研究科長挨拶

みなさん、ようこそ文学研究科・文学部のホームページにお越しくださいました。
簡単に本研究科・学部について、ご紹介したいと思います。 本研究科・学部は、1906年に京都帝国大学内に開設された文科大学から始まります。文科大学は、史学科、文学科、哲学科と講座を増やし、現在の講座の基盤となる三学科がすべて揃ったのが1912年、今年でちょうど110年になります。この史学・文学・哲学という三学科は、明治以降の日本において、人文学の基礎となった概念でした。その後、京大では1992年に第四の学科として文科行動学科が設置され、1995年に大講座制を導入、翌1996年に既存の四学科を5講座(文献文化学、思想文化学、歴史文化学、行動文化学、現代文化学)に再編成し、幾つかの専修を新設、また分野の改編を経て現在に到ります。 文学部とは、「文」の学部、つまり漢字「文」が象徴する学問を行う学部ということで、単なる「文系」や「文科」、もちろん「文学」とも異なる学問領域です。例えばこの文字を含む語彙を、現在日本で用いられるものに限って見てみても、「文字」「文章」「文化」「天文」「文飾」「文雅」など、様々な含意の語彙に用いられます。凡そ、人間が創造した文明と、学識によって森羅万象を観察し分析する学問体系の中で、軍事(武)以外のすべてがそこに含まれると言っても過言ではありません。もちろん、京都大学は、近代的学問体系の中でその語を用いていますので、法律や経済、さらに理化学や工学、医学・薬学は、「文」から独立させていますので、本学が扱う学問領域は、別の言い方では、「人文学」―Humanities と理解できるものです。 京都大学には、人文学を専門に研究する人文科学研究所が存在し、我々文学部とは密接な関係を有しています。授業でも常に協力関係を保ち、文学部と人文科学研究所は、ともに日本の「人文学」を牽引する高度研究組織として、常に最新の研究業績を積み重ねています。 コロナ禍によって研究や教学の場ではオンラインの価値が急速に高まりましたが、やはり人文学の基礎となるのは、文字で記された知の宝庫、つまり書籍です。本学文学部には、学内随一を誇る膨大な蔵書を有し、我々の学問を支えてくれています。 皆さんとともに、このような広がりをもつ「文」の世界を学び追求する機会をもてることを、心から願っています。

2022年4月1日
文学研究科長・文学部長 木津祐子