専修紹介

京都大学大学院文学研究科・現代文化学専攻[京都大学文学部・現代文化学系],情報・史料学専修は,2005年4月に船出した文学部・文学研究科ではもっとも新しい研究・教育グループです.専任の教員は私,林晋,一名の小さなグループですが,学内他学部・学外から多くの非常勤講師を迎え, また関連専修との連携により,充実した教育・研究体制を提供しています.  

当専修が設立された主な目的は社会の不可欠要素となった「情報」を, 歴史学, 社会学, 哲学などを使って研究することですが,実際に行われている研究・教育は,それより遥かに広いもので,「情報」という名前が専修の実態を誤解させる原因ともなっているほどです.  

所属学生は,入門レベルでは, 現在の情報社会の問題点を社会学的・歴史学的手法で分析する方法を中心に, 人文学研究に情報技術を利用する方法なども学びます.これらは「現状」の理解を目指すものですが, 専門レベル・大学院では, そのような現代の問題だけでなく, 社会の情報化の背景となった過去の思想・哲学を理解することが大きな目的となりますし,また,そのような研究を「裏返し」に使い,例えば「近代化」という社会学などの大テーマを「情報史」を道具として用いて研究するというようなこともします.  

たとえば, 最近の経済学史・情報学史では, 「社会の情報化」とアダム・スミスに始まる分業論との関係が論じられ, ライプニッツの普遍記号学と現代情報技術の関係も数学史的に解明されつつありますが, こういう深いレベルでの「情報と社会」の理解を目指します.また,この例に普遍記号学の話が出てくるように,「情報」といっても単にケータイやPCの話だけでなく,もっと根源的な「機械化された知」「物象化された知」の本質とルーツを探り,そして,その近代現代社会へのインパクトを理解することこそが,当専修の本当の研究・教育のテーマといってよいでしょう.  

そのため具体的テーマも, 情報技術の社会学・歴史にとどまらず, 経済や産業, 数学や論理, は当然として,京都学派の思想史研究などの哲学史・思想史にまで及びます.この複雑怪奇な現代社会を理解するためならば,どんな分野でも研究してやろう,というのが当専修のモットーです.  

また, 人文学, 特に文献・史料研究への情報技術の応用も研究しており,HCP project というプロジェクトを行っています.このプロジェクトは,当専修の19世紀ドイツ数学思想史のために作られたツール SMART-GS から発展したものですが,2010年現在では,当専修の京都学派田辺元の思想史の研究・教育,および,現代史学専修での日本政治史の研究・教育で使用されています.これらの人文学用情報技術理解のために必要な基礎的情報技術の学習は, 工学部・情報学研究科の講義で単位をとれるシステムになっています.2010-04-18  


過去の卒論・修論題目から  
  1. 修士論文『プロイセンの中等数学教育』
  2. 修士論文『西周における学問観の変遷』
  3. 修士論文『藤本隆宏の産業の分類法に関する検証』
  4. 修士論文『文献研究用システム SMART-GS』
  5. 卒業論文『アフリカにおけるICTの普及について』
  6. 卒業論文『Anthony Giddens Sociology の研究』
  7. 卒業論文『デカルトを巡る17世紀哲学と数学基礎論』
  8. 卒業論文『TCP/IP のデファクトスタンダード化について』
  9. 卒業論文『UI設計のための理論とその応用』
  10. 卒業論文『西周の学問体系における論理学の位置付け』
  11. 卒業論文『会田安明とその思想』
  12. 卒業論文『「研究」の変遷 ~人間の知的活動はどのように形を変えてきたのか~』
  13. 卒業論文『David Hilbertの実数論』