲学の基本文献(近代ドイツ)の読解・解説・考察
第4回  宗教哲学の基本文献(近現代英米)の読解・解説・考察
第5回  宗教哲学の基本文献(現代フランス)の読解・解説・考察
第6回  宗教哲学の基本文献(現代ドイツ)の読解・解説・考察
第7回  宗教哲学の基本文献(京都学派の哲学)の読解・解説・考察

 

開講期・曜時限 教員 種別 題目
金4・5(隔週) 杉村靖彦

伊原木大祐

演習Ⅱ 宗教学の諸問題
[授業の概要・目的]

演習参加者が、宗教学の諸問題のなかで各人の研究するテーマに即して発表を行い、その内容をめぐって、全員で討論する。討議のなかで、各人の研究を進展させることが目的である。

[授業計画と内容]

参加者が順番に研究発表を行い、それについて全員で討論する。各人の発表は2回にわたって行う。即ち、発表者は1時間以内の発表を行い、続いてそれについて討論する。発表者はその討論を受けて自分の発表を再考し、次回に再考の結果を発表して、それについてさらに踏み込んだ討論を行う。したがって、1回の授業は前半と後半に分かれ、前半は前回発表者の2回目の発表と討論、後半は新たな発表者の1回目の発表と討論となる。

第1回 オリエンテーション、参加者の発表の順番とプロトコールの担当者を決定。
第2回ー7回  博士課程の院生による発表と全員での討論。
第8回-15回 修士課程の院生による発表と全員での討論。

 

開講期・曜時限 教員 種別 題目
前期集中 西村明 特殊講義 宗教学的慰霊論の検討
[授業の概要・目的]

慰霊・追悼と言えば靖国問題に焦点化されがちである。しかし、宗教学的な視点から見れば、そうした国家と宗教をめぐる政治的論点ばかりではなく、生者にとって死者がどのような存在であるのか、死者をめぐる記憶が生者の現在や未来にどのように関わるのかという問いも欠かせない。こうした問いの解明のためには、諸宗教におけるそれぞれの教義に照らして導かれるような意味づけにとどまらず、特定の宗教伝統には必ずしも位置付けられないような局所的・個人的創意など、多様な言説や諸実践を視野に入れる必要があろう。この講義では、戦後日本における具体的な慰霊の諸事例を踏まえながら、上記の問いに迫ってみたい。

[授業計画と内容]

第1回 ガイダンスという名の宗教学出門
第2回 死者をめぐる記憶と儀礼
第3回 シズメとフルイ
第4回 近現代日本の戦争死者慰霊
第5回 長崎における原爆慰霊の展開
第6回 永井隆の浦上燔祭説
第7回 死してなお動員中の学徒たち
第8回 無縁空間の可能性
第9回 遺骨収集と宗教界
第10回 遺族・戦友にとっての遺骨収集・戦地慰霊
第11回 サードパーティーの慰霊論
第12回 記憶の洋上モード
第13回 戦争体験と宗教体験
第14回 ヴァナキュラー宗教としての慰霊
第15回 総括とディスカッション

 

開講期・曜時限 教員 種別 題目
前期集中 中島隆博 特殊講義 日本の近代思想を読み直す 哲学
[授業の概要・目的]

日本の近代思想を、哲学者の言説をたどりながら、明治から平成に至るまで通観します。具体的には、中島隆博『日本の近代思想を読み直す 哲学』(東京大学出版会、2023年)、とりわけその「資料編」を一緒に読みながら、日本近代哲学の可能性と限界を考えてみたいと思います。

[授業計画と内容]

第1回 日本哲学の系譜学
第2回 二つの啓蒙ーー福沢諭吉と中江兆民
霊魂不滅論争
第3回 東京学派の哲学
第4回 近代日本における中国哲学
近代日本におけるインド哲学
第5回 京都学派の礎ーー西田幾多郎
第6回 帝国日本を支える論理ーー田辺元
第7回 フィロロジーの行方ーー和辻哲郎
偶然性と未来への志向ーー九鬼周造
第8回 ディアスポラの哲学ーー三木清
マルクス主義哲学ーー戸坂潤
第9回 東北大学で展開した哲学
第10回 戦後民主主義ーー丸山眞男
第11回  戦後マルクス主義哲学ーー梅本克己
経験と思想ーー森有正
第12回 神秘についてーー井筒俊彦
立ち現われ一元論ーー大森荘蔵
第13回  共同主観性ーー廣松渉
あわいの哲学ーー坂部恵
第14回  装飾的思考ーー北川東子
「自分」という謎ーー池田晶子
第15回 まとめ

 

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宗教学研究室紀要 第19号(2022年) https://www.bun.kyoto-u.ac.jp/religion/rel-annual2022-top/ Mon, 17 Apr 2023 01:25:05 +0000 https://www.bun.kyoto-u.ac.jp/?p=65621 表紙

目次

<公募論文>

算術の論理学的基礎付けとその現象学的再解釈——リシールによるフレーゲ、デデキント読解

長坂 真澄 (3)

<研究ノート>

編集後記

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宗教学研究室紀要 第18号(2021年) https://www.bun.kyoto-u.ac.jp/religion/rel-annual2021-top/ Fri, 06 May 2022 13:47:18 +0000 https://www.bun.kyoto-u.ac.jp/?p=61630 表紙

目次

<公募論文>

夢と歴史性 ——デリダ『グラマトロジーについて』におけるルソーの「欲望」読解

 

森脇 透青 (3)

 

鳥尾 理沙 (19)

 

林 航平 (35)

<研究ノート>

ニーチェ思想にみる「誘惑」というテーマ ——『曙光』を中心に

丸本 高己 (82)

バルトの解釈学における〈服従〉

石川 えりや (92)

『善の研究』における「要求」とその自覚

竹内 彩也花 (103)

メルロ=ポンティの超越論的論証と懐疑論の消息

鳥居 千朗 (115)

ジョルジュ・バタイユにおける聖性について ——〈異質学〉における〈物質〉と〈社会〉

林 淳 (129)

編集後記

(144)

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講義題目 2022年度 https://www.bun.kyoto-u.ac.jp/religion/rel-courses2022/ Wed, 16 Mar 2022 08:06:08 +0000 https://www.bun.kyoto-u.ac.jp/?p=60636 開講期・曜時限 教員 種別 題目 前期月1 杉村靖彦 講義 宗教学A(講義) [授業の概要・目的]

宗教と哲学は、人間存在の根本に関わる問いを共有しながらも、歴史的に緊張をはらんだ複雑な関係を結んできた。その全体を視野に入れて思索しようとする宗教哲学という営みは、多面的な姿ととりながら歴史的に進展し、現代でも大きな思想的可能性を秘めている。この授業では、その今日までの変遷を通時的に追うことによって、宗教哲学という複雑な構成体について、受講者が一通りの見取図を得られるようにすることを目的とする。

[授業計画と内容]

以下のテーマについて授業を行っていく(細部は変更の可能性あり)。
第1回 宗教と哲学:根本の問いから考える。
第2回 ミュートスからロゴスへ:哲学の誕生
第3回 ソクラテス、プラトン、アリストテレス:哲学における神
第4回 ユダヤ教、キリスト教、イスラム教:啓示と信仰の神
第5回 ヘブライズムとヘレニズムの出会い:キリスト教神学の成立
第6回 中世における神学と哲学:スコラ哲学と神秘主義
第7回 近世形而上学:デカルトと哲学的神学の流れ
第8回 宗教哲学の成立と展開(1):カントとシュライアマハー
第9回 宗教哲学の成立と展開(2):ヘーゲルとキルケゴール
第10回 「神の死」とニヒリズム:ニーチェ
第11回 哲学と宗教の「解体」的反復:ハイデガー
第12回 日本の宗教哲学と仏教的伝統(1):西田幾多郎
第13回 日本の宗教哲学と仏教的伝統(2):九鬼周造
第14回 アウシュヴィッツ以降の宗教哲学:レヴィナス
第15回 フィードバック

 

開講期・曜時限 教員 種別 題目
後期月1 杉村靖彦 講義 宗教学B(講義)
[授業の概要・目的]宗教哲学とは、哲学の一形態であると同時に、宗教研究のさまざまな道の一つでもある。この両面性とそれによる独自な意義が理解できるように、この授業では、宗教哲学と宗教学の歴史的関係を明らかにした上で、基本となる文献を幅広く選び、それぞれについて読解の手がかりとなるような解題を行っていく。それを通して、この分野における過去の重要な思索を自ら追思索し、宗教という事象を視野に入れた哲学的・学問的思索の一端に触れることが、この授業の目的である。

[授業計画と内容]

以下のテーマについて授業を行っていく(細部は変更の可能性あり)。
第1回 宗教哲学と宗教学(1):歴史的位置づけ
第2回 宗教哲学と宗教学(2):さまざまなアプローチ
第3回 宗教哲学と宗教学(3):現代的課題
第4回 パスカル『パンセ』:考える葦と隠れたる神
第5回 ヒューム『宗教の自然史』:経験主義的宗教論の嚆矢
第6回 カント『単なる理性の限界内の宗教』:根源悪論と宗教哲学
第7回 ニーチェ『道徳の系譜学』:ラディカルな宗教批判
第8回 ジェイムズ『宗教的経験の諸相』:宗教心理学の方法
第9回 西田幾多郎『善の研究』:日本の宗教哲学の出発点
第10回 モース『贈与論』:宗教社会学の豊饒な可能性
第11回 ハイデガー『存在と時間』:「現存在」と「死への存在」
第12回 ベルクソン『道徳と宗教の二源泉』:静的宗教と動的宗教
第13回 エリアーデ『聖と俗』:宗教現象学の射程
第14回 ヨナス『アウシュヴィッツ以後の神概念』:神概念の解体的変容
第15回 フィードバック

 

開講期・曜時限 教員 種別 題目
前期水4 杉村靖彦 特殊講義 「自覚」論的観点からの西洋哲学・宗教思想史の試み
[授業の概要・目的]「自覚」とは西田哲学の中心概念であり、かつ西田に始まる「京都学派」の哲学者たちが緩やかに共有する思考態度の表現である。だが、この語は元々「自己意識」に当たる西洋語の翻訳語として導入され、西田以前に一定程度使用されていたものであった。そのため、「アウグスティヌスの自覚」や「デカルトの自覚」といった表現が、違和感なく成り立ちえたのである。
だとすれば、京都学派の哲学を通して豊かに展開されたこの自覚概念を手引きとして、西洋哲学や宗教思想においてそれに対応する事象を見出し、それを自覚概念の光の下で新たに解釈し直すことも可能ではないか。本講義では、このような仕掛けを組みこんだ形で、宗教哲学を学ぶ上で重要な哲学・宗教思想の数々を年代順に通覧していくことによって、「自覚」論的観点から読み直された西洋哲学・宗教思想史の一端を提示してみたい。[授業計画と内容]

以下の諸テーマについて、一つのテーマ当たり2回程度の授業をあてて講義する。
(「特殊講義」という、教員の研究の進展を直接反映させることを旨とする授業であるので、1回ごとの授業内容を細かく記すことはしない。また、以下の諸テーマ自体も部分的には変更の可能性がある。)

1.「自覚」概念の形成と背景、およびその哲学的可能性
2.デカルトの自覚-コギトと神証明の自覚論的再考
3.メーヌ=ド=ビランの自覚-「内奥感の原初的事実」と自覚する身体
4.カントの自覚-「超越論的統覚」から「根源悪」論まで
5.ベルクソンの自覚-「純粋記憶の平面」の自覚論的再考
6.ハイデガーの自覚-自覚の場としての「現(Da)」
7.ユダヤ/キリスト教の自覚-「啓示」の自覚論的解釈

 

開講期・曜時限 教員 種別 題目
後期水4 杉村靖彦 特殊講義 西谷宗教哲学の研究(2)
[授業の概要・目的]西谷啓治(1900-1990)は、西田、田辺の後の京都学派の第三世代を代表する哲学者であり、大乗仏教の伝統を換骨奪胎した「空の立場」から「ニヒリズム以後」の現代の思索の可能性を追究したその仕事は、没後30年を経て国内外で多方面からの関心を引きつつある。しかし、その全体を組織的に考察した本格的な研究は、まだほとんどないと言ってよい。
本講義は、この西谷宗教哲学の全体を通時的かつ網羅的に研究し、今後の土台となりうるような組織的な理解を形成しようとするものである。それによって、今日の宗教哲学がそこから何を受けつぐことができるかを、批判的に考究していくための拠点を手に入れることを目指す。
この研究は、昨年度後期から開始されたものであり、今期の授業はその続きであるが、来年度以降も後期の特殊講義をあて、数年かけて進めていく予定である。1924年の西谷の卒論を扱った昨年度に続いて、今年度は1930年代までの諸論考を主に扱っていきたい。[授業計画と内容]

以下の諸テーマについて、一つのテーマ当たり2~4回の授業をあてて講義する。
(「特殊講義」という、教員の研究の進展をダイレクトに反映させることを旨とする授業であるので、1回ごとの授業内容を細かく記すことはしない。また、以下の諸テーマにしても、細部については変更の可能性がある。)

1.導入―西谷宗教哲学の受け取り直しのために
2.卒論の到達点と西谷宗教哲学の端緒―昨年度の授業の要約
3.「悪の問題」への着手―西谷宗教哲学の導きの糸として
4.哲学的神秘主義と根源的主体性―前期西谷宗教哲学の二つの焦点
5.真に「現(Da)」なる処-『アリストテレス論攷』とハイデガーのアリストテレス論の並行的読解

なお、最後の授業は、本学期の講義内容全体をめぐる質疑応答と議論の場とし、講義内容の受講者へのフィードバックを図る。

 

開講期・曜時限 教員 種別 題目
前期火5 伊原木大祐 特殊講義 ユダヤ的神話の解釈学(掟の侵犯を中心に)
[授業の概要・目的]

古来、ミュートスはたえずロゴスを活気づけてきた。古典的な思想はいうに及ばず、現代の諸思想もまた、なお現存する神話的虚構を人間認識のための重要な素材として扱っている。たとえば、古代ギリシアの神話的(/叙事詩的)語りへの反応は、プラトン哲学ばかりでなく、ホルクハイマー/アドルノやヴェイユの哲学にも見られる。また、「オイディプス」や「アンティゴネ」といった神話的(/悲劇的)形象は、哲学・精神分析・フェミニズムなどを介して、今日に至るまでたえず別様に語り直されてきた。
本講義では、いくつかのユダヤ的な神話素に焦点を絞り、それを現代の哲学者たちがどのように解釈しているのかを確認しつつ、思索の糧としたい。中でも重視しているのは、「神的な命令(掟)とそこからの逸脱(侵犯)」という古代イスラエルの宗教に顕著な問題設定である。

[授業計画と内容]

初回は導入に当てる。第2回から本格的な議論に入ってゆくが、講義の性質上、各サブトピックに対して【 】で指示した週数を充てる。各々を論じるのに時間が足りない場合は、問題を深く掘り下げてゆく目的で、週数を調整・変更する可能性がある。

1.導入的概説【1週】
2.原罪神話【4週】
3.族長神話【3週】
4.脱出神話【2週】
5.法の神話【4週】
6.フィードバック【1週】

 

開講期・曜時限 教員 種別 題目
後期火5 伊原木大祐 特殊講義 ミシェル・アンリの哲学思想――導入と展開
[授業の概要・目的]

前世紀に独創的な「生の現象学」を打ち立てた哲学者ミシェル・アンリ(1922-2002)は今年、生誕100年、死後20年を同時に迎える。これを記念して、本授業では、アンリ哲学の総体的評価を遂行するとともに、そこから引き出しうる発展的議論のいくつかを提起するつもりである。
かつて「フランス現象学の神学的転回」の一翼を担う人物と目されていたアンリであるが、その思想に見られる「神学的」要素も、「現象学」的要素も、一義的に画定することはできない。授業ではこのような複雑さを考慮しつつ、初学者向けにアンリ思想の基礎理論を一通り説明したあと、場合によってはアンリ自身が目指していた議論の意図からも外れる形で、その応用可能性を探ってみたい。

[授業計画と内容]

初回は導入に当てる。第2回から徐々に本格的議論に入ってゆくが、講義の性質上、各サブトピックに対して【 】で指示した週数を充てる。各々を論じるのに時間が足りない場合は、問題を深く掘り下げてゆく目的で、週数を調整・変更する可能性がある。

1.イントロダクション【1週】
2.アンリ哲学の基本線:内在と情感性【3週】
3.アンリ哲学の転回点:他者と宗教性【3週】
4.社会理論としての内在論【1週】
5.自己触発の意味と拡張【3週】
6.問われる身体【3週】
7.フィードバック【1週】

 

開講期・曜時限 教員 種別 題目
前期月4 津田謙治 演習 教父学の基本的研究を読むI/A
[授業の概要・目的]この演習の目的は、初期キリスト教における教義史に関する古典的研究を読み、膨大な古代史料の中から教理的主題や歴史的背景、教父の特徴などを網羅的に概観するとともに、教義がどのような歴史的展開を示しているかを学ぶことである。この演習では、ドイツ語で書かれた後、英語や仏語に訳され、幅広く受容された教父研究のテキストを精読することによって、初期キリスト教思想研究に必要な文献読解力の向上を目指す。

[授業計画と内容]

今年度の前期では、H.R.ドロープナーの主要著作の一つである『教父学教本』を取り上げ、演習を行う。

Hubertus R. Drobner, Lehrbuch der Patrologie, 3te Auflage, Frankfurt am Main, 2011.

1.オリエンテーション
2.「教父」概念
3.教会教父
4.教父学
5.キリスト教文献の成立
6.口伝
7.使徒文献
8.聖書正典の形成
9.新約
10.旧約
11.福音
12.文学的類型
13.ヤコブ原福音書
14.トマス福音書
15.まとめと総括およびレポート等に関する解説

 

開講期・曜時限 教員 種別 題目
後期月4 津田謙治 演習 教父学の基本的研究を読むI/B
[授業の概要・目的]この演習の目的は、初期キリスト教における教義史に関する古典的研究を読み、膨大な古代史料の中から教理的主題や歴史的背景、教父の特徴などを網羅的に概観するとともに、教義がどのような歴史的展開を示しているかを学ぶことである。この演習では、ドイツ語で書かれた後、英語や仏語に訳され、幅広く受容された教父研究のテキストを精読することによって、初期キリスト教思想研究に必要な文献読解力の向上を目指す。

[授業計画と内容]

前期に引き続き、H.R.ドロープナーの主要著作の一つである『教父学教本』を取り上げ、演習を行う。

Hubertus R. Drobner, Lehrbuch der Patrologie, 3te Auflage, Frankfurt am Main, 2011.

1.オリエンテーション
2.使徒たちの手紙
3.ニコデモ福音書
4.使徒行伝
5.文学的類型
6.ペトロ行伝
7.パウロ行伝
8.書簡
9.文学的類型(書簡)
10.バルナバの手紙
11.黙示録
12.文学的類型(黙示録)
13.ヘルマスの牧者
14.シビュラの託宣
15.まとめと総括およびレポート等に関する解説

 

開講期・曜時限 教員 種別 題目
前期火4 伊原木大祐 演習 Georges Bataille, Théorie de la religionを読む
[授業の概要・目的]本演習では、ジョルジュ・バタイユの宗教論『宗教の理論』(1974)を扱う。本書は、バタイユが1948年に(ヴァール主宰の)哲学コレージュで行った講演「宗教史概略」をもとに執筆した作品である。ほぼ完成していたにもかかわらず、生前に出版されることはなかった。「宗教」の理論と銘打ってはいるが、代表作『呪われた部分』とほぼ同時期に書かれていることもあり、バタイユの濃密な哲学的思索が展開されている。本書を宗教哲学的な視野のもとで読み進めつつ、参加者による思索と議論をより重視した演習としたい。

[授業計画と内容]

第1回 イントロダクション
本演習で扱う著作およびその著者について知っておくべき最低限の事柄を説明する。
第2~14回
『宗教の理論』を最初から読み進めてゆく。進度は出席者の語学力に合わせて調整する。
第15回 フィードバック

 

開講期・曜時限 教員 種別 題目
後期火4 伊原木大祐 演習 Max Scheler, Tod und Fortlebenを読む
[授業の概要・目的]本演習では引き続き、マックス・シェーラーの遺稿「Tod und Fortleben」を読み進めてゆく。主著『倫理学における形式主義と実質的価値倫理学』とほぼ同時期に執筆されたと考えられている本論考は、ハイデガーやレヴィナスのそれとは根本的に異なった「死」の現象学的分析として、また、不死や死後生に対する宗教哲学的アプローチの模範的な実例として、今でもなお精読に値するといえよう。訳読と解釈を通じ、参加者一人一人が自身の思索を深めていくことが期待される。

[授業計画と内容]

第1回 イントロダクション
本演習で扱う著作およびその著者について知っておくべき最低限の事柄を示した上で、昨年度までに読み終えた箇所の概要を解説する。
第2~14回
「Tod und Fortleben」を全集版で1回に1.5~2頁のペースで読み進めてゆく。
第15回 フィードバック

 

開講期・曜時限 教員 種別 題目
前期水5 杉村靖彦 演習 田辺元「社会存在の論理」とベルクソン『道徳と宗教の二源泉』の交差的読解
[授業の概要・目的] 田辺元の1934年の論文「社会存在の論理」は、田辺哲学の代名詞の一つである中期の「種の論理」の出発点となった論考として知られている。この長大な論文には、田辺独自の絶対無の行為弁証法を「種」という独自な概念を軸に具体化していくべく、多種多様な思想的伝統と現代的問題が縦横に参照されているが、その中でも、1932年に出たばかりのベルクソンの『道徳と宗教の二源泉』との関係は特筆に値する。田辺はこの著作の「閉じた社会」と「開いた社会」という二極構造を自らの構想する「社会存在論」の構成の中に組み込みつつ、肝心な所で根本的な批判を加える。そしてこの批判的受容を通して、田辺自身の立場の独自性が際立つという構造になっている。
以上のことを踏まえて、本演習では、ベルクソンを直接扱った箇所である田辺の「社会存在の論理」の第3章と、そこで参照されているベルクソン自身の行論を交差的に読み進める。それによって、田辺とベルクソンの双方において複眼的な思想理解を可能にすると共に、哲学・宗教哲学の文献に対する参加者の研究的な読解の訓練の場としたい。[授業計画と内容]

第1回 導入
テクストを読み進める上で必要な導入的説明を教員が行う。2回目以降の担当者を決める。

第2回‐14回
田辺のテクストの論展開を追いつつ、そこで参照されるベルクソンの行論を抜粋して読み、両者を突き合わせていくという仕方で演習を進めていく。各回の担当者は内容要約、受容箇所の抜粋と訳出、疑問点の提示や問題提起などを含めた報告を行い、それを受けて教員がコメントと解説を行う。

第15回
著作全体を振り返り、教員との質疑応答や出席者間での討議を行う。

 

開講期・曜時限 教員 種別 題目
後期水5 杉村靖彦 演習 Paul Ricœur, La symbolique du mal, Première partie: Les symboles primaires を読む
[授業の概要・目的] ポール・リクール『悪のシンボリズム』は、1960年に『有限性と罪責性』の第2分冊として刊行され、リクールを解釈学的哲学への転じさせた記念碑的著作である。同時にこの著作は、その大部分が聖書や諸文明の神話から渉猟した悪の象徴的・神話的表現の意味解釈に充てられており、リクールが自らの哲学的立場を更新するにあたって、従来の哲学の境界を踏み越え、宗教的表現の生成現場へと深く沈潜したことが見て取れる。
本演習では、昨年度後期に続いて、この著作の第一部「一次的象徴:穢れ・罪・負い目」の重要箇所を抜粋して精読し、リクール解釈学の原点における哲学と宗教の交差の有りようを検討することによって、宗教哲学の可能性を探究するための材料としたい。[授業計画と内容]

第1回 導入
テクストを読み進める上で必要な予備知識の解説を行う。2回目以降の担当者を決める。
第2回‐14回
リクール『悪のシンボリズム』第1部「一次的象徴:穢れ・罪・負い目」の重要箇所を抜粋し、1回当たり2頁程度のペースで精読していく。担当者は前日までに訳稿を提出することとし、教員がそれに修正コメントを加えた文書を出席者全員で共有して、 それを材料として演習を進めていく。
第15回
読み終えた箇所全体を振り返り、疑問点等について出席者全員で討議を行う。

 

開講期・曜時限 教員 種別 題目
前期金3 景山洋平 演習 現象学における人間論とその歴史的境界 ー ハイデガーと京都学派の諸著作から
[授業の概要・目的]本演習では、Martin Heideggerの四つのテキスト(Sein und Zeit, Kant und das Problem der Metaphysik, Beitraege zur Philosophie, Unterwegs zur Sprache)の必要箇所を精読し、現象学的存在論における人間の位置を考察する。これと並行して、京都学派の著作(西田幾多郎『善の研究』/『場所的論理と宗教的世界観』、田辺元「人間学の立場」/「生の存在学か死の弁証法か」、九鬼周造「日本詩の押韻」)の必要箇所を参照し、現象学との関係を考察する。現象学的存在論における人間概念は「有限性の超越論」(フーコー)や「人間中心主義」(デリダ)と理解されがちであり、こうした理解はミシェル・アンリなどフランス現象学の歴史的展開と大なり小なり連動している。しかし、ハイデガーの思索の変容はこうした解釈に収まらない人間論の可能性を示唆する。本演習では、京都学派との関係に力点を置くことで、現象学的存在論のこうした潜在力を、なにがしか異質な歴史的地平との関係から検討したい。

[授業計画と内容]

毎回一名の訳読と報告を行い、それにつづき教員が訳読とテクストの哲学的意義へのコメントを行い、その後は全員で討議する。以下に各回の講読予定を示すが、授業の進度はそのつど前後しうる。毎回2~3頁ほどハイデガーを講読する他、必要に応じて京都学派のテクストを参照する。

第一回 イントロダクション
第二回~四回 Sein und Zeit, Einleitungを中心に
第五回~七回 Kant und das Problem der Metaphysik. 図式機能論と自己触発論を中心に
第八回~十回 Beitraege zur Philosophie. 第五部 “Gruendung“と第八部”Seyn”を中心に
第十一回~十三回 Unterwegs zur Sprache. 論稿“Die Sprache”と”Das Wort”を中心に
第十四回 講読箇所に関する全体的考察
第十五回 フィードバック

 

開講期・曜時限 教員 種別 題目
前期木2 根無一行 講読 James H. Cone, God of the oppressed(1975) を読む 1
[授業の概要・目的]政治、社会、経済、教育、文化等、あらゆる面で抑圧され排除され続けてきた黒人たちを対話相手とする黒人解放神学(Black liberation theology)を主導したJames H. Coneの主著God of the oppressed(1975)を読む。コーンは『聖書』の中心的使信は被抑圧者の解放だとし、それこそが抑圧の状況の中で黒人の解放ということを想像可能にさせたと考える。コーンのこの考えは、時代も場所も異なり、なにより「当事者」とは言えない私たちと、しかし無関係ではない。キリスト教の中心的使信は被抑圧者の解放だという理解は、キリスト教とのいかなるものであれ強い関係性のもので成立してきた「宗教哲学」をその土台から揺さぶっているはずだからである。これまで宗教哲学が語ってきた言説は「白人=抑圧者」のものにすぎないのではないか。もっとも、黒人解放神学が政治的イデオロギーと化す可能性はコーン自身にも自覚されているように、コーンの聖書解釈もまた決定的・普遍的なものではありえない。重要なのは実践的な仕方で『聖書』の使信を証ししていくことだというわけである。非西洋圏の現代日本において宗教哲学に携わる私たちに対して本書は重層的で広い射程を持った問いを突きつけるだろう。私たちは何をどう考えていくべきなのか、本書を読みながらその手がかりをえたい。

[授業計画と内容]

第1回 導入
本講読の進め方を確認し、著者とテキストに関する基本的な事柄の説明等を行う。

第2~14回
テキストの読解と議論等。

第15回
まとめ

 

開講期・曜時限 教員 種別 題目
後期木2 根無一行 講読 James H. Cone, God of the oppressed(1975) を読む 2
[授業の概要・目的]政治、社会、経済、教育、文化等、あらゆる面で抑圧され排除され続けてきた黒人たちを対話相手とする黒人解放神学(Black liberation theology)を主導したJames H. Coneの主著God of the oppressed(1975)を前期に引き続き読む。コーンは『聖書』の中心的使信は被抑圧者の解放だとし、それこそが抑圧の状況の中で黒人の解放ということを想像可能にさせたと考える。コーンのこの考えは、時代も場所も異なり、なにより「当事者」とは言えない私たちと、しかし無関係ではない。キリスト教の中心的使信は被抑圧者の解放だという理解は、キリスト教とのいかなるものであれ強い関係性のもので成立してきた「宗教哲学」をその土台から揺さぶっているはずだからである。これまで宗教哲学が語ってきた言説は「白人=抑圧者」のものにすぎないのではないか。もっとも、黒人解放神学が政治的イデオロギーと化す可能性はコーン自身にも自覚されているように、コーンの聖書解釈もまた決定的・普遍的なものではありえない。重要なのは実践的な仕方で『聖書』の使信を証ししていくことだというわけである。非西洋圏の現代日本において宗教哲学に携わる私たちに対して本書は重層的で広い射程を持った問いを突きつけるだろう。私たちは何をどう考えていくべきなのか、本書を読みながらその手がかりをえたい。

[授業計画と内容]

第1回 導入
本講読の進め方を確認し、著者とテキストに関する基本的な事柄の説明等を行う。

第2~14回
テキストの読解と議論等。

第15回

 

開講期・曜時限 教員 種別 題目
前期木2 安部浩 演習 シェリングの自由論
[授業の概要・目的]

カント、フィヒテ、ヘーゲル等の哲人。ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン等の楽聖。これらの巨人に伍して空前絶後の精神の運動を牽引しつつ、百花繚乱の「ゲーテの時代」を駆け抜けた早熟の天才がいた。F.W.J. シェリングである。
彼が遺した数多の著述・講義録の中でも、『人間の自由の本質』こそは蓋し最重要作の一つである。では本著作において、「哲学における最内奥の中心点」と自らが見做す「必然性と自由の対立」なる問題にシェリングはいかなる仕方で挑むのか。「ドイツ観念論の形而上学の頂点」(ハイデガー)と評される当該著作を冒頭から繙読し、議論を戦わせていくことで、われわれは、自由、汎神論、悪、無底等をめぐる問題系の考察に努めることにしよう。そしてそれにより、語学・哲学上の正確な知識、及び論理的思考力に基づく原典の厳密な読解力を各人が涵養すること、そしてこの読解の過程において浮上してくる重要な問題をめぐる参加者全員の討議を通して、各人が自らの思索を深化させていくことが、本演習の目的である。

[授業計画と内容]

原則的には毎回、予め指名した二名の方にそれぞれ、報告と演習の記録を担当して頂くことにする。ここに各回に扱う予定である原典の範囲を記すが、授業の進度については出席者各位の実力を勘案して修正することもある。
以下、内容の梗概に続き、括弧内に教科書の頁番号を(また適宜、斜線を付して行番号をも)示す。
1. ガイダンスと講読文献の説明
2. 「前書」と題目(3-7)
3. 「感じ取られる自由の確実性と自由の体系的概念の問題」及び「汎神論概念の諸解釈・その1」(9-12/35)
4. 「汎神論概念の諸解釈・その2」(12/36-16/18)
5. 「汎神論概念の諸解釈・その3」(16/18-21/20)
6. 「汎神論概念の諸解釈・その4」及び「<観念論的・普遍的自由概念>対<人間の生ける自由概念>」(21/21-25/14)
7. 「悪への能力としての人間の自由の問題系(現実性の神的起源に鑑みつつ)」(25/15-29/19)
8. 「自然哲学的演繹(啓示の原理の内的二重性)」(29/20-34/27)
9. 「悪の可能性の演繹・その1」(34/28-39/3)
10. 「悪の可能性の演繹・その2」(39/4-42/16)
11. 「悪の可能性の演繹・その3」(42/17-45/7)
12. 「悪の現実性の演繹・その1」(45/8-48/3)
13. 「悪の現実性の演繹・その2」(48/4-52/29)
14. 西谷啓治「悪の問題」
15. フィードバック

 

開講期・曜時限 教員 種別 題目
後期木2 安部浩 演習 シェリングの自由論
[授業の概要・目的]

カント、フィヒテ、ヘーゲル等の哲人。ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン等の楽聖。これらの巨人に伍して空前絶後の精神の運動を牽引しつつ、百花繚乱の「ゲーテの時代」を駆け抜けた早熟の天才がいた。F.W.J. シェリングである。
彼が遺した数多の著述・講義録の中でも、『人間の自由の本質』こそは蓋し最重要作の一つである。では本著作において、「哲学における最内奥の中心点」と自らが見做す「必然性と自由の対立」なる問題にシェリングはいかなる仕方で挑むのか。「ドイツ観念論の形而上学の頂点」(ハイデガー)と評される当該著作を冒頭から繙読し、議論を戦わせていくことで、われわれは、自由、汎神論、悪、無底等をめぐる問題系の考察に努めることにしよう。そしてそれにより、語学・哲学上の正確な知識、及び論理的思考力に基づく原典の厳密な読解力を各人が涵養すること、そしてこの読解の過程において浮上してくる重要な問題をめぐる参加者全員の討議を通して、各人が自らの思索を深化させていくことが、本演習の目的である。

[授業計画と内容]

原則的には毎回、予め指名した二名の方にそれぞれ、報告と演習の記録を担当して頂くことにする。ここに各回に扱う予定である原典の範囲を記すが、授業の進度については出席者各位の実力を勘案して修正することもある。
以下、内容の梗概に続き、括弧内に教科書の頁番号を(また適宜、斜線を付して行番号をも)示す。
1. ガイダンスと前期の復習
2. 「悪の現実性の演繹・その3」(52/30-55/22)
3. 「悪の現実性の演繹・その4」(55/23-59)
4. 「悪の現実性の演繹・その5」(60-63/18)
5. 「悪の現実性の演繹・その6」(63/19-66/4)
6. 「神の自由・その1」(66/5-70/29)
7. 「神の自由・その2」(70/30-/75/10)
8. 「神の自己啓示の目標ー愛の全一性・その1」(75/11-79/17)
9. 「神の自己啓示の目標ー愛の全一性・その2」(79/18-82/8)
10. 「神の自己啓示の目標ー愛の全一性・その3」(82/8-84/31)
11. 「神の自己啓示の目標ー愛の全一性・その3」(84/32-87)
12. 辻村公一「無底ーシェリング『自由論』に於ける」
13. 薗田坦「無底・意志・自然ーJ.ベーメの意志-形而上学について」
14. 総括と総合討論
15. フィードバック

 

開講期・曜時限 教員 種別 題目
前期火2 竹内綱史 演習 ニーチェ『Die fröhliche Wissenschaft』第五書を読む
[授業の概要・目的]本演習では、ニーチェの著作『Die fröhliche Wissenschaft』(邦訳名『悦ばしき知識』『華やぐ知慧』『喜ばしき知恵』『愉しい学問』等)の第五書(1887年)を精読する。同書は第一書から第四書までの第一版が1882年に出されたのち、新たに第五書が付け加わった第二版が1887年に出版された。すでに第一版で「神の死」や「永遠回帰」が語られていたが、『ツァラトゥストラ』(1883-1885年)や『善悪の彼岸』(1886年)を出版したのちに、ニーチェがあらためて自らの哲学のエッセンスを語り直したのが第五書である。そこでは円熟期ニーチェ哲学の中心テーマが集中的に論じられており、彼の哲学の最重要テクストの一つである。本演習ではそのテクストを精読することで、「神の死」「ニヒリズム」「キリスト教道徳批判」「権力への意志」といった彼の哲学の中心問題についての理解を深めたい。

[授業計画と内容]

第1回 イントロダクション
『Die fröhliche Wissenschaft』という著作の概要や背景について解説する。基本的な訳書や概説書・注釈書などを紹介し、授業の進め方について周知する。

第2回~第15回 『Die fröhliche Wissenschaft』第五書精読
『Die fröhliche Wissenschaft』第五書を冒頭の節(第343節)から精読する。テクストの一語一句について全員で議論する。受講人数によっては毎回プロトコル担当者を決め、授業の最初に前回のプロトコルを発表してもらいそれについて検討してから、続くテクストの精読を行う予定。

 

開講期・曜時限 教員 種別 題目
後期木3 鬼頭葉子 特殊講義 世俗とは何か:政治と宗教とのかかわり
[授業の概要・目的]近代以降、宗教と政治とのかかわりについて考えるとき、「政教分離」という思想のもと、両者は対立的に考えられてきました。ここに至るまでには、近代化、世俗化という過程を経ています。しかし、現代においては宗教と政治は容易に分けられるものではなく、また宗教概念も個人の内面的なものの表現に留まるものではないことが、多くの思想家たちによって指摘されています。本授業では、世俗とは何か、公共圏とは何かを探求し、世俗主義に関連する政治的価値(自由、正義、寛容、人権など)と宗教思想とのかかわり、また世俗の時代における人間理解について考えます。

[授業計画と内容]

以下のテーマを中心にして進めていく予定であるが、受講者の関心によっては適宜、順序や内容などを変更する場合もある。

1 世俗、世俗化、世俗主義
2 聖なるもの、世俗的なもの
3 啓蒙主義による社会の世俗化と宗教の近代化
4 公共圏の誕生
5 私的宗教と公的宗教、国家と宗教
6 宗教的教義の相対化と道徳の内面化
7 信仰と理性
8 世俗の時代における政治の役割
9 宗教倫理と世俗主義の人道主義
10 宗教的自由をめぐる問題
11 宗教的寛容
12 世俗の時代における宗教原理主義
13 世俗と暴力の宗教的側面
14 人権概念を通じた「人間」の再構築
15 フェミニズムと世俗主義

 

開講期・曜時限 教員 種別 題目
金4・5(隔週) 杉村靖彦

伊原木大祐

演習 宗教哲学基礎演習B
[授業の概要・目的]宗教哲学の基本文献を教師とチューター役の大学院生の解説を手がかりに読み進めていくことで、より専門的な研究への橋渡しになるような知識と思考法の獲得を目指す。4回生以上の宗教学専修在籍者にとっては、卒論の中間発表の場ともなる。
宗教学専修の学部生を主たる対象とするが、哲学と宗教が触れ合う問題領域に関心をもつ2回生、および他専修学生の参加も歓迎する。[授業計画と内容]

宗教哲学の基本文献といえる著作や論文を選んで各回の授業に割り振り、事前に出席者に読んできてもらう。そして、毎回チューター役の大学院生の解説を踏まえて、教員の司会進行の下で、質疑応答と議論を行っていく(その際、履修者には特定質問者の役割を少なくとも1回は担当してもらう)。また、卒論の中間発表の際には、論述の仕方や文献の扱い方なども指導し、論文の書き方を学ぶ機会とする。
隔週の授業のため、全7回として各回のテーマを記しておく。なお、どのような文献を取り上げるかは、前期の「宗教哲学基礎演習A」の様子を見て決めることにする。それによって、各回で取り上げる文献の種類も、以下の記したものとは異なる可能性もある。

第1回  オリエンテーション・卒業論文の中間発表
第2回  宗教哲学の基本文献(近代フランス)の読解・解説・考察
第3回  宗教哲学の基本文献(近代ドイツ)の読解・解説・考察
第4回  宗教哲学の基本文献(近現代英米)の読解・解説・考察
第5回  宗教哲学の基本文献(現代フランス)の読解・解説・考察
第6回  宗教哲学の基本文献(現代ドイツ)の読解・解説・考察
第7回  宗教哲学の基本文献(京都学派の哲学)の読解・解説・考察

 

開講期・曜時限 教員 種別 題目
金4・5(隔週) 杉村靖彦

伊原木大祐

演習Ⅱ 宗教学の諸問題
[授業の概要・目的]演習参加者が、宗教学の諸問題のなかで各人の研究するテーマに即して発表を行い、その内容をめぐって、全員で討論する。討議のなかで、各人の研究を進展させることが目的である。

[授業計画と内容]

参加者が順番に研究発表を行い、それについて全員で討論する。各人の発表は2回にわたって行う。即ち、発表者は1時間以内の発表を行い、続いてそれについて討論する。発表者はその討論を受けて自分の発表を再考し、次回に再考の結果を発表して、それについてさらに踏み込んだ討論を行う。したがって、1回の授業は前半と後半に分かれ、前半は前回発表者の2回目の発表と討論、後半は新たな発表者の1回目の発表と討論となる。

第1回 オリエンテーション、参加者の発表の順番とプロトコールの担当者を決定。
第2回ー8回 博士課程の院生による発表と全員での討論。
第9回-14回 修士課程の院生による発表と全員での討論。
第15回 総括。

 

開講期・曜時限 教員 種別 題目
前期集中 板橋勇仁 特殊講義 身体論としての西田哲学の研究
[授業の概要・目的]後期西田哲学に身体論が展開されていることはよく知られている。しかしこの身体論に焦点を当てた研究成果はまだ多くない。なぜであろうか。西田哲学の出発点は処女作『善の研究』であるが、この『善の研究』にある身体論には注目されてこなかった。そして『善の研究』の身体論から理解してゆかない限り、後期西田哲学の身体論の意義とその射程も明らかにならないであろう。しかも西田哲学の身体論は一貫して、現代日本の身体を取り巻く状況に対して鋭い問題提起を突きつけてくる。初期・後期の西田哲学の身体論を理解し、それを現代の身体の状況と照らし合わせるために、以上の問題意識に基づいた拙著『こわばる身体がほどけるとき』を講読する。あわせて拙著が依拠する西田の著作をも具体的に検討し、そのうえで参加者で積極的に議論したい。拙著については、もう一度中心線を骨太に描き直すと共に、拙著には盛り込めなかった、多様な伏線をできる限り追ってみたい。

[授業計画と内容]

第1回 ガイダンス
第2回 現代の身体の状況
第3回 『善の研究』における「経験の場」(1)
第4回 『善の研究』における「経験の場」(2)
第5回 『善の研究』における「身体」
第6回 『善の研究』における「唯一実在の分化発展」
第7回 『善の研究』における「主観的自己」と生
第8回 『善の研究』の身体論の持つ意義
第9回 前半のまとめと中期西田哲学
第10回 後期西田哲学における「経験の場」と「制作」(1)
第11回 後期西田哲学における「経験の場」と「制作」(2)
第12回 後期西田哲学における「身体」(1)
第13回 後期西田哲学における「身体」(2)
第14回 西田哲学の身体論の現代的意義(1)
第15回 西田哲学の身体論の現代的意義(2)

 

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講義題目 2021年度 https://www.bun.kyoto-u.ac.jp/religion/rel-courses2021/ Wed, 16 Mar 2022 07:57:18 +0000 https://www.bun.kyoto-u.ac.jp/?p=60631 宗教学研究室紀要 第17号(2020年) https://www.bun.kyoto-u.ac.jp/religion/rel-annual2020-top-2/ Thu, 01 Apr 2021 02:32:06 +0000 https://www.bun.kyoto-u.ac.jp/?p=43556 表紙

目次

<公募論文>

不協和の社会 − レヴィナスとクセナキス

松葉 類 (3)

シモーヌ・ヴェイユにおけるペルソナと非ペルソナ的なもの

中田 和希  (19)

井筒俊彦『意識の形而上学』の哲学的思惟 -存在と意識の多層構造の観点から

林 哲平  (41)

<研究ノート>

西田幾多郎における「主体」の概念

森 レイ (71)

真理と恥 -エマニュエル・レヴィナスの脱‐存在論的思索

若林 和哉 (84)

編集後記

(98)

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宗教学研究室紀要 第16号(2019年) https://www.bun.kyoto-u.ac.jp/religion/rel-annual2019-top/ Thu, 01 Apr 2021 01:41:38 +0000 https://www.bun.kyoto-u.ac.jp/?p=43539

表紙

目次

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講義題目 2020年度 https://www.bun.kyoto-u.ac.jp/religion/rel-courses2020/ Fri, 24 Apr 2020 11:26:26 +0000 https://www.bun.kyoto-u.ac.jp/?p=40058 講義題目 2019年度 https://www.bun.kyoto-u.ac.jp/religion/rel-courses2019/ Sat, 30 Mar 2019 06:31:55 +0000 https://www.bun.kyoto-u.ac.jp/?p=35425 開講期・曜時限 教員 種別 題目 前期火1 杉村靖彦 講義 宗教学A(講義) [授業の概要・目的]

宗教と哲学は、人間存在の根本に関わる問いを共有しながらも、歴史的に緊張をはらんだ複雑な関係を結んできた。その全体を視野に入れて思索しようとする宗教哲学という営みは、多面的な姿ととりながら歴史的に進展し、現代でも大きな思想的可能性を秘めている。この授業では、その今日までの変遷を通時的に追うことによって、宗教哲学という複雑な構成体について、受講者が一通りの見取図を得られるようにすることを目的とする。

[授業計画と内容]

以下のテーマについて授業を行っていく(細部は変更の可能性あり)。
1.宗教と哲学:根本の問いから考える。
2.ミュートスからロゴスへ:哲学の誕生
3.ソクラテス、プラトン、アリストテレス:哲学における神
4.ユダヤ教、キリスト教、イスラム教:啓示と信仰の神
5.ヘブライズムとヘレニズムの出会い:キリスト教神学の成立
6.中世における神学と哲学:スコラ哲学と神秘主義
7.近世形而上学:デカルトと哲学的神学の流れ
8.宗教哲学の成立と展開(1):カントとシュライアマハー
9. 宗教哲学の成立と展開 (2):ヘーゲルとキルケゴール
10. 「神の死」とニヒリズム:ニーチェ
11.哲学と宗教の「解体」的反復:ハイデガー
12.日本の宗教哲学と仏教的伝統(1):西田幾多郎
13. 日本の宗教哲学と仏教的伝統(2):九鬼周造
14. アウシュヴィッツ以降の宗教哲学:レヴィナス
15.今日の宗教哲学の課題

開講期・曜時限 教員 種別 題目
後期火1 杉村靖彦 講義 宗教学B(講義)
[授業の概要・目的]

宗教哲学とは、哲学の一形態であると同時に、宗教研究のさまざまな道の一つでもある。この両面性とそれによる独自な意義が理解できるように、この授業では、宗教哲学と宗教学の歴史的関係を明らかにした上で、基本となる文献を幅広く選び、それぞれについて読解の手がかりとなるような解題を行っていく。それを通して、この分野における過去の重要な思索を自ら追思索し、宗教という事象を視野に入れた哲学的・学問的思索の一端に触れることが、この授業の目的である。

[授業計画と内容]

以下のテーマについて授業を行っていく(細部は変更の可能性あり)。
1.宗教哲学と宗教学(1):歴史的位置づけ
2.宗教哲学と宗教学(2):さまざまなアプローチ
3.宗教哲学と宗教学(3):現代的課題
4.パスカル『パンセ』:考える葦と隠れたる神
5.ヒューム『宗教の自然史』:経験主義的宗教論の嚆矢
6.カント『単なる理性の限界内の宗教』:根源悪論と宗教哲学
7.ニーチェ『道徳の系譜学』:ラディカルな宗教批判
8.ジェイムズ『宗教的経験の諸相』:宗教心理学の方法
9.西田幾多郎『善の研究』:日本の宗教哲学の出発点
10.モース『贈与論』:宗教社会学の豊饒な可能性
11.ハイデガー『存在と時間』:「現存在」と「死への存在」
12.ベルクソン『道徳と宗教の二源泉』:静的宗教と動的宗教
13.エリアーデ『聖と俗』:宗教現象学の射程
14.ヨナス『アウシュヴィッツ以後の神概念』:神概念の解体的変容
15.総括

開講期・曜時限 教員 種別 題目
前期水2 芦名定道 特殊講義 キリスト教思想研究入門A
[授業の概要・目的]

この特殊講義は、すでに系共通科目「キリスト教学講義」を受講し、キリスト教思想研究に関心のある学部生、あるいはキリスト教研究の基礎の習得をめざす大学院生を対象に行われる。キリスト教思想研究を目指す際に身につけておくべき事柄について、またいかなるテーマをどのように取り上げるのかについて、解説 を行う。

[授業計画と内容]

本年度前期のテーマは、「宗教改革から近代キリスト教思想へ」である。初回のオリエンテーションに続いて、次のような項目について、講義が進められる。一回の講義で一つの項目が取り上げられる。

0.オリエンテーション
1.現代キリスト教思想の基本動向
2.現代神学1:自由主義神学と弁証法神学
3.カール・バルト
4.ブルトマン
5.ボンヘッファー
6.ティリッヒ
7.H・リチャード・ニーバー
8.ブルトマン学派と解釈学的神学
9.現代神学2、あるいはポスト近代
10.解放の神学
11.科学技術の神学
12.モルトマン
13.パネンベルク
14.アジア・アフリカ神学
15.フィードバック

フィードバックの具体的なやり方については授業にて説明を行う。

開講期・曜時限 教員 種別 題目
後期水2 芦名定道 特殊講義 キリスト教思想研究入門B
[授業の概要・目的]

この特殊講義は、すでに系共通科目「キリスト教学講義」を受講し、キリスト教思想研究に関心のある学部生、あるいはキリスト教研究の基礎の習得をめざす大 学院生を対象に行われる。キリスト教思想研究を目指す際に身につけておくべき事柄について、またいかなるテーマをどのように取り上げるのかについて、解説を行う。

[授業計画と内容]

本年度後期のテーマは、「旧約聖書と哲学的問い」である。初回のオリエンテーションに続いて、次のような項目について、講義が進められる。一回の講義で一つの項目が取り上げられる。

0.オリエンテーション
1.「文化の神学」の構想
2.聖書翻訳の意義
3.告白文学の系譜
4.修道制と文化構築
5.死と死後世界:煉獄思想の誕生
6.教会建築のコスモロジー
7.宗教改革と国民国家・国民文学
8.近代文学1:英文学
9.近代文学2:フランス文学
10.近代文学3:ドイツ文学
11.近代文学4:ロシア文学
12.近代文学5:日本文学
13.キリスト教と映画
14.キリスト教と音楽
15.フィードバック

フィードバックの具体的なやり方については授業にて説明を行う。

開講期・曜時限 教員 種別 題目
前期水4 杉村靖彦 特殊講義 「解釈(学)」をめぐる諸考察―その宗教/哲学的射程
[授業の概要・目的]

「哲学者たちは世界をさまざまに解釈してきたにすぎない。だが、大事なのは世界を変えることなのだ」(マルクス)。しかし、哲学と宗教の双方において、その原点となる言葉や書物に立ち返り、それをたえず新たに「解釈」していくことで思索を更新していくという営みがつねに行われてきた。そして、この営みについて「解釈学(Hermeneutik)」の名の下で方法的反省が繰り広げられるようになり、20世紀以降には、哲学・宗教思想においてひとつの重要な潮流となっていった。
「解釈」とは何をすることなのか。「解釈学」は宗教哲学にとっていかなる意義をもちうるのか。この授業では、そういった問題について、思想史的な流れをたどりながら考究していきたい。

[授業計画と内容]

以下の諸テーマについて、一つのテーマ当たり2,3回の授業を充てて講義する。
(「特殊講義」という、教員の研究の進展を直接反映させることを旨とする授業であるので、1回ごとの授業内容を細かく記すことはしない。また、以下の諸テーマにしても、細部については変更の可能性がある。)

1.「解釈」とは何をすることか―導入的考察
2.「解釈学」の前史
3.「哲学的解釈学」の由来と展開
4. 宗教的言語の解釈(学)
5. 哲学的解釈学と宗教的解釈学

なお、最後の授業は、本学期の講義内容全体をめぐる質疑応答と議論の場とし、講義内容の受講者へのフィードバックを図る。

開講期・曜時限 教員 種別 題目
後期水4 杉村靖彦 特殊講義 田辺哲学研究
[授業の概要・目的]

田辺元の哲学的思索は、その異様なまでの凝縮度と彼固有の論理への偏愛によって異彩を放っている。田辺は西洋哲学の最前線の動向、諸学問の最新の成果を飽くことなく摂取し、歴史的現実にもそのつど敏感に反応しつつ、それら全てに自前の思索によって緊密な総合を与えるべく、生涯血の滲むような努力を続けた。彼の濃密にすぎる文章はそのようにして生み出されたものである。この凝縮体を丁寧に解きほぐし、そこに封じ込められたさまざまな展開可能性を切り出すことによって、今日のわれわれがリアルな接触をもちうるような形で語り直すこと。それが本講義の狙いとするところである。本年度は、『懺悔道としての哲学』(1946)以降の後期田辺哲学の中核となった「実存協同」の概念の展開を追跡しつつ、1950年代以降の晩年の田辺の思索の二本柱というべき「死の哲学」と象徴主義文学への取り組みを扱いたい。この二系統の思索を、単に同時期になされた二つの探究として並列するのではなく、両者の深い次元での照応関係を再構成しつつ、同時代の西洋思想の布置の中に置き直すことが目的である。

[授業計画と内容]

以下の諸テーマについて、一つのテーマ当たり2,3回の授業を充てて講義する。
(「特殊講義」という、教員の研究の進展をダイレクトに反映させることを旨とする授業であるので、1回ごとの授業内容を細かく記すことはしない。また、以下の諸テーマにしても、細部については変更の可能性がある。)

1.『懺悔道としての哲学』までの田辺哲学の概観
2.「実存協同」という概念の成立と展開
3.「死復活」と「無の象徴」:両概念の生成とその連関
4.田辺の「死の哲学」とハイデガー
5.田辺の象徴主義文学研究と偶然性の問題

なお、最後の授業は、本学期の講義内容全体をめぐる質疑応答と議論の場とし、講義内容の受講者へのフィードバックを図る

開講期・曜時限 教員 種別 題目
前期水4 佐藤義之 演習 レヴィナスを読む
[授業の概要・目的]

レヴィナスは倫理の問題を手がかりに、旧来の哲学の根本的革新を企て、思想界に大きな影響を残した。
授業では彼の第二の主著とされる1974年のAutrement qu’être ou au-delà de essence.(『存在するとは別の仕方で、あるいは存在することの彼方に』)の仏語原文をテキストとして、彼の思想を理解する。

[授業計画と内容]

上記の著作はレヴィナスの思想のひとつの到達点である。授業はこの著作の中から「強迫」「痕跡」等々、第一の主著とされる『全体性と無限』の倫理観を先鋭化したとも言える主要概念を選び、その検討を行なう。そのためにふさわしい箇所を抜粋、熟読することで、彼の特異な倫理思想の大枠の理解を試みたい。

第1回:ガイダンス
第2回~第14回:『存在するとは別の仕方で、あるいは存在することの彼方に』の該当箇所の精読
フィードバックについては授業で周知する。

開講期・曜時限 教員 種別 題目
後期水4 佐藤義之 演習 レヴィナスを読む
[授業の概要・目的]

レヴィナスは倫理の問題を手がかりに、旧来の哲学の根本的革新を企て、思想界に大きな影響を残した。
授業では彼の第二の主著とされる1974年のAutrement qu’être ou au-delà de essence.(『存在するとは別の仕方で、あるいは存在することの彼方に』)の仏語原文をテキストとして、彼の思想を理解する。

[授業計画と内容]

前期に引き続き、上記著作をテキストとして扱う。後期においては前期の基本的倫理思想の理解をふまえて、彼のこの時期の新展開と言える、「正義」「語ることと語られること」などの諸概念に関連する箇所を抜粋し熟読する。

 第1回:ガイダンス
 第2回~第14回:『存在するとは別の仕方で、あるいは存在することの彼方に』の該当箇所の精読
 フィードバックについては授業で周知する。

開講期・曜時限 教員 種別 題目
前期水5 杉村靖彦 演習 Paul Ricoeur, La symbolique du mal を読む
[授業の概要・目的]

『悪のシンボリズム』は、ポール・リクールが「意志の哲学」の第2巻『有限性と罪責性』の第2分冊として1960年に刊行した著作である。この著作は、リクール哲学が「解釈学」へと変貌する転機となっただけでなく、同時期に刊行されたガダマーの『真理と方法』と共に、20世紀後半の解釈学的哲学を方向づける記念碑的な著作となった。 
 本演習では、この著作の序論を中心に精読していくことによって、哲学と宗教において「解釈」という営みがもつ意義と射程について、共に考察していきたい。

[授業計画と内容]

第1回 導入
  テクストを読み進める上で必要な予備知識の解説を行う。
第2回‐14回
  リクール『悪のシンボリズム』の序論を1回当たり2,3頁のペースで読み進めていく。
第15回
  論文の全体を振り返り、疑問点等について出席者全員で討議を行う。

*フィードバックの方法は授業中に指示する。

開講期・曜時限 教員 種別 題目
後期水5 杉村靖彦 演習 Vladimir Jankelevitch, La mort を読む
[授業の概要・目的]

ここ10年来、哲学や宗教が長らく根本問題の一つとしてきた死や死者という問題が、たとえば「死生学」といった新たな意匠の下で盛んにとりあげられてきたが、その際「一人称の死」「二人称の死」「三人称の死」という区分法が自明の事のように用いられてきた。それを最初に提示したのが、ジャンケレヴィッチの大著『死』(1966)である。死の三区分が便利な符牒として独り歩きする一方で、独自の用語を駆使し濃密な文章で展開されるこの著の叙述自体は、ほとんどまともに理解されていないとい言っても過言ではない。
今期の授業では、昨年度に続いて、この著の第2部「死の瞬間における死」の第3章「不可逆なもの」および第4章「取り消しえないもの」から重要箇所を抜粋して読み、ジャンケレヴィッチの独特の形而上学的思索が死の問いへと迫る仕方を精密に理解することを目指す。

[授業計画と内容]

第1回 導入
  テクストを読み進める上で必要な予備知識の解説を行う。
第2回 第2部前半までの内容紹介
  昨年度の演習で取り上げた箇所を中心に紹介する。
第3回‐14回
  ジャンケレヴィッチ『死』の第2部「死の瞬間における死」の第3章と第4章から抜粋した箇所を、1回当たり2頁程度のペースで精読していく。
第15回
  読み終えた箇所全体を振り返り、疑問点等について出席者全員で討議を行う。

*フィードバックの方法は授業中に指示する。

開講期・曜時限 教員 種別 題目
前期木3 下田和宣 講読 宗教/世俗の系譜学  タラル・アサド『宗教の諸系譜』を読む
[授業の概要・目的]

いわゆる「宗教概念論」の基礎文献である、現代の宗教研究者タラル・アサド(Talal Asad)の 主著『宗教の諸系譜』(Genealogies of Religion, 1993)を読む。
 「宗教」の概念は、ヨーロッパ近代、とりわけプロテスタンティズムの刻印を強く受けたもので あり、他文化における信念・儀礼大系に対する適切な解釈フレームとは原理的になりえない、にも かかわらずこれまで無反省に自明なものとして語られてきた――こうした宗教概念批判の視点は、 今日において「宗教」を考えるうえで不可欠なものであろう。とはいえ、その結論のみを受容し、 いわゆる「宗教」ないし「宗教学」の「死」を宣言するだけでは、それらに代わる健全中立で無色 透明の代替概念があるわけではない以上、「宗教」をめぐる現状を適切に理解することからはむし ろ離れてしまう危険もある。
 そこで本授業では、宗教概念論の批判的結論の手前にあり、それを導き出す研究手法としての「 系譜学」に着目する。「宗教」をめぐる言説の歴史的・文化的形成に立ち返り、概念をそのコンテ クストへと引き戻すことは、一方で暴露的・批判的なあり方を取るが、他方であくまでも歴史的探 求であろうとする。アサドのテクストが持つそうした側面に着目することで、概念批判論の抽象性 に満足するのではなく、歴史形成の文脈探査という形での(本質的に複数かつ多様な)宗教研究の 可能性を理解することが、本講読の目的となる。

[授業計画と内容]

『宗教の諸系譜』の記述は、複数のアプローチを備えたものである。アサドによる系譜学的探究を 理解するために、前期ではそのなかでもとりわけ第一章「人類学の範疇としての「宗教」の構築」 を読む。宗教を「シンボル」の文化システムであると理解するクリフォード・ギアツの理論がそこ での分析対象となるので、ギアツや、さらにそれを遡るところのカッシーラー哲学についても適宜 目を配りつつ読解を進めたい。

第1回 イントロダクション
西洋における宗教(religion)の歴史について概観しつつ、その批判としての宗教概念論を確認する。 そこから、アサド『宗教の諸系譜』の見取り図を示す。そのうえで、授業の進め方、および扱うテ キストについて説明し、訳読の割り当てを決める。

第2回~第14回 『宗教の諸系譜』第一章を読む
担当者は英文訳読の用意をする(一回の担当でだいたい半ページくらい)。原典に対する正確な理 解のために、アサドが行う引用についても、調べてみる。段落ごとに内容要約を行い、その理解に ついて議論する。

第15回 フィードバック
全体を振り返り、残された課題や問題点などについてまとめ、議論する。

開講期・曜時限 教員 種別 題目
後期木3 下田和宣 講読 宗教/世俗の系譜学  タラル・アサド『宗教の諸系譜』を読む
[授業の概要・目的]

いわゆる「宗教概念論」の基礎文献である、現代の宗教研究者タラル・アサド(Talal Asad)の 主著『宗教の諸系譜』(Genealogies of Religion, 1993)を読む。
 「宗教」の概念は、ヨーロッパ近代、とりわけプロテスタンティズムの刻印を強く受けたもので あり、他文化における信念・儀礼大系に対する適切な解釈フレームとは原理的になりえない、にも かかわらずこれまで無反省に自明なものとして語られてきた――こうした宗教概念批判の視点は、 今日において「宗教」を考えるうえで不可欠なものであろう。とはいえ、その結論のみを受容し、 いわゆる「宗教」ないし「宗教学」の「死」を宣言するだけでは、それらに代わる健全中立で無色 透明の代替概念があるわけではない以上、「宗教」をめぐる現状を適切に理解することからはむし ろ離れてしまう危険もある。
 そこで本授業では、宗教概念論の批判的結論の手前にあり、それを導き出す研究手法としての「 系譜学」に着目する。「宗教」をめぐる言説の歴史的・文化的形成に立ち返り、概念をそのコンテ クストへと引き戻すことは、一方で暴露的・批判的なあり方を取るが、他方であくまでも歴史的探 求であろうとする。アサドのテクストが持つそうした側面に着目することで、概念批判論の抽象性 に満足するのではなく、歴史形成の文脈探査という形での(本質的に複数かつ多様な)宗教研究の 可能性を理解することが、本講読の目的となる。

[授業計画と内容]

前期に引き続きタラル・アサドを扱うが、『宗教の諸系譜』と問題的に関連する『世俗の諸形成』(Formations of the Secular, 2003)が後期講読の対象である。
 「宗教」の反対語として真っ先に思い浮かぶのは「世俗」だろう。ところでこの対概念の布置状況が形成されたのは、まさにヨーロッパ近代においてであった。近代科学一般に通底する(がゆえに見えなくなっている)基本的スタンスとして、「世俗」は「宗教」からの分離を要求し、自身の自律性を主張する。そのとき「宗教」は、そこから切り離され排除されるべき対象領域として見なされる。その排除の身ぶりによって、脱宗教化・脱神話化としての「世俗化」の過程は、「宗教」概念の伝統的理解を強力に変形するのである。こうして「世俗」概念を研究することは、「宗教」の系譜学を補完するための不可欠な作業となる。
 今日において顕著なのは、「世俗」から切り離され縮小されたはずの「宗教」が再びいろいろな局面において語られるという事態である。いわばこの「宗教の回帰」において、宗教/世俗の二分法が何を意味していたのか、その自己主張によって規定されていた「ヨーロッパ近代」とはどのような時代だったのか、根底的に問い直されるのである。そうした「ポスト世俗主義」の時代状況を引き受けながら、しかしそれを素朴に権威化するのではなく、なお事態の理解を試みようとするのであれば、「宗教/世俗」の歴史的(諸)形成へと向かうアサドの系譜学的視点は、ひとつの有効な参照軸となりうるだろう。

議論の前提となる「世俗」(secular)、「世俗主義」(secularism)、「世俗化」(secularisation)は非常に錯綜した経緯を持つ諸概念である。それらを解きほぐすためには、テクストの読解と並び、60年代ドイツにおける世俗化論争(ブルーメンベルク、レーヴィット、カール・シュミット等)をはじめ、最近の「ポスト世俗主義」についての議論(ハーバーマス、チャールズ・テイラー等)に配慮することも有効であろう。授業ではそれらの文脈も積極的に考慮したい。

第1回 イントロダクション
前期の復習、「世俗」をめぐる諸議論についての概説、授業の進め方および扱うテキストについて説明する。訳読の割り当てを決める。

第2回~第14回 『世俗の諸形成』第一章「世俗主義の人類学とはどのようなものであろうか?」を読む
担当者は訳読の用意をする。原文および議論の背景に対する正確な理解のために、事項の調査を積極的に行う。段落ごとの内容要約を行い、その理解について議論する。

第15回 フィードバック
全体を振り返り、残された課題や問題点などについてまとめ、議論する。

開講期・曜時限 教員 種別 題目
通年金2 竹内綱史 演習 ニーチェ『悲劇の誕生』演習
[授業の概要・目的]

本演習では、ニーチェの哲学上の処女作『悲劇の誕生』(1872年)を精読する。同書は古典文献学の本として書かれてはいるが、当時の文化状況に一石を投じる意図のもと様々な問題意識が詰め込まれており、すでにニーチェ哲学の中心的な発想がすべて揃っているといっても過言ではなく、哲学史的にも一つの画期をもたらした本である。本演習ではその精読を通じて、ニーチェ哲学の核心を理解するとともに、後に「ニヒリズム」として論じられるようになる問題について検討したい。

[授業計画と内容]

第1回 イントロダクション
 『悲劇の誕生』という著作の概要や背景について解説する。基本的な訳書や概説書・注釈書などを紹介し、授業の進め方について周知する。
第2回~第14回 『悲劇の誕生』精読
 『悲劇の誕生』の第1節から精読する。テクストの一語一句について全員で議論する。毎回プロトコル担当者を決め、授業の最初に前回のプロトコルを発表してもらいそれについて検討してから、続くテクストの精読を行う予定。
第15回 前期まとめ
 前回まで読み終わった箇所についてまとめ、残された疑問点などについて全員で議論する。切りの良いところまで読了できていない場合、この回をあてることもある。
第16回 後期イントロダクション
 前期に読み進めた箇所について、残された課題等を確認する。必要に応じて、最新の研究動向についても紹介したい。
第17回~第29回 『悲劇の誕生』精読
 前期の続きを、前期と同じ形で精読する。
第30回 まとめ
 前回まで読み終わった箇所についてまとめ、残された疑問点などについて全員で議論する。切りの良いところまで読了できていない場合、この回をあてることもある。

開講期・曜時限 教員 種別 題目
前期金4 安部浩 演習 ハイデガーのニーチェ講義を読む
[授業の概要・目的]

ハイデガーのニーチェ講義。それは、ハイデガーその人の一見秘教的と思しき中期以降の思想を理解する上でも、ニーチェの後期哲学の高峰を踏査する上でも、避けて通ることのできない文献である。しかのみならず、ハイデガーやニーチェの思想との関連を別にしても、それは哲学の根本問題を自ら考える上で実に多くを教えられる、滋味掬すべき必読の書である。 
この大部の著作の第一巻、第一部を冒頭から繙読し、議論を戦わせていくことで、われわれは、藝術、永劫回帰、認識、形而上学、真理、存在等をめぐる問題系に関する考察に努めることにしよう。そしてそれにより、語学・哲学上の正確な知識、及び論理的思考力に基づく原典の厳密な読解力を各人が涵養すること、そしてこの読解の過程において浮上してくる重要な問題をめぐる参加者全員の討議を通して、各人が自らの思索を深化させていくことが、本演習の目的である。

[授業計画と内容]

原則的には毎回、予め指名した二名の方にそれぞれ、報告と演習の記録を担当して頂くことにする。以下、各回に扱う予定である原典の範囲を記すが、授業の進度については出席者各位の実力を勘案して修正することもある。
1. ガイダンス
2. Wille und Macht. Das Wesen der Macht
3. Die Grund- und die Leitfrage der Philosophie
4. Die fuenf Saetze ueber die Kunst
5. Sechs Grundtatsachen aus der Geschichte der Aesthetik
6. Der Rausch als aesthetischer Zustand (1)
7. Der Rausch als aesthetischer Zustand (2)
8. Kants lehre vom Schoenen. Ihre Missdeutung durch Schopenhauer und Nietzsche
9. Der Rausch als formschaffende Kraft
10. Der grosse Stil (1)
11. Der grosse Stil (2)
12. Die Begruendung der fuenf Saetze ueber die Kunst
13. Die erregende Zwiespalt zwischen Wahrheit und Kunst
14. 総括と総合討論

開講期・曜時限 教員 種別 題目
後期金3 安部浩 演習 ハイデガーのニーチェ講義を読む
[授業の概要・目的]

ハイデガーのニーチェ講義。それは、ハイデガーその人の一見秘教的と思しき中期以降の思想を理解する上でも、ニーチェの後期哲学の高峰を踏査する上でも、避けて通ることのできない文献である。しかのみならず、ハイデガーやニーチェの思想との関連を別にしても、それは哲学の根本問題を自ら考える上で実に多くを教えられる、滋味掬すべき必読の書である。 
この大部の著作の第一巻、第一部を冒頭から繙読し、議論を戦わせていくことで、われわれは、藝術、永劫回帰、認識、形而上学、真理、存在等をめぐる問題系に関する考察に努めることにしよう。そしてそれにより、語学・哲学上の正確な知識、及び論理的思考力に基づく原典の厳密な読解力を各人が涵養すること、そしてこの読解の過程において浮上してくる重要な問題をめぐる参加者全員の討議を通して、各人が自らの思索を深化させていくことが、本演習の目的である。

[授業計画と内容]

原則的には毎回、予め指名した二名の方にそれぞれ、報告と演習の記録を担当して頂くことにする。以下、各回に扱う予定である原典の範囲を記すが、授業の進度については出席者各位の実力を勘案して修正することもある。
1. ガイダンス
2. Wahrheit im Platonismus und im Positivismus. Nietzsches Versuch einer Umdrehung des Platonismus aus der Grunderfahrung des Nihilismus
3. Umkreis und Zusammenhang von Platons Besinnung auf das Verhaeltnis von Kunst und Wahrheit
4. Platons Staat: Der Abstand der Kunst (Mimesis) von der Wahrheit (Idee) (1)
5. Platons Staat: Der Abstand der Kunst (Mimesis) von der Wahrheit (Idee) (2)
6. Platons Phaidros: Schoenheit und Wahrheit in einem beglueckenden Zwiespalt (1)
7. Platons Phaidros: Schoenheit und Wahrheit in einem beglueckenden Zwiespalt (2)
8. Nietzsches Umdrehung des Platonismus
9. Die neue Auslegung der Sinnlichkeit und der erregende Zwiespalt zwischen Kunst und Wahrheit
10. Die Lehre von der ewigen Wiederkunft als Grundgedanke von Nietzsches Metaphysik
11. Die Entstehung der Wiederkunftslehre
12. Nietzsches erste Mittelung der Wiederkunftslehre “Incipit tragoedia”
13. Die zweite Mitteilung der Wiederkunftslehre
14. 総括と総合討論

開講期・曜時限 教員 種別 題目
金4・5(隔週) 杉村靖彦 演習Ⅱ 宗教哲学基礎演習
[授業の概要・目的]

宗教哲学の諸問題を考えるための基礎となる文献を選び、宗教学専修の大学院生にもチューターとして協力を仰ぎながら、それらを共に読み進み、問題を掘り起こし、議論を行う場となる授業である。授業への能動的な参加を通して、より専門的な研究への橋渡しになるような知識と思考法の獲得を目指す。
宗教学専修の学部生の必修授業であるが、哲学と宗教が触れ合う問題領域に関心をもつ2回生、および他専修学生の参加も歓迎する。

[授業計画と内容]

(前期)
「人間とは何か」という問い、あるいはそのように問うことが宗教哲学においていかなる意味をもつかという問いを導きとして、九鬼周造「人間学とは何か」(1938)と西谷啓治「現代における人間の問題」を共に通読していく。各回2,3人の担当者を決め、授業の前半は、担当者の内容要約および考察の発表に充てる。授業の後半では、教員の司会進行の下、発表内容をめぐって、チューターの大学院生たちも交えて、質疑応答と議論を行っていく。隔週授業のため、全7回として各回のテーマを記しておく。(詳細は変更の可能性あり)

1. オリエンテーション
2. 九鬼周造「人間学とは何か」(1)
3. 九鬼周造「人間学とは何か」(2)
4. 九鬼周造「人間学とは何か」(3)
5. 西谷啓治「現代における人間の問題」(1)
6. 西谷啓治「現代における人間の問題」(2)
7. 総括

*フィードバックの方法は授業中に指示する。

(後期)
宗教哲学の基本文献といえる著作や論文を選んで各回の授業に割り振り、事前に出席者に読んできてもらう。そして、毎回教師とチューター役の大学院生の解説をもとに、質疑応答と議論を行っていく。また、卒論向けの発表の際には、論述の仕方や文献の扱い方なども指導し、論文の書き方を学ぶための機会とする。
隔週の授業のため、全7回として各回のテーマを記しておく。なお、どのような文献を取り上げるかは、前期の「宗教哲学基礎演習A」の様子を見て決めることにする。それによって、各回で取り上げる文献の種類も、以下の記したものとは異なる可能性もある。

第1回  オリエンテーション・卒業論文の中間発表
第2回  宗教哲学の基本文献(近代イギリス)の読解・解説・考察
第3回  宗教哲学の基本文献(近代フランス)の読解・解説・考察
第4回  宗教哲学の基本文献(近代ドイツ)の読解・解説・考察
第5回  宗教哲学の基本文献(現代フランス)の読解・解説・考察
第6回  宗教哲学の基本文献(現代ドイツ)の読解・解説・考察
第7回  宗教哲学の基本文献(京都学派の哲学)の読解・解説・考察 

*フィードバックの方法は授業中に指示する。

開講期・曜時限 教員 種別 題目
金4・5(隔週) 杉村靖彦 演習Ⅱ 宗教学の諸問題
[授業の概要・目的]

演習参加者が、宗教学の諸問題のなかで各人の研究するテーマに即して発表を行い、その内容をめぐって、全員で討論する。討議のなかで、各人の研究を進展させることが目的である。

[授業計画と内容]

参加者が順番に研究発表を行い、それについて全員で討論する。各人の発表は二回にわたって行う。即ち、発表者は1時間以内の発表を行い、続いてそれについて討論する。発表者はその討論をうけて自分の発表を再考し、次回にその再考の結果を発表して、それについてさらに踏み込んだ討論を行う。したがって、1回の授業は前半と後半に分かれ、前半は前回発表者の二回目の発表と討論、後半は新たな発表者の一回目の発表と討論となる。
第1回 オリエンテーション、参加者の発表の順番とプロトコールの担当者を決定。
第2回ー8回 博士課程の院生による発表と全員での討論。
第9回-14回 修士課程の院生による発表と全員での討論。
第15回 総括。

開講期・曜時限 教員 種別 題目
前期集中 下田正弘 特殊講義 仏教思想論――歴史と解釈――
[授業の概要・目的]

仏教学は、洋の東西の人文学が邂逅して出現した近代人文学の縮図であり、その研究史には、近代から現代に至るまでの種々の思想的課題が、潜在的なかたちで胚胎されている。本講義は、近代における仏教研究の歴史を概観し、そこにふくまれた思想的課題を、歴史学と解釈学の弁別と調和という観点から照らし出す。

[授業計画と内容]

(研究史批判)
第1回 知の対象としての仏教
第2回 仏教歴史化の困難と歴史的ブッダ像の創出
第3回 先行形象化としての初期仏教
第4回 線的史観からトポスへ――大乗仏教研究の現在
(方法論の多様化)
第5回 社会人類学からの挑戦
第6回 文献外世界の仏教
第7回 東西思想が融合する研究パノラマ
(聖典、聖人、トポス)
第8回 聖典としての仏教
第9回 非言語的エクリチュールと仏典
第10回 聖人と場
(仏教思想概観)
第11回 無我から空へ――仏教思想の根底
第12回 二真理説の意義――言語と存在
第13回 意識の奥底へ――体系的思想としての唯識
第14回 仏の内部から外部へ――如来蔵思想
第15回 総括

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宗教学研究室紀要 第15号(2018年) https://www.bun.kyoto-u.ac.jp/religion/rel-annual2018-top/ Wed, 12 Dec 2018 07:52:25 +0000 https://www.bun.kyoto-u.ac.jp/?p=34702 表紙

目次

<公募論文>

ショーペンハウアーの苦悩の共同-カントとシュヴァイツァーを参照して

鳥越 覚生 (3)

初期シモーヌ・ヴェイユにおける労働概念の形成

小林 敬 (23)

田辺元の宗教哲学における実存共同について-「種の論理」から「愛の論理へ」

浦井 聡 (48)

編集後記

(76)

ISSN 1880-1900

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