2015年度の授業

日本哲学史研究室ホーム

講  義

教官 上原 麻有子 種別 講義 学部(2回生以上)
曜日・時限 前期 火・5 教室 総合研究2号館 第8講義室
題目 日本哲学史講義1
概要・目的 日本哲学史を①近代初頭から西田幾多郎まで、②京都学派の二部に分けて日本哲学の形成過程を概観し、さらに、これまで論じられてきた主要問題を通して日本哲学のあり方、意義について検討する。このようにして日本哲学史についての理解を深めることが、授業の目的である。
内容
以下のような課題に基づき、各課題につきおよそ次の回数で授業を進める予定である。
①「日本哲学」とは何か【1回】
②近代初頭から西田幾多郎までの哲学史と哲学研究方法の特徴【5回】
③西田幾多郎【3回】
④京都学派【2回】
⑤三木清、戸坂潤【3回】
テキスト・参考文献 授業中に紹介する
教官 上原 麻有子 種別 講義 学部(2回生以上)
曜日・時限 後期 火・5 教室 総合研究2号館 第8講義室
題目 日本哲学史講義2
概要・目的
京都学派とその周辺の哲学者の思想を、いくつかのテーマを追う形で考察することが、この授業の目的である。さらに、講義で考察する日本哲学の問題が、私たち各自の経験においてどのような意義をもつのか、その経験とどのように結びつき得るのかについても検討する。
内容
以下のような課題(日本哲学史上の主要問題)を講義では扱うが、1課題に充てる講義の回数は2~3回である。
①偶然と運命
②生と死
③人間関係
④風土
⑤日本語と哲学
⑥日本における主体とsubject
テキスト・参考文献 授業中に紹介する

特殊講義

教官 上原 麻有子 種別 特殊講義 学部(3回生以上)・大学院
曜日・時限 前期 水・3 教室 文学部新館 第6講義室
題目 西田幾多郎の行為的直観―表情の問題を探る
概要・目的
西田幾多郎は、現象学のような西洋の「身体」に関する先駆的研究とは無関係に、独自の「身体論」を形成したと言える。これは「行為的直観」という論理で表されたものである。講義では、人間存在のもっとも高度な表現機関である「顔」とその「表情」に注目し、「行為的直観」により「表情」の現れ方について検討する。またこの検討を通して、「行為的直観」では、身体一般の表現や顔の表情が、説明し尽くせないということを明らかにする。さらに、その不足する点を和辻哲郎の倫理学における存在の「共同性」などを参考に補足説明し、より完成した身体論を模索する。以上のような考察手順により、西田哲学を再解釈することが、この講義の最終的な目的である。
内容
以下のような課題を通して考察を深めてゆく。各課題に充てる予定の回数を、【 】内に示しておく。
①西田哲学を再解釈するという問題【1回】
②「行為的直観」という身体論の形成と展開【2回】
③身体の一表現機関としての「顔」-「手」との比較【2回】
④「顔」の「表情」の曖昧性【3回】
⑤和辻の「共同性」と西田の「作り作られる」身体としての「私」と「汝」【3回】
⑥「歴史的身体」としての「顔」、および「表情」【3回】
①西田の人称表現、「私」「我」「汝」や「自己」、これに関連する用語「自覚」と、その英訳、仏訳とを比較し、翻訳上の問題を示す。(すでに出版されているものを参照。)
②西洋哲学史における「人称」と「自己」の問題の概観。
③仏教概念としての「自己」から西田が得たものは何か。
④西洋の哲学者による「人称」と「自己」を西田はどのように再解釈したのか。
⑤西洋語の「自己」の「再帰的」性質がもたらした西田の論理構築への影響
テキスト・参考文献 授業中に指示する
教官 上原 麻有子 種別 特殊講義 学部(3回生以上)・大学院
曜日・時限 後期 水・3 教室 文学部新館 第6講義室
題目 九鬼周造の「偶然」と「名」-哲学から文芸論への展開
概要・目的
九鬼周造の思索は、「いき」の哲学的説明を端緒とし、それが「偶然性」を生み出し、さらに文芸における押韻論へと展開したと概観することができる。講義では、九鬼における「固有名」の問題に注目する。「名」の問題は『「いき」の構造』での「いき」の分析の方法論にも関わっている。その「序説」で「いき」の理解を唯名論の方向に向けると述べられているからだ。しかし、この方向で、九鬼の目指した「いき」の具体的・事実的な存在は、会得され、説明されることが完全にできたのかという疑問が残る。講義の概要は、次のようなものとなる。①「いき」の解釈と説明を、偶然性の哲学に含まれる「名」の問題につなげ、「二元の邂逅」という観点から、「名」の偶然性について検討する。②次に、この問題を固有名において考え、二元の関係を探り、意味というものの意義とアイデンティティーの問題を検討する。③さらに、文芸論における詩作の問題においても、「二元の邂逅」について考えることができる。偶然が織りなす詩の音と意味の世界について、ヴァレリーの詩学や田辺元による象徴についての詩作などと比較しながら論じる。
内容
以下のような課題を通して考察を深めてゆく。各課題に充てる予定の回数を、【 】内に示しておく。
①『「いき」の構造』における唯名論の意義【2回】
②九鬼のエッセー「自分の苗字」に見る固有名の問題【2回】
③固有名と偶然性、固有名と必然性【4回】
④偶然性の哲学(二元の邂逅)から説明する名、存在、アイデンティティー【3回】
⑤偶然性の哲学から発展する詩作、押韻論【3回
テキスト・参考文献 授業中に紹介する
教官 氣多 雅子 種別 特殊講義 学部(3回生以上)・大学院
曜日・時限
後期 火・4
教室 第10演習室
題目 西田幾多郎・清沢満之・井筒俊彦における哲学と宗教
概要・目的
西田幾多郎、清沢満之、井筒俊彦の思想において、哲学と宗教の関係がどのように考えられているかを考察する。それによってそれぞれの哲学思想の意義を明らかにしたい。
内容
およそ以下のようなスケジュールで進める予定であるが、研究のなまの成果を伝えることを主眼とするので、スケジュール通りにゆかないこともありうる。
(1)授業のテーマについて
(2)(3)清沢満之の宗教哲学思想について
(4)(5)清沢満之における宗教と哲学
(6)西田幾多郎への清沢満之の影響
(7)西田幾多郎と清沢満之における宗教と哲学
(8)(9)井筒俊彦の東洋哲学について
(10)(11)西田幾多郎と井筒俊彦における宗教と哲学
(12)宗教体験の意味
(13)(14)西田幾多郎の宗教論
(15)まとめ
なお、フィードバックの方法は授業中に説明する。
テキスト・参考文献 授業中に紹介する
教官 林 晋 種別 特殊講義 学部(3回生以上)・大学院
曜日・時限 前期 月・5 教室 第6講義室
題目
ITと哲学の相即
概要・目的
IT(情報技術)は社会を根底から変えつつある。そのため人文社会学の様々な分野で「社会と情報技術」や「人間と情報技術」の問題が検討され議論されている。たとえば情報社会論、情報倫理学、情報の哲学などである。これらは、人文社会学の諸学が、その学問の立場の中からITという新しい技術的・社会的存在を理解するものである。一方で、WEB登場後には、IT技術者が、自分たちが持つ技術により社会の根幹を変革できるという希望と期待が生まれた。その典型は、Google社の活動に見ることができる。これはITという技術からの社会への働きかけである。
 本講義の目的は、このどちらの立場とも異なり、これらの反対方向の二つの「現象」の背後にある「形而上学的仕組み」とでもいうべきものの存在を明らかにすることである。それは、何故ITは他の技術に比べて容易に「社会的」になってしまうのかの理由を、哲学とITの構造的類似性の観点から説明しようという試みである。取り上げるテーマは、プラトン・アリストテレス形而上学とオブジェクト志向アーキテクチャから、マックス・シェーラーの実質倫理学とGoogle検索、西谷啓治の回互的連関とNFSネットワーク・ファイル・システムなどであり、これらの構造的な類似性をITと哲学の双方の概念を説明し、また、関連付けることにより明らかにする。
内容
次の項目をそれぞれ2-3回講義する。
1.導入:様々な情報社会論・情報技術論とIT社会変革運動
2.存在:プラトン・アリストテレスの形而上学とJava言語(オブジェクト志向)
3.連続:西谷の回互とNFS―京都学派とITの相即の理由
4.倫理:シェーラーの実質倫理学とGoogle Page Rank
5.現存在:HCI(Human Computer Interaction)が「存在と時間」をモデルにする理由
6.Umwelt:ユクスキュルの環世界(Umwelt)とロボット工学
7.他の思想・研究との比較:L. Floridi The 4th Revolutionなど。
項目のオーダーは、この通りではない。たとえば、7は1の導入の後に行う可能性も高い。
各項目とも、哲学とITの基本的知識の解説を行い、その上で、両者を結び付ける。できれば、どちらかの知識を持っていると理解に助けになるが、基本的にはどちらも知らなくても理解できるように講義する。
また、各講義の終わりに5分ほど時間を取り、質問票に質問を書いてもらい、次回の冒頭に、それに答える。
テキスト・参考文献 授業中に指示する。
教官 岡田 勝明 種別 特殊講義 学部(3回生以上)・大学院
曜日・時限 後期 火・3 教室 第5講義室
題目 身体と直接知・・・西田哲学と西谷啓治
概要・目的
西田哲学において、「直接経験」が「身体」を通して語られるようになったところに、その考察は徹底した。すなわち、「哲学」として、「知る」ということがいかなることかを、西田は討究し続けたが、その思惟の到達へと向かわしめたものが、「身体」への注目であったと考えられる。 「身体」の意義において、「世界から考える」という立場が確立し、「作られて作る」ということも、「物となって考え、物となって行う」という考えも開けてきたのであろう。そこで成立する「知」は、さらに西谷啓治の「空の立場」において、いわば、透けて見える。西谷の最後の論文「空と即」を手がかりに、「空」において解明しうる「身体」を考えてみたい。
 その解明は、さらに「悲哀」ということと関わる。「身体」は「情意」をも映すからである。そもそも「知」がどこから成立するかという問題とも関わるところで、鈴木大拙にも言及する。
内容
第一週~第四週 後期西田哲学における「身体論」
第五週~第八週 論文「空と即」における「情意」を知る「知」
第九週~第十週 田辺元における「身体」への注目
第十一週~第十二週 西田・田辺論争における焦点としての問い「哲学とは何か」
第十三週~十五週 大拙から見た、西田・田辺
テキスト・参考文献 授業中に紹介する。講義に必要なテキストは、そのつどコピーを配布する。
教官 田中 久文 種別 特殊講義 学部(3回生以上)・大学院
曜日・時限 前期集中 教室 未定
題目 京都学派の哲学ーその現代的意義ー
概要・目的
京都学派の哲学者(西田幾多郎、田辺元、九鬼周造、三木清、高山岩男、西谷啓治ら)とその周辺の哲学者(和辻哲郎、高橋里美ら)の思索を、自然観、時間論、他者論などテーマ別に振り返る。特に彼らの間の対立点を浮き彫りにしながら、日本の近代哲学をできる限り立体的に把握し、そこから今日にも活かせる可能性を取り出していく。
内容
1.絶対無 (西田・田辺・高橋の対立点)
2.弁証法 (「自己限定」か「絶対媒介」か)
3.自然観 (「物質の弁証法的展開」か「主客の弁証法的統一」か)
4.時間論 (「共同体的時間」か「絶対転換」か)
5.歴史哲学(「唯物史観」か「多元的歴史観」か)
6.他者論 (「間柄」か「絶対他者」か)
7.宗教哲学(「直観」か「行」か)
8.芸術哲学(「ポイエシス」か「象徴」か)
(1テーマあたり1~2回の授業をする予定)
テキスト・参考文献
田中久文 『日本近代哲学入門(仮題)』(筑摩書房)(2015年3月にちくま学芸文庫から刊行予定
教官 林 晋 種別 特殊講義 学部(3回生以上)・大学院
曜日・時限 後期 水・5 教室 第8講義室
題目 京都学派、ある思想の系譜2:西田幾多郎、田辺元、西谷啓治
概要・目的
2014年度後期と同じテーマであるが、2014年度には十分議論ができなかった西田哲学の田辺哲学、西谷哲学への影響に重点を置いて講義を進める。
 西田幾多郎と田辺元、西田幾多郎と西谷啓治が比較議論されることは多い。しかし、田辺と西谷というテーマは、今まで、殆んど取り上げられることがなかった。しかし、この二人は、ドイツに留学して同じハイデガーに師事し、その後、ハイデガー哲学との対峙が、その哲学の重要な柱となったという共通点をもち、個人的にも非常に近い関係にあったことが知られている。この二人の間に哲学的関係性がないと想定することは奇妙なことである。
 それにも拘わらず、この二人の対比が成されなかった理由は、この両者の哲学が表面上は「対立」しているからであろう。田辺哲学と西谷哲学は一見大きく異なるが、実はその関係は表・裏の関係にある。種の論理の研究に当時の数学基礎論の連続体論が大きな役割を果たしていたように、田辺哲学は「数理を中心とする自然科学と切り離せない哲学」という新カント派マールブルグ学派的性格をもつ。一方で、西谷哲学の柱の一つは、自然科学的世界観がもたらす価値体系の喪失を主題とするニヒリズム論である。
 これだけを見れば、両者は水と油といえるのであるが、この田辺哲学の「数理哲学的性格」を西谷が誰よりも深く理解していたことを考慮すれば、実は、この水と油の関係が、表と裏の関係として見えてくるのである。
 例えば、西谷の「回互構造」は、局所的にみれば、田辺の種の論理における「切断構造」に形態的に非常に近い。しかし、大域的にみれば、西谷では、田辺の種を中心とする「種と個」のトポロジーが、回互という対等な関係に置き換えられることにより「中心」が消される。この様に解釈すれば、西谷哲学の多くは田辺哲学の裏返しとして理解することさえできるのである。
 講義では、この様な田辺、西谷の関係を、両者に大きな影響を与えた西田哲学、特に、不連続の連続、一般者の自己限定、述語的論理主義などの思想、そして、西田とともに両者の師でありかつ乗り越えるべきものであったハイデガー哲学との対比を通して分析する。
内容
次の項目を、それぞれ1-3回講義する。ただし、B, Cを分離せず、Aの一部にすることもある。
A.導入部
A0.西谷哲学:ニヒリズム論と回互・空の思想を中心として。
A1.田辺哲学:種の論理以後を中心として。
A2.西田哲学:不連続の連続、述語的論理主義、一般者の自己限定について。
A3.田辺・西谷哲学における西田の影響
A4.田辺・西谷哲学におけるハイデガーの影響。
A5.歴史的背景:新カント派からハイデガー後期哲学まで
B.分析部
B1.田辺の切断と西谷の二つの部屋:局所構造
B2.回互と個・種・類のトポロジーと西田哲学:大域構造
B3.世界思想史的背景:パース、ベルグソンの「連続論」
C.総合部
C1.西田・田辺・西谷を貫く「一つの伝統」は見いだせるか。
毎回最後の5分程度に質問票を書いてもらう時間をとる.次回に,それの主なものに答える。
テキスト・参考文献
授業中に紹介する。教科書は使わないが、毎回、詳細な講義資料を作成し、それを講義のサイトで公開する。

演  習

教官 上原 麻有子 種別
4回生のみ
曜日・時限 通年 金3・4 教室 日本哲学史研究室
題目 卒論演習
概要・目的
授業の目的は次の通りとする。①日本哲学の分野における論文の書き方(表現、論証、資料の調査・活用など)を習得する。②研究報告を行い、口頭による発表・議論の仕方を習得する。③卒業論文を作成する。
内容
授業は、履修者の卒業研究発表とそれに関する議論をもとに進められる。最初はまず、学術論文の書き方について教師の側から指導する。以降、履修者は前期に研究経過報告を、また後期には最終的な報告を、それぞれ口頭で行う。
テキスト・参考文献 授業中に紹介する
その他 日本哲学史専修の4回生以上については、必修とする。
教官 林 晋 種別 演習 学部(3回生以上)・大学院
曜日・時限 通年 金・2 教室 林研究室
題目 田辺元を読む
概要・目的
手稿・日記などの一次資料を通して過去の偉大な思索者の思想を読み解く.読み解く対象は,哲学者田辺元の種の論理が誕生した昭和9年の特殊講義「認識の形而上学」の講義準備ノートである.これは田辺の特殊な筆跡のため没後50年間,田辺哲学の専門家にも読めなかった史料だが,本演習を通して開発された「ITツールを利用する協同翻刻」の手法により,田辺哲学を理解していない学部学生でも十分翻刻ができるようになっている.また,そのことにより従来の田辺哲学像,特に「種の論理」の解釈が大きく変わりつつある.つまり,演習自体が最前線の研究なのである.この演習の目的は,このような史料とITに基づく思想史研究の面白さを経験してもらい,その手法を身につけてもらうことであり,日本哲学史を専攻していなくても,史料研究に興味をもつすべての人に役立つ演習となることを目指している。
内容
まず史料の背景を説明する講義を行い,その準備のもとで演習を行う.史料読みの演習では,史料のオリジナルではなく,その電子画像を使かい,難解な崩し字を読むために,歴史史料研究用のツールSMART-GSを使う.出席者の知識や能力に応じて,講義と演習の比重は変化する.史料2枚(原稿用紙2枚)程度を,2名のチームで担当し,1チームが2,3週を担当することを計画しているが,参加者の人数などで変化する。
テキスト・参考文献
http://sourceforge.jp/projects/smart-gs/(演習に使うITツールのページ)
http://kyoto-gakuha.org/(演習の成果が公開されるデジタル・アーカイブ)
http://www.shayashi.jp/xoopsMain/html/modules/wordpress/index.php?p=234(本演習で過去に得られた成果を紹介している岩波「思想」の記事)
その他
手稿分析などに史料分析用ソフトウェアSMART-GS http://sourceforge.jp/projects/smart-gs/を多用する.
講義参加者用のノートPCを数台用意しているが,自習などを考慮し自分のPCを持ってくるとよい.データなどは,外付けハードディスクに入れて貸与する.
この演習の成果は,京都学派アーカイブhttp://kyoto-gakuha.orgを通して広く京都学派の研究者に公開されている.学問の最前線に貢献する楽しさを味わって欲しい。
教官 芦名 定道 種別 演習 学部(3回生以上)・大学院
曜日・時限 前期 水・4 教室 キリスト教学研究室811号室
題目 日本・アジアのキリスト教──無教会キリスト教の系譜(3)──
概要・目的
日本・アジアのキリスト教の歴史を振り返りつつ、その新しい思想的可能性を探ることは、日本におけるキリスト教思想研究にとって重要な意味を有している。この演習では、年度や学期を超えて、無教会キリスト教の思想家たちを順次検討してゆくことによって、近代キリスト教思想の重要な局面の解明がめざされている。今年度前期は、昨年に引き続き、無教会キリスト教における内村鑑三の後継者の一人である、矢内原忠雄のテキストを読み進める。
内容
初回の授業では、本演習のオリエンテーションを行い、演習の目的や進め方を確認する。
 二回目以降は、昨年度後期の演習で扱った、矢内原忠雄の『国家の理想──戦時評論集』(岩波書店)の内、「自由と自由主義」「無教会主義論」「宗教改革論」「日本の基督者平民に告ぐ」「民族と平和のために」「国家の理想」「前十年と後十年」「社会の理想」「基督教の主張と反省」などの論考を、担当者の解説を通して、順番に精読してゆく。
テキスト・参考文献 授業中に紹介する
その他
受講者は、毎時間のテキストの予習と演習への積極的参加が求められ、特に前期後期各一回以上の発表担当が課せられる。演習に関わる質問は、オフィスアワー(金3・4)を利用するか、メール(アドレスは、授業にて指示)で行うこと。
教官 芦名 定道 種別 演習 学部(3回生以上)・大学院
曜日・時限 後期 水4 教室 キリスト教学研究室811号室
題目 日本・アジアのキリスト教──無教会キリスト教の系譜(4)──
概要・目的
日本・アジアのキリスト教の歴史を振り返りつつ、その新しい思想的可能性を探ることは、日本におけるキリスト教思想研究にとって重要な意味を有している。この演習では、年度や学期を超えて、無教会キリスト教の思想家たちを順次検討してゆくことによって、近代キリスト教思想の重要な局面の解明がめざされている。今年度後期は、昨年の内村鑑三、今年度前期の矢内原忠雄に引き続き、矢内原とともに無教会キリスト教における内村鑑三の後継者の一人である、南原繁のテキストを読み進める。
内容
初回の授業では、本演習のオリエンテーションを行い、演習の目的や進め方を確認する。
二回目以降は、南原繁『国家と宗教』(1942年)を冒頭から、担当者の解説を通して、順番に精読してゆく。
テキスト・参考文献 使用するテキスト(『南原繁著作集・第一巻』岩波書店)については、コピーを配布する。
その他
受講者は、毎時間のテキストの予習と演習への積極的参加が求められ、特に前期後期各一回以上の発表担当が課せられる。演習に関わる質問は、オフィスアワー(金3・4)を利用するか、メール(アドレスは、授業にて指示)で行うこと。
教官 藤田 正勝 種別
2回生以上
曜日・時限 前期 水・4 教室 第9演習室
題目 田辺元の「種の論理」について
概要・目的
「種の論理」と呼ばれる田辺元の論文群は、その発表以後、「田辺哲学」という表現がされるようになったことからも見てとれるように、田辺元の思想の発展のなかで、きわめて重要な意味をもつ。これらの論文を読み解くことによって、田辺哲学の本質と意義を明らかにしたい。
内容
最初に田辺元の生涯と思想について簡単に紹介する。とくに、「種の論理」の諸論文を執筆するに至るまでの過程を見ておきたい。
 そのあと、『田辺元哲学選I 種の論理』(岩波文庫)に収録された「種の論理の意味を明にす」などの、「種の論理」に関わる主要論文を読み進め、田辺哲学とは何か、日本の哲学の歴史のなかでそれはどのような意味をもつのか、などを明らかにしていきたい。
 各回、担当者の報告をもとに、全員で議論を行うことによって、理解を深めたい。
テキスト・参考文献 『田辺元哲学選I 種の論理』(岩波文庫
その他
『田辺元哲学選I 種の論理』(岩波文庫)の「解説」を予め読んでおくこと。

講  読

教官 太田 裕信 種別
2回生以上
曜日・時限 後期 木・2 教室 第3演習室
題目 近代日本哲学購読
概要・目的
本購読では、近代日本哲学の諸論文の中から、九鬼周造(1888-1941)の「驚きの情と偶然性」(1939)、和辻哲郎(1889-1960)の「日本語と哲学の問題」(1929、1935加筆)の2つを選び、読解する。西洋哲学と日本文化の素養をともに持ちあわせた九鬼周造は、多くの哲学者の理論を参照しながら、独自の哲学を形成している。上記の九鬼の論文を読むことは、その九鬼哲学全体への入門となるであろう。和辻哲郎もまた西洋哲学、東洋思想、日本思想についての深い素養のもとに、独自の倫理学を形成した人物である。上記の和辻の論文の購読を通じて、普遍性を求める哲学という営みと日本語という言語の特殊性の関わりを考えてみたい。回ごとに一節あるいは数ページを精細に読んでいく。読解した次の回に、受講者には読んだテキストの内容の要約とその内容の背景となる基礎知識や関連事項について発表してもらう。さらに、この発表を踏まえて討論を行い、論文を読み進めていく。
内容
1-2講(計2回) オリエンテーション
3-8講(計6回) 九鬼周造「驚きの情と偶然性」
9-14講(計6回) 和辻哲郎「日本語と哲学の問題」
15講(計1回) まとめ
参考書等
九鬼周造『驚きの情と偶然性』(岩波書店)(『九鬼周造全集』第3巻所収)
和辻哲郎『日本語と哲学の問題』(岩波書店)(『和辻哲郎全集』第4巻所収)
上記の2つの論文のコピーを配付する。
その他
教官 日髙 明 種別
2回生以上
曜日・時限 前期 月・3 教室 第9演習室
題目 『善の研究』講読
概要・目的
「明治以後に邦人のものした最初の、また唯一の哲学書」(高橋里美)と評された西田幾多郎の『善の研究』は、幅広い読者を得て、日本哲学史上に強い影響を残した。本基礎演習では、この『善の研究』を精読する。回ごとに一章を取り上げ、一文一文を精細に読んでいく。「講読」であるので、『善の研究』のコンテンツそのものよりも、「いかに読むか」ということを重視する。そのため受講者には、文章を解釈するにあたってたすけとなる基礎的な知識や関連事項についての手短な発表を課し、この発表を踏まえてディスカッションを行う。発表やディスカッションを通して、たんなる情報のインプットに終わらない「読む」経験を、みなで積んでいきたい。
内容
『善の研究』全四編のうち、とくに第一編「純粋経験」と第二編「実在」を中心に読み進める。
第一回:オリエンテーション
第二回:『善の研究』の成立と構成
第三回から第六回:第一編「純粋経験」
第七回から第十一回:第二編「実在」
第十二回から第十四回:第三編「善」および第四編「宗教」
第十五回:まとめ
教科書
西田幾多郎『善の研究』(岩波文庫)ISBN:978-4-00-331241-4(極力、岩波文庫の最新版(藤田正勝注解)を用意すること。
その他

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