2016年度の授業

日本哲学史研究室ホーム

講  義

教官 上原 麻有子 種別 講義 学部(2回生以上)
曜日・時限 前期 火・5 教室 総合研究2号館 第8講義室
題目 日本哲学史講義2
概要・目的 日本哲学史を①近代初頭から西田幾多郎まで、②京都学派の二部に分けて日本哲学の形成過程を概観し、さらに、これまで論じられてきた主要問題を通して日本哲学のあり方、意義について検討する。このようにして日本哲学史についての理解を深めることが、授業の目的である。
内容
以下のような課題に基づき、各課題につきおよそ次の回数で授業を進める予定である。
①「日本哲学」とは何か【1回】
②近代初頭から西田幾多郎までの哲学史と哲学研究方法の特徴【5回】
③西田幾多郎【3回】
④京都学派【2回】
⑤三木清、戸坂潤【3回】
テキスト・参考文献 授業中に紹介する
教官 上原 麻有子 種別 講義 学部(2回生以上)
曜日・時限 後期 火・5 教室 総合研究2号館 第8講義室
題目 日本哲学史講義2
概要・目的
京都学派とその周辺の哲学者の思想を、いくつかのテーマを追う形で考察することが、この授業の目的である。さらに、講義で考察する日本哲学の問題が、私たち各自の経験においてどのような意義をもつのか、その経験とどのように結びつき得るのかについても検討する。
内容
以下のような課題(日本哲学史上の主要問題)を講義では扱うが、1課題に充てる講義の回数は2~3回である。
①偶然と運命
②生と死
③人間関係
④風土
⑤日本語と哲学
⑥日本における主体とsubject
テキスト・参考文献 授業中に紹介する

特殊講義

教官 上原 麻有子 種別 特殊講義 学部(3回生以上)・大学院
曜日・時限 前期 水・3 教室 文学部新館 第6講義室
題目 九鬼周造の「偶然」と「名」-哲学から文芸論への展開-2
概要・目的
この講義は、平成27年度の後期講義で論じた内を、引き続き展開するものである。 九鬼周造の思索は、「いき」の哲学的説明を端緒とし、それが「偶然性」 を生み出し、さらに文芸における押韻論へと展開したと概観することができる。講義では、九鬼における「固有名」と「実存」の問題に注目する。「名」の問題 は『「いき」の構造』での「いき」の分析の方法論にも関わっている。その「序説」で「いき」の理解を唯名論の方向に向けると述べられているからだ。しか し、この方向で、九鬼の目指した「いき」の具体的・事実的な存在は、会得され、説明されることが 完全にできたのかという疑問が残る。
この講義(後半)の概要は、次のようなものとなる。①九鬼による「実存」の概念がどのようなものであるかを確認し、「実存」は彼の哲学の中核を なす「偶然性」への信念のもとに理解されていることを示す。②次に、この問題を「固有名」において考え、二元の関係を探り、意味というものの意義とアイデ ンティティーの問題を検討する。③さらに、文芸論における詩作の問題においても、「二元の邂逅」について考えることができる。偶然が織りなす詩の音と意味 の世界について、ヴァレリーの詩学や田辺元による象徴についての詩作などと比較しながら論じる。
内容
以下のような課題を通して考察を深めてゆく。各課題に充てる予定の回数を、【 】内に示しておく。
①西田哲学を再解釈するという問題【1回】
②「行為的直観」という身体論の形成と展開【2回】
③身体の一表現機関としての「顔」-「手」との比較【2回】
④「顔」の「表情」の曖昧性【3回】
⑤和辻の「共同性」と西田の「作り作られる」身体としての「私」と「汝」【3回】
⑥「歴史的身体」としての「顔」、および「表情」【3回】
①西田の人称表現、「私」「我」「汝」や「自己」、これに関連する用語「自覚」と、その英訳、仏訳とを比較し、翻訳上の問題を示す。(すでに出版されているものを参照。)
②西洋哲学史における「人称」と「自己」の問題の概観。
③仏教概念としての「自己」から西田が得たものは何か。
④西洋の哲学者による「人称」と「自己」を西田はどのように再解釈したのか。
⑤西洋語の「自己」の「再帰的」性質がもたらした西田の論理構築への影響
テキスト・参考文献 授業中に指示する
教官 上原 麻有子 種別 特殊講義 学部(3回生以上)・大学院
曜日・時限 後期 水・3 教室 文学部新館 第6講義室
題目 1950年代以降の日本哲学
概要・目的
講義では、現代の日本哲学、つまり1950ー1980年代の哲学を対象とし、まずはそれがいかなるものであるのか、という大まかな問いを発してみたい。 「近代以降の」という意味での「日本哲学」を取り上げる場合、とかく京都学派の哲学に焦点が当てられることが常である。京都学派の哲学の価値を様々な仕方 で評価することは、日本哲学研究にとってもちろん重要な意味をもつが、そこに焦点を当てるのではない方法で、現代の日本哲学研究の動向を整理する必要はあ るはずだ。この整理を通して、あたらめて日本哲学史の進展の方向を理解することが、この講義の目的である。そして、その現代の日本哲学にどのような展望が 期待できるのかについても検討する。
講義は大半が概説的なものとなるが、大森荘蔵、廣松渉、坂部恵の3人については、具体的にテキストを検討する。
内容 以下のような課題を通して考察を深めてゆく。各課題に充てる予定の回数を、【 】内に示しておく。

①ガイダンス―趣旨説明(1950年代の日本哲学に焦点を当てる意義)【1回】
②1940年代の日本哲学の特徴【1回】
③1950年代以降の日本哲学の概観【4回】
④大森荘蔵【2回】
⑤廣松渉「近代的世界観の超克」【2回】
⑥坂部恵『「ふれる」ことの哲学』【2回】
⑦まとめ―現代の日本哲学の展望【2回】

テキスト・参考文献 授業中に紹介する
教官 氣多 雅子 種別 特殊講義 全回生
曜日・時限
前期 火・4
教室 第10演習室
題目 京都学派の哲学における神秘主義研究について
概要・目的
京都学派の哲学思想において、神秘主義の研究がどのような位置を占め、どのような意義をもっているかを明らかにしたい。
内容 およそ次のようなスケジュールで進める予定であるが、研究のなまの成果を伝えることを主眼とするので、スケジュール通りにいかないこともありうる。
(1)授業のテーマについて、(2)西谷啓治のエックハルト研究1、(3)西谷啓治のエックハルト研究2、(4)西谷啓治のドイツ神秘主義研究 1、(5)西谷啓治のドイツ神秘主義研究2、(6)西谷宗教哲学における神秘主義研究の意義、(7)西田哲学における神秘主義の意義1、(8)西田哲学に おける神秘主義の意義2、(9)上田閑照のエックハルト研究1、(10)上田閑照のエックハルト研究2、(11)京都学派以外の日本の神秘主義研究1、 (12)京都学派以外の日本の神秘主義研究2、(13)京都学派の哲学と神秘主義、(14)宗教と神秘主義、(15)まとめ
なお、フィードバックの方法は授業中に説明する。
テキスト・参考文献 授業中に紹介する
教官 氣多 雅子 種別 特殊講義 学部(3回生以上)・大学院
曜日・時限
後期 火・4
教室 第10演習室
題目 西田幾多郎の後期哲学思想
概要・目的
西田幾多郎の後期哲学思想において、歴史的世界の問題がどのように探求されているかを、理解する。西田の思想の宗教哲学的意義を考察することが最終的な目的である。
内容 およそ以下のようなスケジュールで進める予定であるが、研究のなまの成果を伝えることを主眼とするので、スケジュール通りにゆかないこともありうる。
(1)授業のテーマについて、(2)歴史的世界における人間存在、(3)歴史的世界における個物1、(4)歴史的世界における個物2、(5)絶対 矛盾的自己同一について1、(6)絶対矛盾的自己同一について2、(7)実践哲学をめぐる問題1、(8)実践哲学をめぐる問題2、(9)国家の問題1、 (10)国家の問題2、(11)知識論、(12)宗教哲学の問題1、(13)宗教哲学の問題2、(14)宗教の問題、(15)まとめ
なお、フィードバックの方法は授業中に説明する。
テキスト・参考文献 授業中に紹介する
教官 嶺 秀樹 種別 特殊講義 学部(3回生以上)・大学院
曜日・時限 前期 木・2 教室  第7演習室
題目
西田の場所の思想の探求
概要・目的 純粋経験から自覚へと展開する西田哲学は、「場所」の思想に到達することによって独自の立場を確立した。本講義では、「場所」の思想の成立と「無の自覚的 限定」の立場の哲学的意義を、西田自身が対決したカント、ヘーゲル、フッサール、ハイデッガーなどの西洋の哲学者たちとの比較を通して明らかにする。
内容 基本的には以下のプランに従って講義を進める。
1. 西田の根本経験としての純粋経験。『善の研究』の基本構想。
2. 純粋経験の立場の問題点と「自覚」思想の発端。
3. 場所の思想の成立(2週)
4. 場所の思想の展開(一般者の自覚的体系)(3週)
5. 絶対無の自覚の立場から見たカント哲学(2週)
6. 絶対無の自覚の立場から見たヘーゲル哲学(3週)
7. 西田哲学とフッサールの現象学(2週)
8. 西田のハイデッガー批判
テキスト・参考文献 授業中に指示する。
教官 岡田 勝明 種別 特殊講義 学部(3回生以上)・大学院
曜日・時限 後期 火・3 教室  第3演習室
題目 宗教と言葉
概要・目的 人間の特色は、「社会的存在」というところにある。言いかえれば「共に有る」という有り方を本質とする、という意味でもある。「我と汝」の「と」の成立するところで、自己は自己となる。
その「と」を成り立たせているのは、「言葉」である。人間は言葉の中に生まれ、言葉において「共に」有ることが成就し、自己は自己と成る。ハイデガーの言い方をもじれば、人間とは「言葉内存在」とも言えよう。
他方宗教や信仰という事柄も、人間である、という存在の有り方に、本質的に関わる。垂直軸のベクトルなしには、「ひと」は「ひとでなし」となる。
宗教性という垂直軸と、社会性という水平軸とが交差するところに、「言葉」の有り方を見定めてみたい。言葉が詩となる処は、宗教や哲学も生まれる処である。
この問題を考察するにあたって、上田閑照、大峯顕、長谷正當等の行き着いたところを手がかりとする。
哲学という試みの本質を把握することが、この講義の目的である。その問題を、言葉を焦点にして、西谷啓治の次の世代の、京大定年後のそれぞれの思想の徹底化において把握したいと考えている。その後の世代の有り方を探る意味も、あわせて考えてみたい。
内容 第一週から第三週:唐木順三『無常』を通して、言葉が詩となる処を究明する。
第四週から第六週:上田閑照『上田閑照集 第二巻』における、禅と言葉の問題を考える。
第七週から第十週:大峯顕『宗教の授業』『命ひとつ』を手がかりに、阿弥陀仏が言葉になる意味を考察する。
第十一週から第一三週:長谷正當『本願とは何か』を参考にしつつ、無限の呼びかけが言葉となって自己存在を証しすることを、把握する。
第十四週から第十五週:「宗教と言葉」の関係について、思索を深める。
テキスト・参考文献 授業中に紹介する。講義に必要なテキストは、そのつどコピーを配布する。

演  習

教官 上原 麻有子 種別 演習 学部(4回生以上
曜日・時限 通年 金3・4 教室  日本哲学史研究室
題目 卒論演習
概要・目的
授業の目的は次の通りとする。①日本哲学の分野における論文の書き方(表現、論証、資料の調査・活用など)を習得する。②研究報告を行い、口頭による発表・議論の仕方を習得する。③卒業論文を作成する。
内容
授業は、履修者の卒業研究発表とそれに関する議論をもとに進められる。最初はまず、学術論文の書き方について教師の側から指導する。以降、履修者は前期に研究経過報告を、また後期には最終的な報告を、それぞれ口頭で行う。
テキスト・参考文献 授業中に紹介する
その他 日本哲学史専修の4回生以上については、必修とする。
教官 林 晋 種別 演習 学部(3回生以上)・大学院
曜日・時限 通年 金・2 教室  林研究室
題目 田辺元を読む
概要・目的
手稿・日記などの一次資料を通して過去の偉大な思索者の思想を読み解く.読み解く対象は,哲学者田辺元の種の論理が誕生した昭和9年の特殊講義「認識の形 而上学」の講義準備ノートである.これは田辺の特殊な筆跡のため没後50年間,田辺哲学の専門家にも読めなかった史料だが,本演習を通して開発された 「ITツールを利用する協同翻刻」の手法により,田辺哲学を理解していない学部学生でも十分翻刻ができるようになっている.また,そのことにより従来の田 辺哲学像,特に「種の論理」の解釈が大きく変わりつつある.つまり,演習自体が最前線の研究なのである.この演習の目的は,このような史料とITに基づく 思想史研究の面白さを経験してもらい,その手法を身につけてもらうことであり,日本哲学史を専攻していなくても,史料研究に興味をもつすべての人に役立つ 演習となることを目指している.
内容
まず史料の背景を説明する講義を行い,その準備のもとで演習を行う.史料読みの演習では, 史料のオリジナルではなく,その電子画像を使い,難解な崩し字を読むために,歴史史料研究用のツール SMART-GS を使う.出席者の知識や能力に応じて,講義と演習の比重は変化する.史料2枚(原稿用紙2枚)程度を,2名のチームで担当し,1チームが2,3週を担当す ることを計画しているが,参加者の人数などで変化する.
テキスト・参考文献
http://sourceforge.jp/projects/smart-gs/(演習に使うITツールのページ)
http://kyoto-gakuha.org/(演習の成果が公開されるデジタル・アーカイブ)
http://www.shayashi.jp/xoopsMain/html/modules/wordpress/index.php?p=234(本演習で過去に得られた成果を紹介している岩波「思想」の記事)
その他
手稿分析などに史料分析用ソフトウェアSMART-GS http://sourceforge.jp/projects/smart-gs/を多用する.
講義参加者用のノートPCを数台用意しているが,自習などを考慮し自分のPCを持ってくるとよい.データなどは,外付けハードディスクに入れて貸与する.
この演習の成果は,京都学派アーカイブhttp://kyoto-gakuha.orgを通して広く京都学派の研究者に公開されている.学問の最前線に貢献する楽しさを味わって欲しい。
教官 芦名 定道 種別 演習 学部(3回生以上)・大学院
曜日・時限 前期 月・2 教室  キリスト教学研究室811号室
題目 日本・アジアのキリスト教──無教会キリスト教の系譜(5)──
概要・目的
日本・アジアのキリスト教の歴史を振り返りつつ、その新しい思想的可能性を探ることは、日本におけるキリスト教思想研究にとって重要な意味を有している。 この演習では、年度や学期を超えて、無教会キリスト教の思想家たちを順次検討してゆくことによって、近代キリスト教思想の重要な局面の解明がめざされてい る。今年度前期は、昨年に引き続き、無教会キリスト教における内村鑑三の後継者の一人である、南原繁のテキストを読み進める。
内容 初回の授業では、本演習のオリエンテーションを行い、演習の目的や進め方を確認する。
二回目以降は、南原繁『国家と宗教──ヨーロッパ精神史の研究』(岩波文庫)の内、「第一章 プラトン復興」「第二章 キリスト教の「神の国」とプラトンの理想国家」を、担当者の解説を通して、順番に精読してゆく。
テキスト・参考文献 南原繁『国家と宗教──ヨーロッパ精神史の研究』 ISBN:978-4-00-331672-6
その他
受講者は、毎時間のテキストの予習と演習への積極的参加が求められ、特に数回の発表担当が課せられる。演習に関わる質問は、オフィスアワー(火3・水3)を利用するか、メール(アドレスは、授業にて指示)で行うこと。
教官 芦名 定道 種別 演習 学部(3回生以上)・大学院
曜日・時限 後期 月・2 教室  キリスト教学研究室811号室
題目 日本・アジアのキリスト教──無教会キリスト教の系譜(6)──
概要・目的
日本・アジアのキリスト教の歴史を振り返りつつ、その新しい思想的可能性を探ることは、日本におけるキリスト教思想研究にとって重要な意味を有している。 この演習では、年度や学期を超えて、無教会キリスト教の思想家たちを順次検討してゆくことによって、近代キリスト教思想の重要な局面の解明がめざされてい る。今年度後期は、昨年後期と今年度前期に引き続き、矢内原とともに無教会キリスト教における内村鑑三の後継者の一人である、南原繁のテキストを読み進め る。
内容 初回の授業では、本演習のオリエンテーションを行い、演習の目的や進め方を確認する。
二回目以降は、南原繁『国家と宗教』(1942年)の「第三章 カントにおける世界秩序の理念」「第四章 ナチス世界観と宗教」を、担当者の解説を通して、順番に精読してゆく。
テキスト・参考文献 南原繁『国家と宗教──ヨーロッパ精神史の研究』 ISBN:978-4-00-331672-6
その他
受講者は、毎時間のテキストの予習と演習への積極的参加が求められ、特に数回の発表担当が課せられる。演習に関わる質問は、オフィスアワー(火3・水3)を利用するか、メール(アドレスは、授業にて指示)で行うこと。
教官 藤田 正勝 種別
演習 学部(2回生以上)・大学院
曜日・時限 前期 水・4 教室  第4演習室
題目 西田幾多郎の「場所」について
概要・目的
西田幾多郎は1926年に論文「場所」を発表したが、それ以後、その思想は「西田哲学」という言葉で呼ばれるようになった。西田自身もこの「場所」の思想 を自らの大きな思想的転機として捉えている。そしてこの「場所」という概念は「場所的論理と宗教的世界観」という最後の論文の表題が示すように、晩年まで 大きな意味をもちつづけた。この「場所」という論文、およびそれに関連する「内部知覚について」「表現作用」「働くもの」「取残されたる意識の問題」「左 右田博士に答う」などの論文の主要部分を読み解くことを通して、西田哲学の本質と意義を明らかにしたい。
内容 最初に西田幾多郎の生涯と思想について簡単に紹介する。とくに、「場所」の論文を執筆するに至るまでの過程を見ておきたい。
そのあと、『働くものから見るものへ』に収められた「場所」「左右田博士に答う」や『続思索と体験』に収められた「取残されたる意識の問題」な どの、「場所の論理」に関わる主要論文を読み進め、西田哲学とは何か、日本の哲学の歴史のなかでそれはどのような意味をもつのか、などを明らかにしていき たい。
第1回: イントロダクション
第2~14回: 「内部知覚について」「表現作用」「働くもの」「場所」「取残されたる意識の問題」「左右田博士に答う」の精読。各回、担当者の報告をもとに、全員で議論を行うことによって、理解を深めたい。
第15回: まとめ
テキスト・参考文献 西田幾多郎の論文「内部知覚について」「表現作用」「働くもの」「場所」「取残されたる意識の問題」「左右田博 士に答う」をテクストとする。『西田幾多郎全集』(新版第3巻・第7巻、旧版第4巻・第12巻)、岩波文庫『西田幾多郎哲学論集Ⅰ』、『続思索と体験・ 『続思索と体験』以後』のいずれの版を用いてもよい。
その他
拙著『西田幾多郎――生きることと哲学』(岩波新書)の第4章「論理化をめざして――場所」を予め読んでおいてください。

基礎演習

教官 太田 裕信 種別
基礎演習 学部(2回生以上)
曜日・時限 前期 木・2 教室  第3演習室
題目 近代日本哲学購読
概要・目的
九鬼周造(1888-1941)は、古今東西の哲学思想の該博な知識から、「偶然性」を中核とする独自の哲学を形成した。諸学問が、自然や歴史におけるさ まざまな現象の必然的な因果関係を説明するものであるとすれば、偶然的なものはその説明から取りこぼされるものである。しかし、われわれ一人一人の人生は そうした偶然の積み重ねから形成される側面をもっていると考えられる。九鬼の哲学はそうした偶然性の意味を問い直し、それを力強く引き受けて生きることを 説く。その思想の全体像は著書『偶然性の問題』(1935年)に表現されている。ただし、この書は半期の授業で扱うには長文である。そのため、本購読で は、その基となった京都帝国大学・博士論文「偶然性」(1932年)と、『偶然性の問題』の4年後に発表された論文「驚きの情と偶然性」(1939年)を 取り上げる。「偶然性」に関しては、その英訳も参照しながら読み進める。この二つの論文を読みとくことによって、九鬼哲学の本質と意義を捉え、哲学するこ とを学ぶことにしたい。
内容 毎回、履修者の二人に発表してもらう。一人は前回の内容と議論の要約を発表し、もう一人は各回に割り当てられた購読箇所の内容を発表する。前回のまとめの発表とその議論に約30分、各回の箇所の発表とその議論に約60分を割く。

第1回 イントロダクション
第2~10回(全9回) 「偶然性」
第11~13回(全3回) 「驚きの情と偶然性」
第14回(全1回) まとめ
第15回 フィードバック

参考書等 九鬼周造『偶然性(博士論文)』(岩波書店) ISBN:9784000905633 (『九鬼周造全集』第2巻所収)
Kuki Shuzo『Contingency』(University of Hawai’i Press) ISBN:9780824835521 (translated by John C. Maraldo, In: Japanese Philosophy A SOURCEBOOK)
九鬼周造『驚きの情と偶然性』(岩波書店) ISBN:9784000905626 (『九鬼周造全集』第3巻所収)
上記の論文のコピーを配付する。
その他
教官 日髙 明 種別
基礎演習 学部(2回生以上)
曜日・時限 後期 月・3 教室  第9演習室
題目 『善の研究』講読
概要・目的
「明治以後に邦人のものした最初の、また唯一の哲学書」(高橋里美)と評された西田幾多郎の『善の研究』は、幅広い読者を得て、日本哲学史上に強い影響を残した。本基礎演習では、この『善の研究』を精読する。回ごとに一章を取り上げ、一文一文を精細に読んでいく。「講読」であるので、『善の研究』のコンテンツそのものよりも、「いかに読むか」ということを重視する。そのため受講者には、文章を解釈するにあたってたすけとなる基礎的な知識や関連事項についての手短な発表を課し、この発表を踏まえてディスカッションを行う。発表やディスカッションを通して、たんなる情報のインプットに終わらない「読む」経験を、みなで積んでいきたい。
内容 『善の研究』全四編のうち、とくに第一編「純粋経験」と第二編「実在」を中心に読み進める。
第一回: オリエンテーション
第二回:『善の研究』の成立と構成
第三回から第六回: 第一編「純粋経験」
第七回から第十一回: 第二編「実在」
第十二回から第十四回: 第三編「善」および第四編「宗教」
第十五回: まとめ
教科書
西田幾多郎『善の研究』(岩波文庫)ISBN:978-4-00-331241-4(極力、岩波文庫の最新版(藤田正勝注解)を用意すること。
その他

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