明治以降の日本の哲学の形成と発展、つまり、西洋哲学の受容と対決の中から生み出されいった独創的な思想の歩みをたどり、日本の文化的・思想的創造の向か うべき方向を探る。
上原 麻有子 | 教授 | 日本近代哲学 |
WIRTZ, Fernando Gustavo | 助教 | 日本哲学 |
脳や遺伝子の働きの解明によって、人間についてのわたしたちの理解は飛躍的に進みました。しかし、そのような研究は人間の一部分を対象にした研究です。人間を全体としてみたとき、人間とはいったい何なのかということを、それらは解き明かしてくれません。
また、そうした研究では、人間はどこまでも分析の対象として取り扱われています。しかし、私たちは実際には、一個の主体としてこの世に生きています。何のために生きるのか、どのように生きればよいのかといったことを、自分の問いとして問いながら生きています。
哲学は、このような問いに関わる学問です。そして日本哲学史は、とくに日本の哲学者たちが、いま挙げたような問いについてどのように考えたのかを、主たる研究の対象にしています。
しかし、むかしの人が書いたものを読んだり、理解することだけが哲学の内容ではありません。文献を通して理解したものを手がかりにして自分の意見をもつこと、それをめぐって他の人々と議論をすること、そしてそれを通して自分の意見をより豊かなものにすることが、たいせつな点です。
現在、日本哲学史研究室で行っている研究や活動については、次のウェッブ・サイトを参考にしてください。
教授 | 上原 麻有子 | 西田哲学をはじめとする日本近代哲学、翻訳学 |
助教 | WIRTZ, Fernando Gustavo | 日本哲学史 |
本専修ではいわゆる日本思想史ないし日本文化史と異なり、研究の力点を明治以降の日本の哲学の形成と発展においている。つまり西洋の哲学に出会った明治以降の日本の思想家が、そのなかに何を見出し、何を問題にしたのか、そしてその受容と対決のなかからどのようにして独自なものを生みだしていったのか、そのプロセスが主要な研究対象となる。
哲学史、つまり「哲学の歴史」のうち、「歴史」の面に重点をおいて、たとえば西田幾多郎や田辺元の思索の発展の跡をたどり、そこから問題を引き出していくということも可能であるし、逆に「哲学」の面に重点をおいて、言葉や身体、自己、歴史といったテーマを立て、主として日本の哲学者の思索を手がかりにしてその問題を展開していくということも可能である。またそのような考察を通して、日本の文化的・思想的創造の向かうべき方向を模索することも課題の一つであると考えている。
いずれにせよ、重要な意味を持つのは、日本の哲学だけでなく、欧米の哲学に対する関心と知識とを待ち、広い視野で日本の哲学を考察することである。日本の多くの哲学は、欧米の哲学との対決のなかから、あるいはそれを踏み台として生みだされたのであり、欧米の哲学を理解することなしにそれを十分に理解することはできないからである。日本の哲学者の創造的な仕事を評価することも、そのような視点からはじめて可能になると考える。
したがって履修にあたっては、西洋哲学に関する知識、欧語文献を読みこなす力が当然必須となる。そのために哲学・宗教学講座の他の専修の講義・演習等にも積極的に参加することを勧める。
しかしまた他方、日本の哲学の形成は、日本の、あるいは東洋の思想的・文化的伝統の上ではじめて可能であったのであり、そのような伝統との関連に注目することも大切であると考えている。あるいはそのような伝統そのものを研究することも可能である。
欧米の哲学と日本の哲学、あるいはアジアの哲学と日本の哲学との比較思想的な研究も重要な、またアクチュアルな課題であり、そのようなテーマでの研究を希望するひとも本専修で受け入れたい。
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