以下は、キリスト教学を受験される方々に向けた、当研究室の基本情報および受験に関する情報です。(最終更新日: 2023年5月16日)
<本ページの内容>
(1)キリスト教学専修とは
(2)研究と教育の基本方針
(3)キリスト教学をめざす方々への要望
(4)大学院試験について
(5)補足説明
(1)キリスト教学専修とは ──特色・研究分野・スタッフ・授業 ──
キリスト教学専修は、特定の信仰や教義に基づく神学部とは異なり、キリスト教を純粋に学問的な見地から研究することを目的として、大正11年(1922年)に創設された。この点において、本専修はキリスト教思想を研究対象とする諸大学の関連講座の中でも特徴的な位置を占めている。研究と教育は、キリスト教の歴史と思想の全分野にわたって行われている。「キリスト教学」については、キリスト教を様々な方法とテーマ設定に学的研究を行う諸学問の総体をイメージいただきたい。研究は、古代から現代、世界の諸地域(西欧・中欧・東欧から、アメリカ、アジア、アフリカなど)、思想や歴史、芸術や政治など、広範な領域に及び、キリスト教という対象を中心に据えるならば、原理的にはいわば無限の研究形態が可能である。
こうした多様な研究領域の中でも、キリスト教学専修では伝統的に次の分野に力点が置かれている。
1 旧約・新約学
2 キリスト教思想史、特に古代教父、宗教改革、近代的キリスト教思想
3 キリスト教思想の体系的宗教哲学的研究
しかし、現在、キリスト教学専修に所属する教員は、津田謙治教授1名であり、指導可能な研究分野はその点から自ずと制約されざるを得ない。津田教授は、古代から中世にかけてのキリスト教思想(教父学、教理史研究、異端思想など)や、近代のキリスト教思想(F.Ch. バウアー、A. リッチュル、A.v. ハルナックなどの思想。教義史、自由主義神学など)、あるいは戦後日本のキリスト教研究(有賀鐵太郎など)の歴史を中心に研究を進めている ── 詳細は、津田教授の「researchmap」もしくは「京都大学教育研究活動データベース」を参照のこと ──。
授業は、本専修スタッフによる講義と演習のほか、学外からの非常勤講師によって ──具体的には、「講義題目と時間割」を参照 ──、古代から現代まで、欧米、アジア、アフリカのキリスト教思想など主要な研究分野を可能な限り(場合によっては数年の計画によって)包括するように行われ、さらに文学研究科の他専修(宗教学や西哲史など)の授業も含めることによって、キリスト教思想についての十分な学習が可能になるように配慮されている。
(2)研究と教育の基本方針
キリスト教学は、これまでのキリスト教思想研究の伝統を発展させつつ、関係諸学科との融合と調和をはかりながら、高度な教育研究を推進し、その成果を通じてキリスト教界はもちろん、現代世界全体への貢献を目的としている。
一、キリスト教学は、キリスト教とその思想に関して、これまで神学、宗教哲学、宗教学の諸分野で蓄積された学的遺産を統合することによって、キリスト教を研究対象とする新たな学問研究の構築をめざし、キリスト教思想や言語文化、歴史、行動、さらにはキリスト教文化全体に関わる学術の理論および応用を教授研究する。
一、キリスト教学は、キリスト教文化の継承と発展に寄与し、真に新しいキリスト教思想を創造しうる卓越した学識と応用能力を有する、学術研究者および高度専門職業人を育成する。
一、キリスト教学は、関連諸学科との連携や研究教育における国際交流の強化を通じて、教育研究の成果を社会にひろく還元する。
一、キリスト教学は、人権や環境に配慮した研究教育を行うとともに、社会的な説明責任に応える。
(3)キリスト教学をめざす方々への要望
キリスト教専修では、キリスト教を対象とした高度な学問的な研究を行うことを目指しており、大学院生の多くは、それぞれの研究テーマに関して修士論文そして博士論文を執筆し、研究・教育職に就くことを目標としている ── もちろん、修士課程修了後にキリスト教学専修で身に付けたキリスト教思想に関する専門的な学識と能力を生かすことによって、研究・教育職以外の進路へと進むことも可能である ──。しかし、そのためには、進学を希望する方々に多くの事柄が要求されることになる。とくに、キリスト教学の大学院(修士課程への入学、博士後期課程への編入学)を検討する場合、次の点に留意いただきたい。
1 語学運用能力
キリスト教を学問的に研究する場合、まず重要になるのは、語学運用能力である。たとえば、キリスト教思想研究は、原典に即した文献学的あるいは歴史学的研究を基礎としており、テキストの厳密な読解に基づく理解力と分析能力が不可欠である。したがって、キリスト教学大学院志望者には、原典研究を行うに必要なヘブライ語、ギリシア語、ラテン語などの古典語の習得 ── とくに聖書学や古代教父、宗教改革などを研究する場合は必修 ── と、近代語(英語、ドイツ語、フランス語など)についての習熟が期待される。大学院入試おいても、とくにこの点が重視される(もちろん、大学院入学段階で、これらの古典語と近代語すべての習得を要求しているわけではない。研究テーマによって様々なケースがありうる)。
また、キリスト教学専修では、アメリカやドイツあるいは韓国や中国の研究者との学術交流を行うなど、キリスト教学研究を広い国際的視野のもとで研究が進められている。大学院生にも、国際的な場での研究交流に積極的に参加することが求められ、そこでは、テキスト読解力にとどまらない、広範な語学運用能力が期待されることは言うまでもない。
2 広範な基礎知識
また、キリスト教の歴史や思想と深い関わりをもつ思想史(教会史や教理史の他に、哲学史や宗教史なども含む)などについての知識も大切である。高度な専門研究を可能にするのは ── とくに博士後期課程所属の学生には複数の専門領域について研究が求められる ──、狭い研究領域についての深い知識だけではなく、キリスト教全般にわたる広範な基礎知識である。こうした基礎知識は大学院における授業や研究会を通しても修得可能ではあるが、大学院入学以前に一定程度の基礎知識を身につけていることが望ましい。
たとえば、以下に挙げる文献は、一つの目安と言うことができ、また大学院入試に向けての準備にも有益である。
・P. ティリッヒ『ティリッヒ著作集 別巻2 ― キリスト教思想史Ⅰ』(白水社・1980)
・同『ティリッヒ著作集 別巻3 ― キリスト教思想史Ⅱ』(白水社・1980)
・F.W. グラーフ編『キリスト教の主要神学者 上』(教文館・2014)
・同『キリスト教の主要神学者 下』(教文館・2014)
・J. ゴンサレス『キリスト教思想史I』(新教出版社・2010)
・同『キリスト教思想史II』(新教出版社・2017)
・J.N.D. ケリー『初期キリスト教思想史 上』(一麦出版社・2010)
・同『初期キリスト教思想史 下』(一麦出版社・2010)
・A.E. マクグラス『キリスト教神学入門』(教文館・2002)
・同『総説 キリスト教』(キリスト新聞社・2008)
・同『プロテスタント思想文化史』(教文館・2009)
3 明確な問題意識、そして意欲と持続力
以上述べた語学運用能力や広範な基礎知識は、そのいずれに関しても、習得は容易なことではない。この困難な作業に取り組むのに必要となるのは、自分が大学院で目指そうとしている研究テーマについての明確な問題意識である。もちろん、大学院在学中に研究テーマを変更することはありうることではあるが、問題意識が漠然としている場合、修士論文はもちろん、博士論文の完成はきわめて困難であろう。そして、何よりも、志望者には、キリスト教を学問的に研究したいという意欲と情熱、そして基礎的な語学や知識の学習に要する持続力が望まれる。
(4)大学院試験について
文学研究科キリスト教学専修への入学は、学部を卒業後に修士課程へ入学するコースと、他大学院や文学研究科他専修(修士課程修了後)から博士後期課程に編入するコースの二つが考えられるが、本専修では基本的には修士課程と博士後期課程の5年間の一貫教育が行われており、博士後期課程への編入学は志望者の特殊事情に応じたやや特例的なものとお考えいただきたい。
試験内容
・修士課程:一次試験(英語と専門試験)
(外国からの留学生は、日本語と専門試験)
:二次試験(一次試験合格者に対して、第二外国語と口頭試問)
・博士後期課程編入:一次試験(第一外国語と専門試験)
:二次試験(一次試験合格者に対して、第二外国語と口頭試問)
入試の時期と要綱
大学院の入学試験は毎年8月上旬と2月半ばに、年2回行われる。入試要項などの必要情報は、京都大学文学部・文学研究科のホームページより入手可能である。
過去問
入試問題の過去問は、文学部教務掛の窓口で閲覧・コピーが可能である。
(5)補足説明
1 京都大学外部からの志望者について
外部からの志望者については、キリスト教学研究室のWebなどでキリスト教学専修について十分に情報を得ることが望ましい。なお、本専修教員(津田教授)とコンタクトをとり、研究主題などについてアドバイスを受けることも可能であるが、大学院募集要項にも記載されている通り、事前のコンタクトは必ずしも必要なことではない。
2 聴講生について
京都大学文学研究科・文学部には、学部聴講生と大学院聴講生(修士号を持つ者のみ)という制度があり、とくに外部からの志望者のなかには、聴講生として受験準備を行う方々も少なくない。また、海外からの留学生の場合は、年度途中からの研究生としての受け入れも可能である。
3 大学院入試の複数回受験について
本専修は、原則的に夏と冬に年2回の入試を行っており、たとえば夏に結果が出なかった場合、その年度の冬に再受験することは可能である。再受験によって有利・不利はなく、また難易度にも違いはない。ただし、多様性の確保という観点から、夏入試と冬入試では試験の形式が若干異なる場合がある。
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