古代ギリシア・ローマから現代にいたる西洋世界の歴史は、ヨーロッパという地域に根ざすと同時にグローバルな広がりをもっている。本専修では、その歴史的 発展の過程にさまざまな角度から光をあて、体系的に把握することをめざす。
小山 哲 | 教 授 | ヨーロッパ近世史 |
金澤 周作 | 教 授 | ヨーロッパ近代史 |
藤井 崇 | 准教授 | ヘレニズム史、ローマ史、ギリシア語銘文学 |
安平 弦司 | 講 師 | 西洋近世史 |
「西洋史学」とは、どのような地域の歴史を研究する学問なのだろう? 高校で学んだ「世界史」の教科書のなかで「西洋史学」に含まれるのはどの部分なのだろう? 皆さんのなかには、こんな疑問をもっている人がいるかもしれません。
じつは、これはなかなか答えるのが難しい問題なのです。
常識的に考えるなら、西洋史学とは「西洋世界の歴史」であり、その舞台は「ヨーロッパとアメリカ」ということになるでしょう。しかし、問題はそれほど単純ではありません。たとえば、古代ローマ帝国の支配領域には北アフリカや中近東地域が含まれますし、近世以降のヨーロッパ諸国は世界各地に植民地をつくりました。ほかにも、オスマン帝国支配下のバルカン半島や、ユーラシアにまたがるロシアのことを想像してみれば、「ヨーロッパ」とはどこまでを指すのかはっきりしないことは十分にお分かりになると思います。「アメリカ」の範囲についても同じことがいえます。
ただし、いかに「西洋史学」の対象が明確でないといっても、「西洋」的な文化や文明によって、日本のように植民地支配を受けなかった地域でさえ、生活のスタイルや政治制度、思考様式にいたるまで深い影響を受けていることは否定しようもありません。西洋史学を学ぶとは、ヨーロッパやアメリカの歴史そのものを研究するだけでなく、わたしたち自身の暮らしや考え方のなかに溶け込んでいる「西洋」のもつ意味をあらためて問い直す作業でもあるのです。
西洋史学専修では、講義や演習をとおして、古代から近現代にいたる歴史上のさまざまな問題について学ぶことができます。どのような研究が行なわれているか関心のある方は、西洋史学専修のホームページ を覗いてみてくださるか、より詳しく「西洋史学」の現在を知りたい方は、本専修の教員が編集した下記の書物をお読みください。「西洋史学」を大学で学ぶことにまつわる素朴な疑問に答え、学生(学部卒業生や大学院修了生)自身の声を収録し、この学問の面白さを味わうことのできる本の紹介もしています。
服部良久・南川高志・小山哲・金澤周作編『人文学への接近法――西洋史を学ぶ』
(京都大学学術出版会、2010年)定価2000円(税別)
教 授 | 小山 哲 | 西洋近世史 |
教 授 | 金澤 周作 | 西洋近代史 |
准教授 | 藤井 崇 | ヘレニズム史、ローマ史、ギリシア語銘文学 |
講 師 | 安平 弦司 | 西洋近世史 |
本専修は、古代ギリシア・ローマから現代に至るまでの西洋世界の歴史的発展を、政治、経済、社会、思想、文化の諸側面にわたって体系的に把握することを目指して、研究と教育を行っている。現在の専任教員3人はそれぞれローマ史、ポーランド近世史、イギリス近代史を主たる研究対象としながら、上記の課題と取り組んでいる。また、大学院生は各自の問題関心にしたがって自主的にテーマを決めて研究を行っており、その対象領域は専任教員の専門分野をはるかに超えて極めて広い範囲にわたっている。
以上のように本専修では、大学院生に対して何よりもまず自主的・自発的な研究態度を求めており、どのようなテーマを選びそれをどのような方法で解明して行くかは院生の自由である。しかし、自己の専門に狭く閉じこもることは厳に戒めるべきであり、研究室での教員や他の院生との日常的な討論を通じて、また本専修が組織し運営する学会「西洋史読書会」をはじめ、学外の様々な学会、研究会などに積極的に参加することによって視野を広げ、自らの研究テーマの意味を問い直して行くことが望まれる。
研究発表や論文執筆の基本的な方法については大学院演習で習得していくことになるが、自己の研究テーマに関わる方法論の習得と練磨は主として院生自身で行わなければならない。その際希望しておきたいのは、次の諸点である。第1は、いうまでもないことながら、それぞれの分野での先行研究の成果を十分に咀嚼した上で問題を適切に設定し、基本的な史料を用いてそれを解明していかなければならないことである。第2に、西洋史学はきわめて学際的な学問であり、隣接諸科学との関係がたいへん深いので、西洋史学の研究者になろうとする者には、学際的な感性と関連諸学の素養が今後ますます要求されるだろう。第3に、西洋史学の研究の重要な手段である外国語能力の運用に努めることが肝要である。今日のわが国における西洋史研究のレベルは欧米学界と変わらぬものとなり、一次史料に基づく独創性の高い研究ばかりでなく、日本語に加えて外国語によるその成果の公表が要求されるようになっている。そのためにも、外国語の精密な読解力と合わせて、コミュニケーション能力がこれまで以上に望まれよう。
本専修では、専任教員や本専修を運営の基盤とする研究会が主催する学会、国際シンポジウム、外国人学者講演会などがしばしば開かれるため、大学院生がそうした機会を利用して学会活動に馴染み、また外国留学の準備を進めるなど、授業以外でも専門研究者への歩みを進める環境がある。修士課程を修了して就職する予定の大学院生にとっても、本格的な学会活動や国際的な学術コミュニケーションの場に加わることは、グローバルな活動のための重要な準備の機会となろう。