歴史文化学専攻

日本史学専修

広く国際的な視野に立ち、日本史の統一的かつ総合的把握をめざしており、志望学生は、歴史学はもとより、隣接諸科学とその成果に関心をもつことが望まし い。実物資料による研究と教育も特色である。

吉川 真司 教 授 日本古代史
上島  享 教 授 日本中世史
谷川  穣 教 授 日本近代史
三宅 正浩 准教授 日本近世史
松井 直人 助 教 日本中世史

文学部受験生向けメッセージ

日本史学は、この日本列島に生まれ、時とともに移り変わってきた社会や文化を、総体として明らかにしようとする学問分野です。日本人の行動や思考には、時代・地域・個人によってさまざまなバリエーションが見られますが、長い歴史をもつ日本社会・日本文化が決定的な影響を与えていることは明らかです。その意味で、日本人にとって日本史を考えることは、自分自身、そして自分を直接成り立たせている外的世界を知るための営みにほかなりません。歴史基礎文化学系ではさまざまな地域の歴史を扱っていますが、日本史学のもつ独自性はまさにこの点にあると言えるでしょう。

もちろん日本史学専修でも多くの留学生を受け入れており、彼ら・彼女らにとって日本史は外国史であるわけですから、私たちは「日本人にとっての日本史」ばかりを研究しているのではありません。また、日本社会・日本文化は孤立して存在してきたのではなく、東洋・西洋の諸地域との関わりも重要な研究テーマになります。そうしたことを含めて、日本の大学で日本の歴史を研究する意味を、改めて考えてみてほしいのです。

私たちの日本史学専修は、日本史を学びたい人々にとって、かなり良い環境を提供していると思います。歴史学が空理空論に陥らないためには、実物・実地にしっかり根ざした研究が必要です。本専修では100年近くにわたって史料収集を続けてきました。今では5万点におよぶ実物史料を手に取ることができ、解読練習のために1000年前の本物の古文書を使うこともあります。きっと世界でもまれな、贅沢きわまる実習なのでしょう。また、京都という地の利も忘れることはできません。長らく日本の首都でありつづけた京都、その文化的伝統に包まれながら勉学し、必要とあらばすぐ重要な史跡・遺跡を見に行けること、これもまた研究上の大きな利点になっています。

くずし字を苦労して読み、日本人の書いた独特な漢文をきちんと解釈していくという、地味な勉学が私たちの日常生活です。しかし時おり、これまで誰も知らなかった過去の事実を発見することがあります。あなたが初めて見つける歴史の一かけら、それは日本史全体を書き替え、自分自身を知り直すための貴重な手がかりになるかもしれません。

大学院研究科受験生向けメッセージ

教 授 吉川 真司 日本古代史
教 授 上島  享 日本中世史
教 授 谷川  穣 日本近代史
准教授 三宅 正浩 日本近世史
助 教 松井 直人 日本中世史

日本史学専修では、幅広い分野のスタッフを揃え、日本史の統一的かつ総合的把握を目指して研究と教育を行っている。他学部や研究所など、学内諸機関から広く講師を迎えているのもそのような意図によるもので、単に日本史の枠内に閉じこもるのではなく、さらに広く国際的な視野から日本史をとらえる姿勢が必要である。院生諸君にはこの点をよく理解し、自身の専門分野を極めることは勿論、常に広い視野と関心を持って研究に取り組んでいただきたい。歴史学はもとより、国語・国文学、考古学、地理学、人類学、社会諸科学など隣接諸科学とその成果に関心の深いことが望ましい。

京大日本史の著しい特色として、実物史料による研究と教育を挙げることができる。研究室には、三浦周行教授以来、歴代にわたって収集された厖大な古文書・古記録等が収蔵されている。これらは一学部、一研究室の所蔵としては他に類を見ないもので、日頃から学部・大学院生の教育に用いられる一方、貴重な研究史料として広く学内外研究者の利用に供されている。歴史学の基礎は各時代固有の性格をもった文字史料の正確な読解力にある。院生諸君はこの恵まれた環境を生かし、演習以外にも日頃から古文書・古記録や影写本に親しみ、活字や写真によっては得られない歴史の手ざわりを実物史料によって感得し、それらに対する真の読解力を養っていただきたい。そのためには研究室が行なう史料調査や博物館の展示に積極的に参加する姿勢が必要である。

本研究室ではまた、院生諸君による各種研究会や夏の古文書研修合宿など、自主的研究活動が盛んに行われている。これらにも積極的に参加し、また自ら組織し、活発な議論を展開してほしい。広く学外の研究者・研究組織との交流も不可欠である。そのためには研究室の主催する学会組織である読史会への積極的な参加も望まれる。博士課程終了時の学位論文提出を目指して、在学中から積極的に学術雑誌等へ研究成果を発表していただきたい。修士論文の公表はその最低の要件であろう。入学時から高い志をもって研究生活に入られることを希望する。