明治3年5月19日石川県河北郡宇ノ気に生れる。金沢第四高等学校中退、東京帝国大学選科卒業。四高教授等を経て京都帝国 大学教授。明治44年刊の『善の研究』以下、多数の著作を発表。周囲に有能な同僚、門下生を集め、所謂「京都学派」の基礎を築いた。昭和3年退官後も、厳しい時代の中で思索を続けたが、終戦の直前、昭和20年6月7日逝去。
『善の研究』(明治44年:1911年) | 『思索と体験』(大正4年:1915年) |
『自覚に於ける直観と反省』(大正6年:1917年) | 『意識の問題』(大正9年:1920年) |
『芸術と道徳』(大正12年:1923年) | 『働くものから見るものへ』(昭和2年:1927年) |
『一般者の自覚的体系』(昭和5年:1930年) | 『無の自覚的限定』(昭和7年:1932年) |
『哲学の根本問題』(昭和8年:1933年) | 『哲学の根本問題続編』(昭和9年:1934年) |
『哲学論文集第一』(昭和10年:1935年) | 『続思索と体験』(昭和12年:1937年) |
『哲学論文集第二』(昭和12年:1937年) | 『哲学論文集第三』(昭和14年:1939年) |
『日本文化の問題』(昭和15年:1940年) | 『哲学論文集第四』(昭和16年:1941年) |
『哲学論文集第五』(昭和19年:1944年) | 『哲学論文集第六』(昭和20年:1945年) |
『哲学論文集第七』(昭和21年:1946年) | 他 |
西田は、東洋的思想の地盤の上で西洋哲学を摂取し、「西田哲学」と呼ばれる独自の哲学を築き上げた。その哲学は、近代日本における最初の独創的な哲学と評される。
西田の思想の背景には、確かに、東洋的宗教、とりわけ、西田自身が若い頃から行じていた禅仏教の宗教的体験があった。西田 が、従来の西洋哲学がもっていた〈主観と客観との対立〉〈現象界と実在界との区別〉といった前提を批判し、「何処までも直接な、最も根本的な立場」に立と うとするのは、その背景からである。
しかし、西田哲学は決して、宗教的体験を単に直接的に記述したものではない。西田が企図したのは、西洋の諸哲学と同じ次元で語られる一つの「哲学」であった。西田が目指すのは、現実の世界の構造を何処までも「論理的」に解明することである。「純粋経験」「無の場所」「行為的 直観」「絶対矛盾的自己同一」といった独特の概念も、従来の論理によっては捉えることのできない「根本的」な事実を、真に具体的に捉えることのできる「論理」として構想されたものに外ならない。
西田のこのような哲学は、宗教・自己・身体・生命・歴史・芸術・科学等、様々な観点から注目を集めている。
A. 著作・日記・書簡他、西田のほとんどすべての文章を収めた全集:
B. 現代哲学の諸分野に沿って西田のテキストを配列しなおした著作集:
C. 岩波文庫に収録されているもの:
D. その他
A. 西田の人と生涯とを知るために:
また、西田の随筆・日記・書簡は、西田の人をよくあらわしている。以下の書が便利。
B. 西田哲学の基本的な解説書:
尚、西田による講演の記録は、難解な後期西田哲学への、西田自身による最良の入門書であるといえる。以下の書を参照。
C. 西田哲学の研究として如何なる研究が行われているかを知るために:
(西田に関する参考文献・研究文献としては、他にも重要なものが多くあるが、ここではすべてを取り上げることはできなかった。)
尚、『西田哲学―新資料と研究への手引き―』(茅野良男・大橋良介編、ミネルヴァ書房、昭和62年)と、上掲の『選集』別 巻2とに、西田哲学に関する内外の研究論文の目録(前者が昭和61年まで、後者がそれ以降平成9年まで)が掲載されている。この目録により、それぞれの関 心に応じて、西田哲学についての先行研究を検索することができる。
西田哲学研究はますます多分野での関心を惹き、多くの研究書が上梓されている。その多様な方向性は最早限定することが難しく、具体的には例えば生命科学や日本近代数学史といった領域にまで及んでいる。上述の入門書・研究書はいずれも、常に参照すべき先行研究である。ここに近年のものを加えるにあたって、それを網羅的に紹介することはできないが、日本哲学史研究室による以下の入門書・研究書を補しておく。
さまざまな観点を取り入れ、西田哲学を明快に解説している。末尾に文献案内と略年譜も収録。初学者には最適の入門書である。
本項目の執筆者でもある杉本による後期西田哲学の研究書。「歴史」という従来あまり顧みられて来なかった観点に注目し、「西田という一人の人間が、「哲学」以前に、生きてゆく中でどういう問題にぶつかっていたのか」というところにまで遡って捉え直した一冊。
西田幾多郎と同郷で、生涯互いによき理解者同士であり続けた鈴木大拙と共に、世界大の根源的動性の渦中にあった両者の思索を扱った一冊。「現代において人としての生をいかにして過ごすか」を射程に含めた西田・大拙の思索の現代的意義にまで接続している。
また、『思想』第1099号(2015年第11号、岩波書店)は、「西田哲学研究の射程—没後70年に寄せて—」と題し特集号を組んでいる。近年現代の西田研究を追う上で指標となるであろう。