京都大学考古学研究室の最近の調査活動から
調査の概要
調査遺跡 大阪府指定史跡 紫金山古墳
所在地 大阪府茨木市室山1丁目
調査主体 京都大学大学院文学研究科考古学研究室
調査指導 大阪府教育委員会・茨木市教育委員会
調査日程 2003年8月1日(金)~31日(日)(予定)
*発掘作業は土曜日・日曜日もおこない、木曜日を休日とします。
*雨天の場合は作業を休止します。
*作業日程は、進捗状況に伴い変更する場合があります。
調査の目的
紫金山古墳は、後円部墳頂に給水用の貯水槽を建設する際に竪穴式石槨の一部が偶然みつかったことで、その存在が知られるようになりました。1947年4・5月に、大阪府教育委員会の古文化紀念物調査委員会の事業として、梅原末治を主査、小林行雄を担当者とする発掘調査が行われ、竪穴式石槨の内部と壁体上部外縁から、三角縁神獣鏡や腕輪形石製品をはじめとする多様な遺物が発見されたことで知られています。しかし、この調査では古墳の墳形・規模・構造について充分には追求されませんでした。そうした問題を明らかにするために、2003年3月に紫金山古墳の墳丘測量調査を行いました。今回は、その成果をふまえた上で、以下の問題を解決するために、墳丘の発掘調査を行います。
(1)古墳の全長の確定
1947年の発掘調査と測量調査により、紫金山古墳の全長は約100mと復元されています。しかし、今回改めて墳丘の測量調査をおこなった結果、前方部前面の墳裾の位置が、以前の推定とは異なる可能性がでてきました。そこで今年度の調査では、古墳の主軸にそって、後円部と前方部に1つずつトレンチを設定して古墳の裾部の位置を明らかにし、古墳の全長の確定を目指します。
(2)古墳の平面形態の追求
1947年の調査以来、紫金山古墳は「前方後円墳」として知られてきました。しかし、最近、その墳形を「前方後方墳」とする説が提示されています。3月の測量調査の結果、「後方部」のようにみえる部分は、貯水槽建設に伴う墳丘の改変を反映している可能性があり、全体的にみれば前方後円墳である可能性が高いと考えています。ただ、予想以上に墳丘の改変が大きく、また丘陵の高まりを利用して古墳がつくられていることから、測量調査のみで平面形態を確定することはできませんでした。そこで今年度は、墳丘の形態を比較的良好に残していると考えられる前方部北斜面および北くびれ部にトレンチを設定し、具体的に平面形態を復元するための手がかりをえたいと思います。
(3)古墳の立体構造の追求
1947年の発掘調査により、紫金山古墳の前方部には葺石と埴輪列が存在したことが確認されています。しかし、葺石の詳細な構造や、埴輪列の位置、埴輪の特徴、段築の状況などについてはほとんどわかっていません。今回設定する各トレンチ内での調査を通し、紫金山古墳の具体的な立体構造を明らかにするための手がかりをえたいと思います。