ドイツ・オーストリア・スイス等ドイツ語圏の文学について、他の文化領域との関連にも留意しつつ、18世紀から20世紀にかけての時代に重点を置いて教育、研究を行っている。
松村 朋彦 | 教 授 | 近代ドイツ文学・ 文化史 |
川島 隆 | 准教授 | 近現代ドイツ文学・メディア論 |
ドイツ語学ドイツ文学と聞いて、皆さんはまず何を思いうかべるでしょうか。古いところではゲーテやシラー、20世紀ならトーマス・マンやヘッセ、リルケやカフカといった作家たちでしょうか。あるいはむしろ、今の日本でもっともよく知られているドイツの文学者といえば、グリム兄弟とミヒャエル・エンデかもしれません。
そして、かつてグリム童話やエンデの文学に親しんだことのある人は、知らず知らずのうちにドイツ文学の森のなかへ足を踏みいれているのです。というのも、グリム兄弟のメルヒェン収集は、詩と学問との統合をめざしたドイツロマン主義の精神につらなるものであり、エンデの作品に登場する不思議な少女や灰色の男たち、本のなかの本や鏡のなかの鏡といったモティーフは、ドイツ文学のなかにくり返しあらわれてくるものだからです。
けれどもまた、ドイツ文学がけっしてドイツ一国だけのものではなく、オーストリアとスイスの一部にもおよんでいることを忘れてはなりません。とりわけ19世紀末から20世紀初頭にかけてのウィーンでは、シュニッツラーやホーフマンスタールらの文学者、クリムトやシーレらの芸術家、マーラーやシェーンベルクらの音楽家、さらには哲学者ヴィトゲンシュタインや医師フロイトといった多彩な才能が、独自の文化を開花させました。
こうして文学だけにはとどまらず、広くドイツ語圏の文化の諸相をその時代や社会とのかかわりのなかで学ぶのが、本専修の特色です。
教 授 | 松村 朋彦 | 近代ドイツ文学・文化史 |
准教授 | 川島 隆 | 近現代ドイツ文学・メディア論 |
本専修の研究教育の対象領域は、中世から現代へといたるドイツ語圏(オーストリア、スイスを含む)の言語文化全般にわたっている。松村教授は、18世紀から19世紀にかけてのドイツ文学を、文化史・モティーフ史の観点から考察しようと試みている。専任教員の専門分野からもわかるように、研究教育の中心をなしているのは18世紀以降のドイツ文学であるが、それ以外の研究領域についても、人間・環境学研究科や人文科学研究所の教員や学外からの非常勤講師、さらには外国人教師の協力を得て、多種多様な授業が開講されている。ドイツ語学に関する授業も毎年おこなわれている。授業の他に、学生による読書会も盛んである。
本専修の研究教育の特色は、講座開設当初から一貫して、原典の綿密な読解を重視する点にあり、この伝統は今日もなお生きつづけている。だが他方では、新しい方法論の出現と対象領域の拡大によってますます多様化しつつある現在の研究状況をふまえて、せまい意味での語学・文学研究の枠組にとらわれることなく、広くドイツ語圏の諸芸術や文化と社会のさまざまな問題に目を向けることもまた必要であろう。
さらに、ドイツ語圏の言語文化が他の欧米諸国との密接な影響関係のもとに成立、発展してきたことを考えるなら、ドイツ語学ドイツ文学を西洋文化全体とのかかわりのなかでとらえようとする視点もまた、今後ますます重要になってくるだろう。
このような意味で、ドイツ語学ドイツ文学を研究しようとする学生諸君には、ドイツ語のテクストを正確に読みこなすだけの語学力と西洋文化全般に対する広範な関心を期待したい。