19世紀・20世紀のロシア文学・言語・思想の研究を軸としつつ、南スラブ、西スラブの中世から現代までの言語・文学をも視野に入れたスラブ学の確立を目指す。
中村 唯史 | 教 授 | ロシア文学・ソ連文化論 |
皆さんは「スラブ」という言葉を聞いたことがありますか? ロシアやウクライナ、ポーランドやチェコ、スロヴァキア、そして旧ユーゴスラヴィアの国々やブルガリアといった、東は極東・シベリアから、西はドイツ国境まで、南は地中海にいたる広大な地域に住んでいるのがスラブ人と総称される人々です。それぞれが独立して国家を持ち、ロシア語やポーランド語、チェコ語やブルガリア語等を話していますが、同時に「スラブ民族」としての共通の文化、伝統を持っています。またロシア語は、旧ソ連圏の非スラヴ諸民族のあいだでも、共通語や第二言語として、現在でも広く使用されています。 「スラブ専修」ではこのスラブ民族、スラブ世界に関することなら何でもあり、とにかくそれぞれが面白いと思うことを勉強しています。大きく分ければ、文学か言語かということになりますが、その中間にある文化や民俗について学ぶ人もいます。ドストエフスキーやトルストイ、チェーホフなど19世紀だけでなく、20世紀から現代に至るロシアの文学や文化、ポーランドやチェコなどの言語や文学を学ぶこともできます。さらには中世のスラブ世界の言語や文献の世界に入り込む人もいます。 1991年、ソ連邦が崩壊しました。それから25年たったいま、かつてソ連の影響下にあったスラブの国々の社会と文化は大きく変わっています。新しい文学が生まれ、新しい世代の作家たちが活躍しています。社会の激変を受けて、言語も日一日と変化しています。 皆さんも、この長い歴史を持つと同時に、リアルタイムで大きく変貌をとげつつあるスラブ世界のことを勉強してみませんか?
中村 唯史 | 教 授 | ロシア文学・ソ連文化論 |
本専修は、平成7年度の文学部再編により開設され、平成8年度から大学院学生の募集を行っている。そして平成16年度には初めて2名の課程博士が出、現在、修士課程・博士課程あわせて4名の院生が在学している。 当専修は、それぞれで固有の特徴を示すものの、一方で多くの共通点をもつスラブ諸民族の文学や言語を、その多様性と統一性を視野に入れつつ、研究・教育することを設立の趣旨としている。 専修を担当する中村は、ロシア文学、ソ連文化論を専門とし、おもに19世紀初頭から現代に至るロシア文学・思想を対象とした研究を行っているが、多言語・多文化国家を標榜したソ連時代の文化状況にも強い関心をもっている。同時に、授業については本学の他研究科の教員、ならびに非常勤の先生方の応援を得て、できる限り広くスラブ諸民族の言語と文学を対象とすることを目標としている。 したがって、当専修を志望する諸君も、まず自分の専門分野を確立したうえで、将来的には国や民族やジャンルの枠を超え、スラブ全体を踏まえた研究を目指して欲しい。学部でロシア語、ロシア文学を専攻した人は大学院入学後は他のスラ ブ語や文学についても知ってもらいたい。また他方、ロシア語がスラブ研究のための国際的共通語としてもっとも重要な地位を占めていることも事実であるので、ロシア以外の言語、文学を専攻した人も、入学までにできる限りロシア語の力をつけてきてほしい。とはいうものの、修士課程入学時にまず第一に要求されるのは、それぞれの学部で専攻した言語、分野についての十分な学力と、将来的に研究を進めるための自主的な姿勢、そして自分の関心をどんどん拡げていこうとする知的意欲である。 年によって多少の変更はあるが、例年特殊講義として「ロシア語学の諸問題」「ロシア文学研究」「ロシア文化研究」、演習として「19世紀ロシア文学」「20世紀ロシア文学」「テキスト分析」「ロシア文化史」などの授業が開講されている。また学部向けの授業としては「ロシア文学演習」「ロシア文化・社会論演習」「露書講読」「ロシア語外国人実習」などがある。またポーランド語の授業やチェコ語の勉強会もあり、「ポーランド語講読」も開講されている。集中授業はこれまで「セルビア・クロアチア語」「ポーランド文学史」「ロシア・ロマン主義研究」「マケドニア語研究」「19世紀・20世紀ロシア文学概論」「現代ロシア語文法論研究」「スラブ民俗学研究」などが行われてきた。 本専修は、生まれてなお日の浅い専攻であり、何もないところから出発して新しい研究室の雰囲気、学問的伝統を作っていく過程にある。そのために自ら積極的に貢献しようという諸君の入学を期待している。